相続税の生前対策は、対策を選ぶ前に「そもそも相続税がかかるか」を試算するところから始めます。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、遺産がこれ以下なら相続税はかかりません。
超えそうな家の主な対策は、年110万円の暦年贈与、生命保険の非課税枠、自宅の小規模宅地等の特例、相続時精算課税の4つです。2024年から贈与の足し戻し期間が7年に延びたので、始めるなら早いほど効きます。
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私の母の相続は、基礎控除4,200万円に対して遺産が1,100万円台で、相続税はかかりませんでした。
それでも弟と揉めて1年口をきいていません。税金よりも、分け方の準備がなかったことを後悔している側から書きます。
けんじ「生前対策」と聞くと難しそうですが、最初の一歩は電卓1つで足ります。順番に見ていきます。
相続税の生前対策は「かかるか」の試算から


相続税がかからない家が節税策を打っても、手間と手数料が増えるだけです。逆に、かかる家が何もしないと、実家の土地の評価だけで税額が出ることがあります。
基礎控除を計算する


基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人の人数ごとに並べると、次のとおりです。
| 法定相続人 | 基礎控除 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
※国税庁「相続税の計算」に基づきます(2026年10月時点)。遺産の合計がこの金額以下なら、相続税の申告は原則いりません。
遺産には預貯金だけでなく、土地と建物、株、それに死亡保険金のうち非課税枠を超えた分も入ります。土地は時価ではなく、路線価や固定資産税評価額をもとに評価します。
私の母の場合


母の相続人は私と弟の2人で、基礎控除は4,200万円でした。遺産は、実家の固定資産税評価額が約800万円と、2つの口座の預金が計約340万円です。
合わせて約1,140万円で、基礎控除には遠く届きませんでした。
この計算を紙に書いて弟に写真で送ったら、「まじか」とだけ返ってきたのを覚えています。まだ揉める前の話です。
相続税がかかる、かからないの線は相続税はいくらからかかるかで詳しく計算しています。
要否を国税庁で確かめる


ざっくり確かめるなら、国税庁の相続税の申告要否判定コーナーが使えます。財産の金額を入れると、申告が要りそうかどうかの目安が出ます。
- 都市部に持ち家がある
- 預貯金が数千万円ある
- アパートや株を持っている
- 相続人が1〜2人と少ない
当てはまるものが多いほど、基礎控除を超えやすくなります。境目にいるなら、評価を税理士に出してもらうのが確実です。
相続税の生前対策と非課税枠


基礎控除を超えそうな家で、よく使われる対策を4つ並べます。どれも単独ではなく、組み合わせて使うのが普通です。
| 対策 | 非課税の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 1人年110万円まで | 7年分は足し戻し |
| 生命保険 | 500万円×法定相続人 | 契約の形で変わる |
| 小規模宅地の特例 | 自宅の土地を最大8割減 | 誰が継ぐかで決まる |
| 相続時精算課税 | 年110万円+累計2,500万円 | 暦年課税に戻れない |
※2026年10月時点・国税庁タックスアンサーに基づく目安です。適用できるかは税理士に確かめてください。
暦年贈与は年110万円


1年間にもらった額が110万円以下なら、贈与税はかからず申告もいりません。もらう人ごとに110万円なので、子ども2人に渡せば年220万円を移せます。
ただし、亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に足し戻されます。この期間が2024年から延びたので、後の章で整理します。
国税庁「贈与税の計算と税率」が一次情報です。
生命保険の非課税枠


亡くなった人が保険料を払っていた死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。相続人が2人なら1,000万円までかかりません。
預金のままなら全額が遺産に入りますが、保険金にしておけば枠の分だけ外れます。受取人が決まっているので、分け方の話し合いとは別に受け取れるのも利点です。
契約者・被保険者・受取人の組み合わせによっては、相続税ではなく贈与税や所得税になります。加入するときに形を確かめてください。
国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」に計算方法があります。
小規模宅地等の特例


亡くなった人が住んでいた自宅の土地は、要件を満たすと330㎡まで評価額が80%減になります。実家のある家では、効果がいちばん大きい対策です。
使えるのは、配偶者や同居していた子など、決まった親族が相続した場合です。別居の子が継ぐ場合は条件がさらに厳しくなります。
生前に「誰が実家を継ぐか」を決めておくと、使えるかどうかの見通しが立ちます。
特例を使うには、相続税がゼロになる場合でも申告が必要です。要件は国税庁「小規模宅地等の特例」で確かめられます。
相続時精算課税


60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で選べる制度です。累計2,500万円まで贈与税がかからず、亡くなったときに相続財産として精算します。
2024年からは、これとは別に年110万円の基礎控除ができ、この110万円分は相続財産に足し戻されなくなりました。値上がりしそうな財産を早めに渡したい家に向くと言われます。
一度選ぶと、その親からの贈与は暦年贈与に戻せません。最初の年に届出書を出す必要もあるので、選ぶ前に税理士に試算してもらってください。
生前対策の落とし穴


良かれと思った対策が、あとで否認されたり裏目に出たりすることがあります。先に知っておきたい4つを並べます。
贈与の足し戻しは7年へ


亡くなる前の暦年贈与を相続財産に足し戻す期間は、2024年1月以後の贈与から3年が7年に延びました。いきなり7年になるのではなく、相続が起きた日によって段階的に延びます。
| 相続が起きた日 | 足し戻す期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 亡くなる前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から亡くなる日まで |
| 2031年1月1日以降 | 亡くなる前7年以内 |
延びた4年分の贈与は、合計100万円までは足し戻さなくてよいことになっています。※国税庁「贈与財産の加算と税額控除」に基づきます(2026年10月時点)。
つまり、具合が悪くなってからの駆け込み贈与は、ほとんど効かないということです。暦年贈与は、元気なうちに長く続けて初めて意味があります。
名義預金とみなされる


子や孫の名義の口座に入れていても、親が通帳と印鑑を持ったままだと、贈与ではなく親の預金と判断されることがあります。そうなると、相続財産に戻されます。
もらう側が自分で口座を管理し、あげる・もらうの合意を残しておくことが大切です。毎年、贈与契約書を作っておく家もあります。
認知症になると動けない


贈与も保険の契約も、親本人が判断できるうちしかできません。認知症が進むと、口座も実家も動かせなくなります。
私は母の物忘れが始まったころ、家族信託を調べて無料相談まで行きました。でも判断能力の線引きの話になり、間に合わずに見送っています。
そのときの話はおやとこの無料相談に行った記録に書きました。
認知症の手前で何を選べるかは認知症になる前の財産管理の選び方に整理しています。
教育資金の一括贈与は終了


孫の教育資金として1,500万円まで非課税で渡せた一括贈与の特例は、2026年3月31日で終わりました。いまから新しく使うことはできません。
国税庁の案内で確かめられます。
古い記事やパンフレットには、まだ使える前提で書かれているものがあります。対策を選ぶときは、制度の期限を先に見てください。
相続税がかからない家の生前対策


相続税がかからない家は、節税の対策はいりません。代わりに必要なのが、誰が何を継ぐかを元気なうちに決めておく準備です。私の家に足りなかったのはこちらでした。
税より揉め事が高くついた


母の相続税はゼロでした。それでも、実家の分け方で弟と揉め、1年口をききませんでした。
そのあいだ実家は母の名義のままで、固定資産税や光熱費、帰省の交通費で約28万円を私が払っています。
介護3年ぶんとして私が求めた上乗せも、立て替えの記録がなくて根拠を出せず、最後は取り下げました。揉めた経緯は弟と1年揉めた兄弟の相続トラブルに書いています。
母が元気なうちに、分け方の希望を一言でも書き残してくれていたら。いまもときどき、そう考えます。
遺言で分け方を決める


分け方をはっきりさせるいちばん確かな方法は、遺言書です。遺言書の種類と書き方を先に見ておくと、親に切り出すときの材料になります。
母のことがあって、私も2026年の春に自分の遺言を考え、相談窓口で無料相談を受けました。まだ契約はしていません。
その話は終活と相続のまどぐちの口コミ評判に書きました。
財産の一覧を作る


相続税がかかるかどうかも、分け方を決めるのも、何がどこにあるか分からないと始まりません。預金の銀行名、保険の会社、土地の場所だけでも一覧にしておくと、あとがずっと楽です。
書き方はエンディングノートの書き方にまとめました。親に書いてもらうのが難しければ、子が聞き取って書いてもかまいません。
相続税の生前対策は誰に相談するか


基礎控除を超えそうなら、相続税に詳しい税理士に試算してもらうのが確実です。税理士でも相続の申告をほとんど扱わない人もいるので、相続の実績があるかを確かめてください。
相談の前にまとめること


- 相続人になる人と人数
- 土地と建物の場所
- 預金と保険のおおよその額
- これまでの贈与の有無
この4つが分かれば、初回の相談で基礎控除を超えるかどうかの見当はつきます。固定資産税の納税通知書を持っていくと、土地と建物の評価額も伝えられます。
税理士の探し方


知り合いに税理士がいなければ、紹介サービスを使う方法があります。税理士ドットコムは紹介が無料で、断るのも自由、何人でも紹介してもらえると公式にあります。
分け方や遺言の相談が中心なら、税理士より遺言や家族信託を扱う窓口のほうが合う場合もあります。相談先の違いは相続の相談はどこがいいかでまとめました。
\税理士の紹介は完全無料/
断るのは自由で、何人でも紹介してもらえます
相続税の生前対策についてよくある質問


- Q相続税の生前対策は何から始めればいいですか?
- A
まず相続税がかかるかを試算します。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、遺産がこれ以下なら相続税はかからず、節税の対策もいりません。
- Q年110万円までの贈与なら本当に無税ですか?
- A
もらう人1人あたり年110万円以下なら、贈与税はかからず申告もいりません。ただし亡くなる前の一定期間の贈与は、相続財産に足し戻されます。
- Q2024年の改正で何が変わりましたか?
- A
暦年贈与の足し戻し期間が3年から7年に延び、相続時精算課税に年110万円の基礎控除ができました。足し戻しの期間は相続が起きた日によって段階的に延びます。
- Q生命保険の非課税枠はいくらですか?
- A
死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税です。相続人が2人なら1,000万円です。契約の形によっては相続税以外の税金になります。
- Q名義預金とは何ですか?
- A
子や孫の名義でも、親が通帳や印鑑を管理しているお金のことです。贈与と認められず相続財産に戻されることがあるので、もらう側が管理し、合意を残すことが大切です。
- Q小規模宅地の特例は誰でも使えますか?
- A
使えません。配偶者や同居の子など、相続する人と住み方の要件があります。適用するには相続税がゼロになる場合でも申告が必要です。
- Q相続時精算課税と暦年贈与はどちらが得ですか?
- A
財産の中身と金額で変わります。精算課税は一度選ぶと暦年贈与に戻せないので、選ぶ前に税理士に試算してもらってください。
- Q教育資金の一括贈与はまだ使えますか?
- A
使えません。2026年3月31日で終了し、4月1日以後は新しく適用を受けられません。
- Q相続税がかからない家でも生前対策は必要ですか?
- A
節税の対策はいりませんが、分け方の準備は必要です。私の母の相続は税金ゼロでも、分け方で弟と1年揉めました。
まとめ


相続税の生前対策は、まず基礎控除で「かかるか」を試算するところから始めます。かかりそうなら、暦年贈与・生命保険の非課税枠・小規模宅地の特例・相続時精算課税を組み合わせ、税理士に試算してもらってください。
贈与の足し戻しは7年に延びたので、駆け込みではほとんど効きません。親が元気で判断できるうちに始めることが、いちばんの対策です。
相続税がかからない家は、分け方の準備が生前対策になります。私の家は税金ゼロで、揉め事のほうが高くつきました。



電卓で基礎控除を出すところまでなら、今日5分でできます。そこから先は、数字を持って専門家に聞けば大丈夫です。
手続き全体の流れは身内が亡くなったらすることリストでも解説しています。










