親を見送ってしばらくすると、霊園から管理料の振込用紙が届きます。宛名は亡くなった親のまま。そこで「お墓の名義って、どうするんだっけ」と手が止まった人に向けて書いています。
先に答えです。お墓の名義変更は、法務局でも税務署でもありません。届け出る先は、その墓地を管理しているところです。民営霊園なら管理事務所、寺院墓地ならお寺、公営霊園なら自治体か、管理を任されている団体の窓口です。
継ぐのは原則1人で、遺産分割の話し合いとは切り離されています。兄弟で相続の話がまとまっていなくても、墓の名義は別に進められます。
私は母を見送ったあと、実家の墓がある民営霊園へ届け出て、名義を自分に変えました。必要だったのは戸籍と印鑑だけで、手数料は数千円でした。
その墓は、のちに私が畳んでいます。墓じまいを自分の判断で進められたのは、名義を継いでいたからでした。
ただ、必要な書類や手数料は墓地ごとに違います。うちの霊園で済んだ内容を、そのまま全国の基準とは思わないでください。
この記事では、どこでも共通する決まりと、墓地ごとに聞くべきことを分けて書きます。
親が亡くなったらお墓の名義はどうなるか

お墓は、預貯金や実家とは別のルールで引き継がれます。ここを知っているかどうかで、兄弟との話し方が変わります。
遺産分割には入らない
民法897条に、お墓や仏壇の引き継ぎ方が書かれています。
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
民法第897条第1項(e-Gov法令検索)
「前条の規定にかかわらず」は、相続の一般ルールの外に置くという意味です。墓・仏壇・位牌などは「祭祀財産」と呼ばれ、遺産分割の対象になりません。
うちは実家の名義が、弟と話がつくまで1年、母のままでした。遺産分割が止まっていたからです。墓の名義は、その話し合いとは別の手続きでした。
実家の土地や建物は、法務局で相続登記をします。こちらは実家を相続したときの名義変更と売却の流れに書きました。墓とは窓口も書類も違います。
継ぐのは原則1人
預貯金は兄弟で分けられます。墓は分けません。祭祀を主宰する人、つまり墓を守る人が1人で引き継ぐのが原則です。
霊園の名義も、使用者1人の名前で登録するのが一般的です。兄弟の共同名義を認めるかどうかは霊園の規則次第なので、希望があれば先に聞いてください。
相続税はかからない
相続税法12条は、墓所・霊びょう・祭具を相続税の非課税財産としています。墓の名義を継いでも、そのぶんの相続税は増えません。
仏壇も祭具に入ります。仏壇をどうするか迷っているなら、親が亡くなったあとの仏壇の扱いも読んでみてください。
相続放棄しても継げる
親に借金があって相続放棄を考えている人もいると思います。墓は相続財産の外にあるので、相続放棄をしても墓を継ぐことはできる、と考えられています。
逆に、墓を継いだからといって借金まで背負うわけではありません。相続放棄は、相続があったと知ってから3か月が期限です。そちらの判断は先に済ませてください。
お墓を誰が継ぐかの決まり方

「長男が継ぐもの」と思われがちですが、法律にそうは書いてありません。決まる順番は3段階です。
親の指定がいちばん先
民法897条のただし書きは、亡くなった人が指定した人がいれば、その人が継ぐとしています。遺言に書いてあればはっきりします。
指定の方法は遺言に限られない、とされています。生前に「墓はお前に任せる」と言われていた、という話が兄弟で共有できているなら、それが出発点になります。
指定がなければ慣習
指定がなければ「慣習に従って」決まります。実際には、兄弟や親族で話し合って決めている家がほとんどだと思います。
決め手になりやすいのは、墓の近くに住んでいるか、法要を取り仕切っているか、管理料を払っていけるか。長男かどうかより、実際に守れるかです。
私は長男ですが、実家まで片道4時間の遠方でした。結果として、行けない墓の名義人になっています。継ぐ人を決めるときは、その後の管理まで話しておくほうがいいです。
揉めたら家庭裁判所
慣習がはっきりせず、話し合いでも決まらないときは、家庭裁判所が定めます(民法897条2項)。調停や審判の申立てです。
ただ、墓の承継だけで裁判所まで行く家は多くありません。「継ぎたい人がいない」ほうで困る家のほうが多いと感じます。
お墓の名義変更の手順|管理者に届け出る

継ぐ人が決まったら、墓地の管理者に届け出ます。流れはシンプルです。
- 管理者に電話で聞く
- 書類をそろえる
- 窓口か郵送で出す
- 新しい許可証を受け取る
管理事務所に聞く3つ
最初にやるのは電話1本です。管理料の請求書か、墓地の使用許可証に連絡先が載っています。聞くのはこの3つです。
- 必要な書類は何か
- 手数料はいくらか
- 郵送で出せるか
遠方に住んでいる人は、3つ目が大事です。私は片道4時間だったので、行く回数を減らせるかどうかで段取りが変わりました。
電話では、いまの名義人が誰かも確かめてください。親ではなく、祖父母など前の代の名前のまま残っていることがあります。
その場合は、前の代からのつながりが分かる戸籍まで求められることがあります。どこまでさかのぼるかは、管理者の指示に従ってください。
よく求められる書類
書類は墓地の規則で決まります。よく求められるのは次のようなものです。
- 霊園所定の申請書
- 墓地の使用許可証
- 親の死亡が分かる戸籍
- 親との続柄が分かる戸籍
- 継ぐ人の印鑑
霊園によっては、継ぐ人の住民票や印鑑登録証明書、ほかの相続人の同意書を求められることもあります。
うちの霊園は、戸籍と印鑑だけで済みました。
戸籍は年金や銀行の手続きでも使うので、取るときに枚数を多めにしておくと二度手間になりません。ほかの手続きの順番は身内が亡くなったらすることのリストにまとめています。
手数料と期限
私が払った手数料は数千円でした。金額は霊園ごとに違い、手数料がかからないところもあるので、電話で確かめてください。
期限は、法律で何日以内と決まってはいません。ただ霊園の規則で、使用者が亡くなったら届け出るよう定めていることがあります。
急ぐ手続きではありませんが、年金の停止や相続放棄のように期限のあるものを片付けたら、次に回す。そのくらいの順番で十分です。期限のある手続きは親が亡くなったあとの年金の手続きで順番に書いています。
使用許可証がないとき
実家を探しても使用許可証が見つからない、ということはよくあります。多くの霊園では再発行の手続きがあります。
東京都立霊園の手続き案内にも、「使用者(名義人)の変更」と並んで「使用許可証の再交付」が載っています。なくしたと分かったら、名義変更と一緒に相談してください。
お墓の名義変更を後回しにすると困ること

名義変更をしなくても、すぐ墓がなくなるわけではありません。困るのは、数年たってから何かを決めようとしたときです。
管理料の請求が宙に浮く
うちの霊園の年間管理料は8,000円で、毎年春に振込用紙が届きました。名義が亡くなった親のままだと、その用紙は空き家になった実家に届き続けます。
誰も気づかずに未払いが続く、というのがいちばん避けたい形です。親あての郵便物の止め方は亡くなった親あての郵便物の記事に書きました。
墓じまいに進めない
遺骨をほかへ移すには、市区町村長の改葬許可が要ります(墓地埋葬法5条)。その申請では、墓地の使用者、つまり名義人の立場が問われます。
名義人が亡くなった親のままだと、まず承継の手続きからになります。墓じまいを考え始めた時点で、名義が止まっていたことに気づく人が多いです。
名義人の承諾がどこまで要るのかは、墓じまいに親戚が反対したときの記事で条文ごとに書いています。
無縁墓の手続きへ
縁故者が見つからない墓は「無縁墳墓」として扱われることがあります。墓地埋葬法の施行規則3条には、そのときの改葬の手続きが書かれています。
官報に載せ、墓の見やすい場所に立札を1年間掲示して、申し出がなければ改葬できる、という流れです。管理料の滞納が何年続いたら使用権がなくなるかは、霊園の規則で決まっています。
名義人の連絡先が霊園に届いていれば、こうなる前に連絡が来ます。名義変更は、霊園とこちらをつなぐ連絡先の登録でもあります。
寺院墓地や公営霊園の名義変更で違うこと

うちは民営霊園で、菩提寺がありませんでした。墓地の種類が違うと、話す相手や条件が変わります。
寺院墓地は住職が先
お寺の境内にある墓は、名義を継ぐことが檀家を継ぐことと重なる場合があります。お寺によっては、お布施や名義変更料の話が出ることもあります。
書類をそろえる前に、住職に「母が亡くなったので墓を継ぎたい」と伝えて、必要なことを聞いてください。
公営霊園は条件に注意
自治体が運営する公営霊園は、使用者の条件が条例や規則で決まっています。継げる人の範囲に条件があることもあるので、窓口で確認してください。
自分の土地にある墓
霊園の区画は、土地を買っているのではなく使う権利を持っている形です。だから名義変更は管理者への届け出で済みます。
家の敷地や自分の山林に墓がある場合は、話が変わります。土地の名義まで絡むので、司法書士に相談したほうが早いです。
名義を継いだあと、私が墓じまいを決めるまで

名義を継ぐと、墓をこの先どうするかを決める人になります。私の場合を書いておきます。
実家を売ったあとも、墓だけが残りました。片道4時間の距離で、2年続けてお盆に行けませんでした。2年目の秋、霊園の管理事務所から「区画の草が伸びています」と電話が来ています。
名義人は私なので、ここからどうするかは私が決めることでした。墓参り代行の見積もりも取りましたが、申し込まずに墓じまいを選んでいます。総額は約68万円でした。
行けないと自覚してから決めるまで、足かけ3年かかりました。その経緯と費用の内訳はお墓が遠くて行けない人の4つの道に書いています。
名義を継いだから畳め、という話ではありません。近くに住む兄弟が守っていけるなら、その人が継ぐのがいちばんです。
継ぐ人を決めるときに、10年後もお参りに行けるかを一度考えておいてください。
墓じまいをするなら、見積もりは2社以上を取ってください。撤去だけで45万円と28万円に分かれた見積もりの比べ方も書いています。
取り出した遺骨のうち、父と母は永代供養墓へ移しました。祖父母と古い1体の計3体は、「みんなの海洋散骨」の代行散骨で海へ送っています。
業者までは遺骨をゆうパックで郵送しました。ヤマト運輸と佐川急便は遺骨を扱っていません。
墓から出した遺骨は、洗浄と乾燥が別料金になります。そのぶん見積もりが上がった点は、先に知っておいてください。
\相談・資料請求は無料です/
いま決めなくても、金額と流れを知るだけでも違います
散骨のほか、永代供養や墓じまいの代行サービスは墓じまいサービスと費用相場の比較に並べています。
お墓の名義変更のよくある質問

- お墓の名義変更はどこに届け出ますか?
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墓地の管理者です。民営霊園なら管理事務所、寺院墓地ならお寺、公営霊園なら自治体か、管理を任されている団体の窓口です。法務局の相続登記とは別の手続きです。
- 長男でなければお墓は継げませんか?
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法律に長男という決まりはありません。親の指定があればその人、なければ慣習、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます(民法897条)。次男や娘が継ぐ家もあります。
- 名義変更に期限はありますか?
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法律上の期限はありません。霊園の規則で届け出を求めていることはあるので、管理者に確認してください。期限のある年金や相続放棄を先に済ませてからで間に合います。
- 名義変更の費用はいくらですか?
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霊園ごとに違います。私の場合は手数料が数千円でした。戸籍の取得費用も別にかかります。寺院墓地ではお布施などの話が出ることもあります。
- 相続放棄をしたらお墓も継げませんか?
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墓は祭祀財産で、相続財産とは別に扱われます。相続放棄をしても墓を継ぐことはできると考えられています。心配なら、相続放棄を頼む専門家に一緒に確認してください。
- 兄弟の共同名義にできますか?
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墓は1人が継ぐのが原則で、霊園の名義も1人とするところが一般的です。管理料の分担は、兄弟の間で別に決めておく家が多いです。
- 遠方に住んでいても手続きできますか?
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郵送で受け付ける霊園もあります。最初の電話で郵送できるかを聞いてください。私は片道4時間だったので、行く回数を減らす段取りを先に考えました。
- 継いだあと、維持できなくなったら?
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名義人として墓じまいを決められます。親族への話し方、改葬許可、見積もりの取り方を順に進めます。私は約68万円で墓じまいをしました。
まとめ:管理者に電話して、書類と手数料を聞く

- 届け先は墓地の管理者
- 遺産分割とは別に進む
- 継ぐのは原則1人
- 長男とは限らない
- 書類と手数料は墓地次第
- 寺院墓地は住職が先
今日やることは1つです。管理料の請求書か使用許可証を探して、墓地の管理者に「名義変更に必要な書類と手数料」を聞いてください。
誰が継ぐかまだ決まっていないなら、その電話は決まってからで構いません。兄弟と話すときは、墓が遺産分割の外にあることだけ共有しておくと、話が相続と混ざらずに済みます。


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