認知症の親の財産管理は、親の判断力が残っているうちなら任意後見か家族信託、落ちたあとは法定後見が基本の分かれ道です。どれを選べるかは、病名より「いま親が自分で契約の中身を分かるか」で決まります。
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判断力が落ちると、本人名義の預金や実家は家族でも動かしにくくなります。成年後見は2026年6月に法律が改正され、2028年12月までに仕組みが変わる予定です。
私は母の物忘れが始まった頃に家族信託の無料相談まで行き、迷っているうちに間に合いませんでした。同じところで止まらないよう、段階ごとの選び方と、親に話す前の準備を書きます。
けんじ「うちの親はまだ大丈夫」と思っているうちが、選べる手がいちばん多い時期です。私はそこで先延ばしにしました。
認知症の親の財産管理で起きること


最初に困るのは、お金が「親のものなのに動かせない」状態です。起きることを3つに分けます。
預金が下ろしにくくなる


銀行は、口座の名義人本人の意思を確かめられないと、引き出しや解約に応じにくくなります。子どもが通帳と印鑑を持って行っても、本人でなければ断られることがあります。
ただ、全国銀行協会は2021年2月に、成年後見を使っていない場合でも、医療費の支払いなど本人のためと明らかな払い出しには親族の手続きに応じうるという考え方を示しています。
とはいえ、何をどこまで認めるかは銀行ごとの判断です。介護費を毎月下ろし続ける使い方まで保証されるものではないので、まずは親の口座がある銀行の窓口で聞いてみてください。
実家を売れなくなる


親名義の実家も同じです。売買や賃貸の契約は本人の意思が前提なので、判断力が落ちると施設の費用にあてるための売却ができなくなります。
最高裁判所の統計でも、成年後見の申立ての動機は預貯金の管理・解約が約93.4%、不動産の処分が約36.3%でした(2025年の終局事件)。困る場面は、どの家もだいたい同じということです。
立て替えが続く


親の口座が使えないあいだ、介護費や生活費は子どもが立て替えることになりがちです。私も母の介護の3年間、交通費や細かな出費を自分の財布から出していました。
このとき記録を残さなかったことが、あとで弟との話し合いで根拠を出せない原因になりました。立て替えるなら、日付と金額と用途だけでもメモしておいてください。
介護費そのものの目安は親の介護費用はいくらかかるかにまとめています。どのくらいの額を立て替える可能性があるか、先に見ておくと備えやすいです。
まず親の判断力の段階を確かめる


制度を比べる前に、親がいまどの段階かを見るほうが早いです。選べる手段は、段階でほぼ決まってしまうからです。
| 親の様子 | 選べる手段 |
|---|---|
| 物忘れはあるが、話の中身は分かる | 家族信託・任意後見・法定後見 |
| 日によって受け答えが揺らぐ | 公証人の判断しだい。急ぐ |
| 財産や契約の中身が分からない | 法定後見が中心 |
診断名では決まらない


認知症の診断があっても、家族信託や任意後見の契約がすぐ不可能になるわけではありません。見られるのは、契約する時点で本人が自分の財産や任せる相手を理解できるかです。
逆に、診断がなくても受け答えがあやしければ契約は難しくなります。最後に判断するのは公証人で、家族の「たぶん大丈夫」ではありません。
揺らぐ時期は急ぐ


いちばん判断が難しいのが真ん中の段階です。調子のいい日なら話が通じるけれど、同じことを何度も聞いてくる。私の母がまさにこの時期でした。
この段階にいると気づいたら、「様子を見る」ではなく、その週のうちに専門家へ相談の予約を入れるくらいでちょうどいいと思います。数週間で線を越えることがあるからです。
成年後見と家族信託の違い


財産管理の備えは、法定後見・任意後見・家族信託の3つです。違いを表にまとめてから、1つずつ見ていきます。
| 比べる点 | 法定後見 | 任意後見 | 家族信託 |
|---|---|---|---|
| 始める時期 | 判断力が落ちた後 | 元気なうちに契約 | 元気なうちに契約 |
| 管理する人 | 家裁が選ぶ | 親が選ぶ | 親が選ぶ家族 |
| 家裁の監督 | あり | 監督人がつく | なし |
| 主な費用 | 専門職の報酬が続く | 公正証書+監督人報酬 | 契約づくりの初期費用 |
| 実家の売却 | 自宅は家裁の許可が要る | 契約の範囲で可能 | 契約の範囲で可能 |
法定後見


判断力が落ちたあとに、家族などが家庭裁判所へ申し立て、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度です。後見人が親の代わりに預金を管理し、契約をします。
知っておきたいのは、後見人を誰にするかは家庭裁判所が決めることです。2025年に選ばれた後見人等のうち、親族は約16.4%で、約83.6%は弁護士や司法書士などの親族以外でした。
専門職が後見人になると、報酬は親の財産から払います。家庭裁判所の調査では、預貯金などが1,000万円未満のとき、専門職の報酬は約8割が年20万円台でした(2025年7〜12月)。
申立てから結論までは、約7割が2か月以内です。急いで預金を動かしたい事情があっても、明日すぐ使える制度ではありません。
任意後見


親が元気なうちに「判断力が落ちたら、この人に任せる」と契約で決めておく制度です。任せる相手を親自身が選べるのが、法定後見との大きな違いです。
契約は公正証書で作ります。日本公証人連合会によると、作成手数料は1契約1万3,000円で、登記の印紙2,600円などが別にかかります(2025年10月改定後)。
契約が動き出すのは、判断力が落ちて家庭裁判所が任意後見監督人を選んでからです。監督人にも報酬がかかる点は、最初に計算に入れておいてください。
家族信託


親が、信頼できる子どもに預金や実家の管理を任せる契約です。管理は子どもがして、その利益は親が受け取る、という形で組むのが一般的です。
家庭裁判所の監督がないぶん、実家を売って施設費用にあてる、といった動きを契約の範囲で柔軟に決められます。その代わり、設計を間違えると使えない契約になるので、専門家と作るのが前提です。
費用は、組成サービスのおやとこで初期費用が税込231,000円から(信託財産の1.1%が目安)でした。ほかに登記や公正証書の実費がかかります(2026年10月時点・公式サイト)。



家族信託は、年金を受け取る権利そのものは任せられません。あくまで預金や実家など、移せる財産の話です。
2026年の法改正で成年後見はどう変わるか


成年後見は、2026年6月17日に改正民法が成立し、6月24日に公布されました(令和8年法律第45号)。法務省の発表をもとに、変わる点を整理します。
補助に一本化される


いまの「後見・保佐・補助」の3つの型のうち、後見と保佐をなくして補助にまとめます。本人に必要な範囲に絞って支援を使えるようにする、というのが改正の中心です。
報道や専門家の解説では、「実家の売却だけ」「遺産分割だけ」のように行為を限った利用や、必要がなくなったときに終われる仕組みが挙げられています。
施行は2028年12月まで


成年後見の部分は、公布から2年6か月以内に施行されます。2026年10月の時点では、まだ今の制度のままです。
いま親の預金が止まって困っている方は、改正を待つより今の制度で動くことになります。これから備える方は、改正後の使い勝手も専門家に聞いてから選ぶと安心です。
家族信託に間に合わなかった私の話


ここは制度の説明ではなく、私が失敗した記録です。同じ段階にいる方の参考になればと思って書きます。
無料相談までは行った


母が同じことを一日に何度も聞くようになり、火の消し忘れも増えていた頃です。口座が凍結されると知って調べ、家族信託の無料相談を受けました。
相談先は当時のスマート家族信託、いまのおやとこです。そこで初めて、診断名ではなく契約時の判断力で決まること、最後は公証人が見ることを知りました。
迷った数週間


「お母さんは説明できる状態ですか」と聞かれて、私は即答できませんでした。費用、弟への切り出し方、母が嫌がらないか。決めきれないまま日が過ぎました。
そのあいだに、母の受け答えは目に見えて頼りなくなりました。契約は見送り、書類は一枚も交わしていません。
迷っていた数週間が、そのまま間に合わなかった数週間です。
いまならこう動く


相談の帰りに、次の予約まで決めてしまいます。費用や弟への説明は、契約の準備と並行して考えれば足りました。止まる理由にする必要はなかったと思います。
とか書きながら、あの時の私に同じことができたかは分かりません。親の衰えを認めるのは、手続きより気持ちのほうが重いので。
相談で何を聞かれたか、費用の内訳はどうだったかは家族信託の組成サービスを調べたときのレビューに細かく書いています。
親に話す前にやっておくこと


どの制度を選ぶにしても、財産の全体が見えていないと相談が進みません。専門家に会う前に、家族でできる準備です。
財産を書き出す


- 銀行と支店の名前
- 通帳と印鑑の置き場所
- 年金の振込口座
- 実家の名義と所在地
- 保険の会社と証券
金額までそろわなくても大丈夫です。どこに何があるかが分かるだけで、専門家の見積もりはかなり具体的になります。
親への切り出し方


「お金を管理させて」から入ると、たいてい構えられます。「もし入院したら、支払いで困らないようにしておきたい」と、親の困りごととして話すほうが受け止めてもらいやすいです。
分け方の希望まで残してもらえそうなら、遺言書の種類と書き方の基本もあわせて見ておくと、話の順番を組み立てやすくなります。
きょうだいに共有する


家族信託で管理を任される子が1人でも、ほかのきょうだいには決める前に伝えてください。黙って進めると、あとで「勝手に親の金を動かした」と受け取られかねません。
私は介護の3年分の不満を弟に言わないまま相続の話に入り、1年口をきかない関係になりました。お金の話は、揉める前に数字と一緒に出しておくほうがいいです。
親が認知症のまま亡くなった場合に相続で何が止まるかは、親が認知症のときの相続で気をつけることに分けて書いています。
相談先を選ぶ


| 相談したいこと | 主な窓口 |
|---|---|
| 制度の入口・介護との両立 | 地域包括支援センター |
| 法定後見の申立て | 家庭裁判所・司法書士・弁護士 |
| 任意後見の契約 | 公証役場・専門家 |
| 家族信託の設計 | 司法書士・弁護士・組成サービス |
親がまだ受け答えできて、家族信託が合うか確かめたい段階なら、組成サービスの無料相談で「うちは間に合うか」だけ聞く使い方もあります。私が相談したのはここでした。
初回相談は無料で、状況により2回目以降も無料とされています(2026年10月時点・公式サイト)。
介護と並行して施設探しも始まっている方は介護施設の探し方、親が亡くなったあとの相続の相談先は相続の相談はどこがいいかにまとめています。
認知症の親の財産管理についてよくある質問


- Q親が認知症になると預金は下ろせませんか?
- A
本人の意思が確かめられないと、原則として引き出しや解約は難しくなります。医療費など本人のためと明らかな支払いには親族の手続きに応じる銀行もあるので、まず口座のある銀行に相談してください。
- Q認知症と診断されたら家族信託はもう無理ですか?
- A
契約する時点で、本人が財産や任せる相手を理解できるかが基準で、最終的には公証人が判断します。受け答えが揺らいでいるなら、早めに専門家へ相談してください。
- Q成年後見人に家族はなれますか?
- A
なれますが、法定後見で選ぶのは家庭裁判所で、2025年に選ばれた後見人等のうち親族は約16.4%でした。家族に任せたいなら、元気なうちの任意後見や家族信託で決めておく方法があります。
- Q成年後見の費用はどのくらいですか?
- A
専門職の報酬は親の財産から毎年払われ、預貯金などが1,000万円未満なら約8割が年20万円台でした(2025年7〜12月・家庭裁判所の調査)。申立ての実費や鑑定の費用は別です。
- Q成年後見は途中でやめられますか?
- A
今の制度では、判断力が回復した場合などを除き、原則として続きます。2026年6月成立の改正で、必要な範囲だけ使い終われる形へ変わる予定ですが、施行は2028年12月までの政令で決まる日です。
- Q任意後見と家族信託はどちらがいいですか?
- A
実家の売却など財産を柔軟に動かしたいなら家族信託、介護契約や生活全般の手続きまで任せたいなら任意後見が合います。両方を組み合わせる家庭もあるので、専門家に家の事情を話して決めてください。
- Q親の実家を売って施設費用にあてられますか?
- A
元気なうちに家族信託を組んでいれば、契約の範囲で子が売却できます。判断力が落ちた後は法定後見を使い、自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
- Qまずどこに相談すればいいですか?
- A
制度の入口なら地域包括支援センター、後見の申立ては家庭裁判所や司法書士・弁護士、家族信託は司法書士や組成サービスが窓口になります。親の段階が揺らいでいるなら、窓口選びより予約を先にしてください。
まとめ:認知症の親の財産管理は段階で選ぶ


親の判断力が落ちると、本人名義の預金や実家は家族でも動かしにくくなります。備えは法定後見・任意後見・家族信託の3つで、選べるかどうかは親の段階しだいです。
任意後見と家族信託は、親が契約の中身を分かるうちにしか結べません。成年後見は2028年12月までに変わりますが、今困っているなら今の制度で動くことになります。
私は相談まで行って、迷っているうちに間に合いませんでした。
財産を書き出す、きょうだいに伝える、相談を予約する。どれか1つだけでも、今週のうちに手をつけてみてください。



制度は難しいので、全部を分かってから動く必要はありません。「うちはどの段階か」を専門家に聞くところからで十分です。
相続や財産の相談先は相続の相談はどこがいいか、介護施設の探し方は介護施設の探し方、費用の目安は親の介護費用はいくらかかるかにまとめています。










