アルバムを1冊開いただけで、その日は1枚も片付きませんでした。実家の押し入れの前に座り込んで、気がついたら夕方だったんです。
遺品整理で写真だけ手が止まる人は多いと思います。服も食器も袋に入れられたのに、写真の束の前でだけ動けなくなる。
先に言っておきます。今日、写真を捨てる必要はありません。決めるのは、捨てるかどうかではなく、この箱をどこに置いて、いつもう一度開けるかです。
私は母を見送ったあと、実家から段ボール9箱を自宅へ送りました。そのうち8箱は、一度も開けないまま処分しています。
「迷った物は全部残す」で乗り切ろうとした結果です。保留のつもりが、半年後にまとめて捨てるだけの時間になりました。
この記事では、写真だけ手が止まる理由と、捨てないまま片付けを進める5つの行き先、それから残す枚数の決め方を書きます。
家の引き渡しや退去の日がもう決まっている人は、作業日までに写真だけ逃がす方法から先に読んでください。落ち着いて選ぶ時間がない状況では、順番が逆になります。
ごみの分別や、データ化とお焚き上げにいくらかかるかは写真とアルバムの処分の実額をまとめた記事のほうに寄せてあります。ここは、その前段の話です。
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写真だけ手が止まるのには、ほかの遺品と違う理由がある

自分の根性が足りないわけではありません。写真には、ほかの物にない厄介さが3つあります。
心当たりのあるところだけ読んでもらえれば十分です。
1枚ずつ違うのでまとめられない
母の普段着は、10枚あっても10枚まとめて判断できました。同じような物だからです。
写真は違います。同じ箱に入っていても、1枚ずつ別の日の別の場面が写っています。
つまり、200枚あれば200回決めることになります。片付けのほかの作業と比べて、判断の回数が桁違いに多いんです。
疲れて手が止まるのは当たり前で、意志の問題ではありません。ここを「まとめて決められる単位」に変えるのが、この記事の後半の話になります。
自分だけの思い出でない写真もある
母の茶碗を捨てるかどうかは、最後は私の一存で決められます。責任は重いですが、決める人は私1人です。
写真はそうもいきません。弟が写っている写真、いとこが写っている写真、母の友人が写っている写真が同じ束に入っています。
「勝手に捨てた」と言われる可能性が、物の中でいちばん高いのが写真です。値段はつかないのに、あとから話題に出る確率だけが高い。
私は弟と相続で揉めて1年絶縁しました。片付けの主導権もずっと私が握っていたので、ここは失敗した側として書いています。
見始めると、その日の片付けが終わる
これがいちばん実務的な問題です。1枚見ると次が気になって、30分が飛びます。
実家は片道4時間で、行けるのは月に一度でした。その貴重な1日を、押し入れの前で座って過ごしたことが何度もあります。
だから、写真を見る作業と、家を片付ける作業は同じ日に入れないほうがいいです。見るのは持ち帰ってからでもできます。
「今は捨てない」を選んでもいい。ただし置き場所は今日決める

捨てないという選択は、逃げではありません。ちゃんとした選択肢のひとつです。
ただ、私は同じことをやって半年ぶん遠回りしました。何が足りなかったかを書きます。
9箱送って8箱を開けず捨てた
実家の片付けを本気で始めたのは一周忌のあとでした。それまでの1年以上、家は母が住んでいたときのままです。
3回目の帰省でようやく方針を決めました。「迷った物は全部残す」です。我ながら名案だと思いました。
宅配便で段ボール9箱を自宅へ送りました。写真もアルバムも、その中に入っています。
届いた箱を見た妻に「これ、どこに置くの」と聞かれて、私は答えられませんでした。廊下に積んだまま半年が過ぎます。
結局、8箱は開けないまま処分しました。中身を確かめてすらいません。
保留にしたつもりでしたが、実際にやったのは判断の先送りに名前をつけただけでした。半年後の自分は、半年前の自分より決断力があるわけではないんです。
保留が保管に変わる2つの条件
あのとき何が足りなかったのか、あとから考えると単純でした。置き場所と、次に開ける日です。
この2つが決まっている状態が保管で、決まっていない状態が先送りです。箱の中身は同じでも、半年後の結果が変わります。
- 置き場所を決める(廊下は不可)
- 次に開ける日を箱に書く
日付は、気持ちが落ち着きそうな日ではなく、時間が取れる日で決めてください。法要の前後は動けません。
私は写真アルバムだけが最後まで残りました。9箱が段ボール1箱に減るまで1年半かかっています。今その1箱には、母の写真アルバム3冊と手帳、鏡台の手鏡、エプロンが入っています。
1年半かけて削るか、先に上限を決めて短く終わらせるか。差はそこだけでした。
置く場所がない、という人もいると思います。写真は遺品の中ではかさばらないほうで、うちは最終的に段ボール1箱です。棚の一段が空けば足りる量まで減らせる、と考えてもらって大丈夫です。
捨てずに片付けを進める5つの行き先

「捨てる」の反対は「ずっと持つ」だけではありません。手放し方には段階があります。
| 行き先 | お金 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 冊数を決めて残す | 0円 | 量が多い人 |
| データにする | 1冊数千円〜 | 捨てる理由が要る人 |
| 人に渡す | 送料のみ | 兄弟がいる人 |
| 供養に回す | 箱1つ数千円〜 | 袋に入れられない人 |
| 期限つき保留 | 0円 | 今は決められない人 |
金額の細かい料金表は写真とアルバムの処分にかかる費用の記事に出してあるので、ここでは決め方だけ書きます。
冊数を決めて残す
いちばん効くのがこれです。1枚ずつ見て決めるのをやめて、先に上限を決めます。
私は衣類でこの方法に切り替えて、ようやく進みました。母のエプロンは1枚だけ残すと先に決めて、あとは選ぶだけにしたんです。
写真も同じで、「アルバム3冊まで」と決めてしまえば、200回の判断が3回の選択に変わります。判断の回数を減らすのが目的です。
上限は自宅の置き場所から逆算してください。押し入れの一段なのか、本棚の一列なのか。数字に根拠は要らなくて、収まればそれが正解です。
データにして現物を手放す
スキャンして現物を手放す道もあります。アルバムを台紙に貼ったまま預かってくれる店があるので、剥がす作業は要りません。
正直なところ、データにした写真をその後まめに見返す人は少ないと思います。それでも意味があるとしたら、手放すことに理由がつく点です。
捨てたのではなく移した。この言い換えで手が動くなら、全冊やる必要はありません。1冊だけ頼んで残りを手放す人もいます。
気をつけたいのは日程です。仕上がりに数週間かかるので、家の引き渡し日が近い場合は間に合わないことがあります。
写っている人に渡す
自分が持つか捨てるかの二択で考えると行き詰まります。渡すという三択目があります。
兄弟、いとこ、母の友人。写っている本人にとっては、こちらが思うより価値のある1枚だったりします。
聞き方にはコツがあって、「捨てていいか」ではなく「要る人はいるか」で聞いてください。前者は相手に責任を渡す質問なので、返事が止まります。
やり方は簡単で、束を何枚か撮って送るだけです。返事が来なくても、聞いた事実が残るのが大きい。
現物をいきなり送りつけるのはやめたほうがいいです。受け取った側も置き場所に困って、こちらと同じところで止まります。何枚あるかを先に伝えて、要る分だけ渡してください。
供養に回して手放す
どうしてもごみ袋に入れられない束は、供養という出口があります。郵送で受けるところと、遺品整理業者が提携寺院で合同供養するところがあります。
ここは正直に書きます。私が業者の供養処分に回したのは、値がつかなかった掛け軸2本と日本画の色紙数点で、写真は出していません。
写真やアルバムを同じ枠で受けるかは会社ごとに違います。見積もりのときに品目を挙げて、扱えるかを先に聞いてください。
ひとつ実感として書いておくと、値がついた物のほうがあっさり手放せました。ゼロ査定だった物が最後まで実家に残ったんです。写真は完全にそちら側にあります。
期限を書いたうえで保留する
今日は決められない、という日もあります。その場合は保留で構いません。
ただ、箱に日付を書いてください。私の9箱に足りなかったのはこれだけです。
目安としては、法要の日程に重ねないほうがいいです。四十九日や一周忌の前後は、気持ちも予定も片付けに向きません。
残す写真を選ぶときに、私が使った3つの問い

上限を決めても、どれを残すかで止まります。1枚ずつ思い出をたどると終わらないので、機械的に通せる問いを用意しました。
故人が写っているか撮ったものか
最初のふるいはこれです。母が写っている写真と、それ以外を分けます。
親の家には、親が撮った旅行先の風景や建物の写真がかなりの量あります。撮った本人にとっては意味があっても、こちらには判断材料がありません。
ここで迷うと時間がいくらあっても足りないので、人が写っていないものは先に外す。それだけで束の厚みがはっきり変わります。
名前が分かる人が1人でもいるか
2つ目は、写っている人の名前が言えるかどうかです。
親の若い頃の集合写真には、こちらが一度も会ったことのない人が並んでいます。誰か分からないまま残しても、次の代はもっと分かりません。
逆に、名前が分かる親族が写っているなら、その人に渡す候補になります。捨てる束ではなく渡す束に移してください。
同じ場面が何枚あるか
フィルムの時代の写真は、同じ場面が何枚も焼き増しされています。旅行1回で数十枚、ということも珍しくありません。
ここは感情を使わずに済む数少ない場面です。同じ場面は1枚だけ残すと決めれば、束はかなり薄くなります。
この3つを通したあとに残った分だけ、ゆっくり見てください。最初から1枚ずつ見るのとは、かかる時間がまるで違います。
それでも手が止まるなら、写真だけの問題ではないかもしれません。物全般について動けない状態は遺品が捨てられない罪悪感の正体をまとめた記事のほうで書きました。
作業日が決まっていて、写真に手をつけられないとき

ここからは期限がある人向けです。家の引き渡しや退去の日が決まっていると、気持ちの準備を待ってもらえません。
写真の箱だけ先に避難させる
当日までに決められないなら、決めなくていいです。写真だけ別の箱にまとめて、作業範囲の外に出しておきます。
置き場所は、作業に使わない部屋か車の中にしてください。玄関はやめたほうがいいです。当日は搬出の通り道になるので、置いた物が一緒に運び出されます。
部屋に残す場合は、箱に「残す」と大きく書いて貼っておきます。当日は何人も出入りするので、口頭で伝えただけだと伝わりません。宅配便でまとめて自宅へ送ってしまう手もあります。
私の9箱は失敗でしたが、失敗したのは箱を送ったことではなく、置き場所と日付を決めなかったことです。同じ轍を踏まないなら、避難は有効な手です。
もう1つ、避難させる前にアルバムと紙袋の底だけは見てください。私は処分予定の紙袋の底から母の保険証券が出てきました。
仕分けから頼めると知らなかった
遺品整理業者に頼む=全部持っていかれる、と思っていました。実際は違います。
私は作業に立ち会って、仕分けだけ一緒にやってもらいました。残す物をこちらが指して抜いていく形です。
写真は特にこの形が向いています。人の手で箱から出してもらって、こちらは残す束を抜くだけ。物を動かす体力を使わずに済みます。
ただ、どこでも同じように頼めるわけではありません。立ち会いの仕分けを受けない会社や、時間で追加料金が出る会社もあります。見積もりの電話で「立ち会って仕分けたい」と先に言っておいてください。
自分でやるか頼むかで迷っている段階なら、自分でやるか業者に頼むかの判断基準を先に見たほうが早いです。写真の量は、この判断を左右する要素のひとつになります。
見積もり時に写真の扱いを伝える
ここを黙っていると、当日に金額が動きます。供養は基本の作業費に含まれず、別料金になることが多いからです。
見積書の項目に出てこないこともあるので、最初の電話で「供養に出したい物がある」と伝えてください。写真とアルバムを受けられるかも、そこで確認できます。
私はみんなの遺品整理で3社の相見積もりを取りました。この一言の有無で、会社ごとの金額がだいぶ動いたのを覚えています。
相場を1社分だけ先に持っておきたいなら、私が見積もりを取った1社の遺品整理110番で相談してみるのが早いです。相談窓口が加盟店へ見積もり依頼を取り次ぐ形で、窓口の利用料は無料だと利用規約に明記されています。
正直に書くと、私はこの会社には依頼しませんでした。紹介される加盟店で対応に差が出るところがあって、私のケースでは地元業者のほうが合っていたからです。
それでも1社分の金額を持っていれば、次の会社が高いか安いか判断できます。比べる相手がいない状態で決めるのがいちばん危ない。
会社の候補から見たい人は、私が実際に見積もりを取った遺品整理業者の比較に並べてあります。
遺品整理で写真が捨てられないときのよくある質問

- 写真が捨てられないのは、私の性格の問題でしょうか?
-
作業の性質の問題です。写真は1枚ずつ中身が違うので、まとめて決めることができません。200枚あれば200回の判断になります。ほかの遺品より手が止まりやすいのは、そういう構造だからです。
- 親の写真を全部残しておくのはだめですか?
-
置き場所が決まっていれば問題ありません。私は段ボール9箱を自宅へ送って廊下に半年積み、結局8箱を開けずに処分しました。置き場所のない保管は、名前を変えた先送りになります。
- アルバムを開かずに、そのまま処分していいですか?
-
開くと止まってしまう人は、開かない判断もありです。ただし紙の束だけは中を確認してください。私は処分予定の紙袋の底から母の保険証券を見つけました。通帳や証券が挟まっていることがあります。
- 兄弟に相談すると、話が止まりませんか?
-
「捨てていいか」と聞くと止まります。決める責任を相手に渡す質問だからです。「要る人はいるか」に変えてください。束を何枚か撮って送るだけで十分で、返事が来なくても聞いた事実が残ります。
- 実家に置いたままにしておくのはどうでしょうか。
-
家を売る、貸す、解体するのであれば、その日程が期限になります。自分で決めないまま当日を迎えると、業者か家族が代わりに判断することになります。家の処分の予定がないなら、置いたままでも構いません。
- 自分が死んだあと、この写真は結局捨てられるのでは?
-
その可能性は高いです。だから残す数を絞る作業は、自分のためだけではありません。次に開ける人の手間を減らす作業でもあります。誰が写っているか分かるうちに選べるのは、今の自分だけです。
- 業者に写真の仕分けまで頼めますか?
-
頼めます。私は作業に立ち会って、仕分けだけ一緒にやってもらいました。箱から出す作業を任せて、残す束をこちらが抜く形です。丸投げか自力かの二択ではないので、見積もりのときに頼み方を相談してください。
まとめ:今日は箱に「次に開ける日」を書くだけでいい

写真が捨てられないのは、判断の回数が多すぎるからです。性格でも、薄情さでもありません。
捨てるかどうかを今日決める必要はないです。決めるのは、置き場所と、次に開ける日の2つだけ。
その日が来たら、故人が写っているか、名前が分かる人がいるか、同じ場面が何枚あるかの3つで通してください。残った分をゆっくり見れば十分です。
私は9箱を1箱に減らすのに1年半かけました。先に上限を決めていれば、その1年半は要らなかったと思っています。
それと、削りすぎる必要もありません。私は今でも、母の茶碗を1つくらい残しておけばよかったかな、と思うことがあります。


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