母の収入は年金だけでした。準確定申告の義務はありませんでした。それでも私は出しました。
戻ってきたのは数万円です。大金ではありません。ただ、出さなければゼロだったお金です。
先に結論を書きます。年金だけの親なら、準確定申告の義務はまずありません。迷うのは義務の話ではなく、出せば戻るかどうかのほうです。
そして、その判定は源泉徴収票の1か所を見るだけで終わります。5分もかかりません。
4か月という期限を見て焦っている人もいると思います。でも、還付だけが目的なら、その4か月に縛られません。あとで理由を書きます。
この記事は、年金以外にまとまった収入がなかった親を想定しています。家賃収入や事業をしていた場合は話が変わるので、そこは税務署に確認してください。
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年金だけなら義務はまずありません

準確定申告は、亡くなった人の分の確定申告です。1月1日から亡くなった日までの所得を、相続人が代わりに申告します。
ただ、生きている人の確定申告に「しなくていい人」がいるのと同じで、亡くなった人にも同じ線引きがあります。
年金400万円以下なら義務なし
国税庁は、公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら確定申告は要らない、としています。
出典は国税庁のタックスアンサーNo.1600です。準確定申告でも、この線引きはそのまま使われます。
年金400万円というのは、けっこう高い天井です。国民年金と厚生年金だけの人なら、まず超えません。
見るのは、亡くなった年に実際に支給された分です。年額ではありません。年の途中で亡くなっていれば、その分さらに下がります。
母の年金も、この額にはまったく届いていませんでした。だから義務はゼロでした。
もう一つの20万円の条件
見落とされがちなのが後半の条件です。年金以外の所得が20万円を超えていると、400万円以下でも申告が必要になります。
親の場合、これに当たりやすいのは次のあたりです。
- アパートや駐車場の家賃
- 個人年金や生命保険の年金
- 株や投資信託の利益
- 亡くなる年まで働いた給与
通帳を1年分めくって、年金以外の入金がないかだけ見てください。何もなければ、ここは通過です。
義務が出るのはこの場合
逆に、はっきり義務が出るのはこういうときです。
- 年金が400万円を超える
- 年金以外が20万円超
- 自営業をしていた
- 不動産を売った年だった
この場合は相続を知った日の翌日から4か月以内が期限です。国税庁No.2022に書かれています。
ここに当てはまる人は、自力より税理士に投げたほうが早いです。この記事の後半で相談先の話をします。
判定は源泉徴収票の1か所で終わります

義務がないと分かったら、次は出すかどうかです。ここで多くの人が止まります。
でも、判定する材料は1枚しか要りません。日本年金機構から届く公的年金等の源泉徴収票です。
見るのは源泉徴収税額
源泉徴収票の中に「源泉徴収税額」という欄があります。年金から天引きされた所得税の合計です。
準確定申告で戻ってくるお金は、ここから出ます。逆に言うと、ここにない分は戻りません。
亡くなった年の分は、年金事務所へ連絡すれば出してもらえます。年金の停止手続きをした流れで頼むのがいちばん楽でした。
手元にないなら、今夜できるのはここまでです。郵送で届くまで数週間かかることもあるので、まず電話の予定だけカレンダーに入れてください。
その停止手続き自体があやふやなら、親が亡くなったあとの年金手続きの順番を先に読んでください。源泉徴収票はその窓口で頼めます。
ゼロなら出さなくていい
源泉徴収税額が0円だったら、そこで終わりです。準確定申告を出しても、戻る原資がありません。
年金額が少ない人や、扶養の届出をきちんと出していた人は、そもそも天引きされていないことがあります。
この場合は出さない判断で大丈夫です。あとで税務署から何か言われることもありません。義務がないので当然です。
金額があれば次へ進む
金額が入っていたら、戻る可能性があります。ただし、入っていれば必ず戻るわけでもありません。
戻るかどうかは、生前に使った医療費や社会保険料をどれだけ引けるかで決まります。次のH2でそこを見ます。
出したほうがいい人とやめていい人

ここが本題です。私が出したのも、この条件に当てはまっていたからでした。
医療費が多かった人
最後の一年に入退院を繰り返した親なら、ここが効きます。医療費控除です。
引けるのは、支払った医療費から保険で補てんされた分を差し引き、さらに10万円を引いた額です。
所得が200万円未満なら、10万円ではなく所得の5%になります。年金だけの親は、こちらに当たる人が多いはずです。
ここでいう所得は、受け取った年金額そのものではありません。年金収入から公的年金等控除を引いたあとの金額です。通帳の入金額で判断しないでください。
つまり、10万円に届かない医療費でも引ける場合があります。計算式は国税庁No.1120のとおりです。
母の場合も、まさにここでした。入退院の領収書が積み上がっていたので、引ける額がそれなりにあったんですね。
介護保険料が多い人
もう一つが社会保険料控除です。年金から天引きされていた介護保険料や国民健康保険料が対象になります。
これは源泉徴収票の中に金額が書かれています。自分で集める必要はありません。
介護度が上がってからの自己負担も重なっていると、控除が積み上がって還付側に振れます。
やめていい人の条件
正直に書きます。出さないほうがいい人もいます。
- 源泉徴収税額が0円
- 入院も通院もなかった
- 亡くなったのが年の初め
- 領収書が残っていない
年の初めに亡くなった場合、そもそも天引きされた額が小さいです。有給を1日使って税務署へ行く価値があるか、そこは冷静に見てください。
相続の手続きは、全部やろうとすると本当に終わりません。やらない判断も手続きのうちです。
母の準確定申告で私がやったこと

ここからは私の実際の話です。参考になる部分だけ拾ってください。
用意したのは、公的年金等の源泉徴収票と、母の医療費の領収書です。領収書は袋に突っ込んであったものを、輪ゴムで束ねて持っていきました。
今思えば雑ですが、窓口の担当者が日付順に並べ直してくれました。恥ずかしかったです。
そのとき言われたのが、順番だけ揃えてくれば計算はこちらでやります、という話でした。だから、きれいに集計してから行く必要はありません。
戻りは数万円でした。これは母の医療費の額で決まった数字なので、そのまま真似できる金額ではありません。
ちなみに相続税のほうは非課税で、申告そのものが不要でした。相続人は私と弟の2人で、基礎控除が4,200万円あったからです。
その計算を紙に書いて弟に写真を送ったら、まじか、と返ってきました。まだ普通に話せていた頃です。
そのあと私たちは遺産分割で揉めて、1年ほど口をきかなくなりました。相続登記も動かせず、実家の名義は母のままでした。
準確定申告だけは、揉める前に片づいていたのが救いでした。税金の話は後回しにするほど面倒になります。
ここを間違えると還付額が狂います

医療費控除には、生きている人の申告にはない落とし穴があります。
死亡後に払った医療費
入院費の請求は、亡くなったあとに届くことがあります。私も葬儀のあとに病院へ支払いに行きました。
この、亡くなったあとに支払った分は準確定申告では引けません。国税庁の質疑応答事例にはっきり書かれています。
理由は、医療費控除がその年に実際に支払った額で計算されるからです。本人はもう支払えません。
ここを足して計算すると、還付額の見込みが実際より大きく出ます。それで窓口でがっかりする人がいます。
生計を一にしていたか
ただ、その医療費が消えるわけではありません。行き先が変わります。
治療を受けた時点で親と生計を一にしていた相続人なら、支払った本人の医療費控除に使えます。死亡した父親の医療費という事例に書かれています。
つまり、親の申告ではなく自分の確定申告に回る、という形です。ここは知らないと丸ごと捨てることになります。
気をつけたいのは、生計を一にしていたかの当てはめです。同居していなくても仕送りをしていれば当たることがあります。
私のように片道4時間の遠距離で、生活費を出していたかどうかが微妙な場合は、自己判断せず税務署で聞いてください。電話でも答えてくれます。
還付金は相続財産です
もう一つ。戻ってきたお金は、受け取った人のこづかいではありません。
準確定申告の還付金は亡くなった人の相続財産として扱われます。相続税がかかる家なら、財産に足して計算します。
逆に、還付金に付く還付加算金は相続財産としては扱われません。国税庁の質疑応答事例に整理されています。
ただ、非課税という意味ではありません。還付加算金のほうは、受け取った相続人の雑所得として所得税の対象になります。少額なら実務上あまり問題になりませんが、扱いが別だとだけ覚えておいてください。
相続税がかからない家なら気にしなくて構いません。ただ、遺産分割の場でこの数万円を黙っていると、あとで面倒になります。
実際、お金を隠したと思われるきっかけは、たいてい金額の大きさではありません。言わなかったことのほうです。預貯金の相続手続きで口座を解約したときの入金も、同じように共有しておくと安全です。
4か月に間に合わないと感じたら

4か月という数字だけが頭に残って、焦っている人が多いです。ここを整理します。
4か月は、申告する義務がある人の期限です。義務がない人が還付のために出す場合の話ではありません。
還付を受けるための申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます。国税庁No.2030のとおりです。
だから、四十九日の前後で手が回らないなら、無理に押し込まなくて大丈夫です。落ち着いてからで間に合います。
逆に、本当に止まらない期限は別にあります。相続放棄の3か月です。こちらは待ってくれません。
親に借金があるかもしれないと少しでも思っているなら、準確定申告より先です。親の借金を3か月以内に調べた手順のほうを先に済ませてください。
私は弟からの電話で日数を数え始めて、期限の8日前にようやく白だと分かりました。あの数週間はしんどかったです。
準確定申告の次に必ず残るもの

準確定申告は、出すと決めれば税務署1回で終わります。負担としては軽いほうです。
問題はそのあとです。戸籍集め、遺産分割協議書、口座の解約、実家の名義変更が丸ごと残ります。
私はこれを甘く見ていました。母の口座を1つ自分で解約しに行ったら、銀行の窓口で2時間近く待たされたんですね。それが2つ目でした。
結局、戸籍収集と遺産分割協議書と実家の相続登記はnocos(ノコス)に任せました。支払いは税込22万円、実費を足して総額26.7万円ほどです。
安くはありません。気になった点も書いておくと、進捗の連絡が少なく、1か月音沙汰がなくて自分から催促のメールを打ったことがあります。
それでも、平日に何度も休みを取る前提がなくなったのは大きかったです。ここは人によって答えが割れるところなので、無料相談で見積もりだけ取って比べてください。
なお、準確定申告そのものを誰かに頼みたいなら、司法書士ではなく税理士の担当です。相談先の選び方は相続の相談先を目的別に比べた記事にまとめてあります。税金なのか、揉めごとなのか、名義なのかで窓口が変わります。
よくある質問

- 準確定申告を出さないと罰則はありますか?
-
そもそも申告義務がない場合は、出さなくても罰則はありません。年金収入が400万円以下で他の所得が20万円以下なら、その状態です。義務があるのに出さなかった場合は、無申告加算税や延滞税の対象になります。自分がどちらなのかは、通帳の1年分と源泉徴収票で判断できます。
- 相続人が2人いる場合、両方で出すのですか?
-
相続人が2人以上いるときは、確定申告書に付表を付けて、相続人全員の氏名などを書きます。原則は連署ですが、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に出すこともできます。その場合は、出した人が申告内容を他の相続人へ通知する決まりです。どちらにしても、きょうだいに一度声をかける工程は残ります。揉めている最中だと、ここが地味に重い作業になります。
- 領収書がない医療費はあきらめるしかないですか?
-
健康保険から届く医療費のお知らせが使える場合があります。手元にないなら、加入していた健康保険の窓口に再発行を頼んでください。ただし、そこに載るのは保険が使われた分だけです。差額ベッド代や自費の分は領収書がないと拾えません。母のときは袋に残っていたのが幸運でした。
- 税務署はどこへ行けばいいですか?
-
亡くなった人の住所地を管轄する税務署です。自分の住まいの税務署ではありません。実家が遠い人はここで引っかかります。郵送でも提出できるので、片道4時間のような距離なら郵送を検討してください。書き方だけ電話で確認してから送る形が現実的です。
- 葬儀費用は準確定申告で引けますか?
-
引けません。葬儀費用は所得税ではなく、相続税を計算するときに遺産から差し引くものです。ここは別の話として分けて考えてください。相続税がかからない家なら、葬儀費用の領収書は分割の話し合いで使う程度になります。私も相続税は非課税だったので、そちらでは出番がありませんでした。
- 前の年の確定申告をしていない場合はどうなりますか?
-
亡くなったのが1月1日から確定申告の期限までの間で、前年分が未提出なら、前年分もあわせて相続人が出すことになります。年金だけで義務がなかったなら、こちらも義務ではありません。ただ、前年分にも天引きされた所得税があるなら、2年分まとめて還付を受けられる場合があります。窓口で一緒に聞いてみてください。
この記事の要点をまとめます。
- 年金だけなら義務はない
- 源泉徴収税額0円なら不要
- 医療費が多いなら出す価値
- 死後に払った分は引けない
- 還付だけなら5年使える
- 止まらない期限は3か月
私が母の分を出したのは、税金に詳しかったからではありません。領収書の束を見て、これだけ払ったなら何か戻るんじゃないか、と思っただけです。
戻ったのは数万円でした。それで何かが変わったかというと、正直、何も変わっていません。
ただ、母が最後の一年に払っていたお金が、数字になって手元に戻ってきた感じはありました。窓口で封筒を受け取ったときの、あの妙な感覚は覚えています。
今夜やることは1つです。公的年金等の源泉徴収票を探して、源泉徴収税額の欄を見てください。0円なら、この件はもう終わりです。


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