相続税が払えないときは、手元の現金集め→延納(分割払い)→物納→売却・借入の順で考えます。相続税は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、原則現金一括で納める税金だからです。
払えないまま放っておくと、延滞税が2026年は年2.8%、2か月を過ぎると年9.1%で増えていきます。延納も物納も、申請の期限は納付の期限と同じ10か月です。
私は母の相続で、遺産のほとんどが実家という状態を経験しました。うちは相続税がかからなかった側ですが、実家を売るまでに1年以上かかりました。
売って払うつもりの人ほど、その話を先に読んでほしいです。
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けんじ「払えない=すぐ差し押さえ」ではありません。使える制度には順番と期限があるので、そこから整理します。
相続税が払えないときの対処法5つ


まず全体像です。上から順に検討していくのが基本で、物納は延納でも無理なときの手段です。
| 方法 | 向く人 | 期限 |
|---|---|---|
| 現金を集める | 預金や保険金がある | 10か月以内 |
| 延納 | 年払いなら払える | 10か月以内に申請 |
| 物納 | 延納でも払えない | 10か月以内に申請 |
| 売却 | 不動産が多い | 10か月以内に換金 |
| 借入 | 早く売りたくない | 10か月以内に借入 |
※期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内(申告期限と同じ)。国税庁の案内より、2026年10月時点。
10か月の使い方の目安も置いておきます。払えないと分かるのが遅いほど、選べる手が減ります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1〜3か月 | 財産と借金を洗い出す |
| 4〜6か月 | 分け方の話し合い・評価 |
| 7〜9か月 | 税額と納税資金を固める |
| 10か月まで | 申告・納付・延納申請 |
※一般的な目安です。財産の種類や相続人の数で前後します。
手元の現金を集める


払えないと思う前に、使えるお金を全部洗い出します。見落としやすいのは次の3つです。
- 故人の預貯金
- 死亡保険金
- 相続人自身の預金
故人の口座は凍結されますが、遺産分割の前でも1つの金融機関につき150万円まで、相続人が単独で引き出せる仮払いの制度があります(民法909条の2)。上限は口座残高の3分の1に、その人の法定相続分をかけた額です。
死亡保険金は受取人のお金なので、遺産分割を待たずに受け取れます。相続税の計算では「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。
延納で分けて払う


延納は、相続税を分割で納める制度です。使うには4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 相続税額が10万円超
- 現金で払うのが困難
- 担保を出す
- 期限内に申請する
延納できる期間は、遺産に占める不動産の割合で決まり、最長5年〜20年です。分けた分には利子税がかかり、2026年の特例割合は区分によって年0.6%〜1.0%ほどです。
担保は、延納する税額が100万円以下で期間が3年以下なら不要です。申請書は納期限までに税務署へ出します。
物納で納める


物納は、延納でも払えないときに、相続した財産そのもので納める制度です。財産には順番があり、不動産や上場株式などが第1順位です。
借地の問題がある土地や、境界が決まっていない土地などは物納できないことがあります。許可か却下が出るまで、原則3か月(最長9か月まで延長)かかります。
物納は要件が細かく、書類も多い制度です。検討するなら、10か月の期限が来るかなり前から税理士に相談してください。
売って納める


実家や土地を売って、その代金で納める方法です。延納や物納の条件に合わない人には、いちばん現実的な手です。
相続した不動産を相続税の申告期限から3年以内(亡くなった日の翌日から3年10か月以内)に売ると、払った相続税の一部を売却時の取得費に足せる特例があります。売ったときの所得税が軽くなる仕組みです。
地方の家や古い家は、仲介ではなかなか買い手がつかないこともあります。売れにくい家の買取業者は売れにくい実家の買取業者を調べたレビューに書きました。
売り急ぐと安く買われやすいので、複数社の査定で相場をつかんでから決めてください。一括査定の選び方は不動産売却の一括査定はどこがいいかにまとめています。
借りて納める


不動産を急いで安く売りたくないなら、金融機関から借りて納め、あとで売却代金で返す方法もあります。相続した不動産を担保にするローンを扱う金融機関もあります。
金利や審査は金融機関しだいです。借りた場合の返済計画まで、税理士と一緒に数字で確かめてから決めてください。
相続税を放置するとどうなるか


延滞税が増えていく


納期限を過ぎると、納めるまでの日数に応じて延滞税がかかります。2026年の割合は次のとおりです。
| 期間 | 延滞税の割合 |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月以内 | 年2.8% |
| 2か月を過ぎた分 | 年9.1% |
※国税庁「延滞税の計算方法」より。2026年1月1日〜12月31日の割合です。申告自体をしていないと、無申告加算税が別にかかることもあります。
督促のあと差押え


納めないままにしておくと、督促状が届き、それでも納めなければ預貯金や不動産の差押えに進むことがあります。
ただ、払えないと分かった段階で税務署に相談すれば、延納や猶予の制度を案内してもらえます。黙っていることがいちばん不利です。
他の相続人にも請求


相続税には連帯納付義務があります。兄弟の誰かが払わないと、ほかの相続人が自分の受け取った財産の範囲で払うよう求められることがあります(相続税法34条)。
自分の分を払えば終わり、ではありません。兄弟と連絡が取りにくい人ほど、誰がいつ払うのかを文字で残しておいてください。
売って払うなら10か月は短い


ここからは私の話です。母の遺産は、固定資産税評価額で約800万円の実家と、預貯金2口座で合わせて約340万円でした。
相続税の基礎控除は、相続人が私と弟の2人なので3,000万円+600万円×2人=4,200万円。紙に書いて計算したら、桁がひとつ足りませんでした。
うちは申告も納税も要らなかった側です。その紙を写真に撮って弟に送ったら、「まじか」とだけ返ってきました。
それでも、実家を売るまでに1年以上かかりました。弟と分け方で揉め、話がつくまで実家の名義は母のままだったからです。
もし相続税がかかる家だったら、と今でも考えます。「実家を売って払えばいい」と思っていても、兄弟の合意がなければ売れません。
うちの場合なら、10か月はあっという間に過ぎていたはずです。
分け方がまとまらなくても、申告と納税は10か月以内に必要です。未分割のままだと小規模宅地等の特例などが使えないので、申告期限後3年以内の分割見込書を出しておく手当てがあります。
分け方の話し合いの進め方は遺産分割の切り出し方に、実家を1,800万円で売った流れはイエウールで実家を売ったときの話にまとめています。
本当に払えないか先に確かめる


「払えない」と感じても、計算してみると思ったより少ない、ということがあります。先に確かめたいのは次の4つです。
- 基礎控除を引いたか
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者の税額軽減
- 死亡保険金の非課税
特に実家の土地は、条件に合えば小規模宅地等の特例で評価額が大きく下がることがあります。そもそもかかるかどうかは相続税はいくらからかかるかで確認できます。
特例は申告しないと使えないものが多く、使うと税額がゼロになっても申告は必要です。ここは自己判断せず、税理士に数字を出してもらうのが確実です。
相続税が払えないときの相談先


払えないかもしれないと思ったら、相談先は相続税に強い税理士です。延納・物納・売却・借入のどれが合うかは、遺産の中身と家族の事情で変わります。
税理士でも、相続税の申告をどれだけ扱っているかには差があります。最初の面談で、次の3つを聞いてみてください。
- 年間の相続税申告件数
- 延納・物納の経験
- 報酬の見積もり
知り合いに税理士がいない場合は、紹介サービスを使うと早いです。税理士ドットコムの評判に、使い方と注意点をまとめています。紹介は無料で、断るのも自由です。
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東京・神奈川・大阪・京都・兵庫の方は、相続税申告の専門事務所に無料相談を予約する方法もあります。対応エリアと中身は相続アシストの評判に書きました。
ほかの窓口との比較は相続の相談はどこがいいかにまとめています。
今回の相続が片づくと、次は自分の代の話になります。納税資金を先に用意する方法は相続税を軽くするための生前の備えで整理しました。
相続税が払えないときのよくある質問


- Q相続税が払えないとどうなりますか?
- A
納期限を過ぎると延滞税がかかり、督促のあと財産の差押えに進むことがあります。払えないと分かった時点で税務署か税理士に相談すれば、延納などの制度を検討できます。
- Q相続税は分割払いできますか?
- A
延納という制度で分割できます。税額が10万円超・現金での納付が困難・担保の提供・期限内の申請が条件で、分けた分には利子税がかかります。
- Q延納は何年まで延ばせますか?
- A
遺産に占める不動産の割合で決まり、最長5年から20年です。不動産の割合が75%以上なら、不動産に対応する税額は最長20年になります。
- Q物納はどんな財産でもできますか?
- A
できません。不動産や上場株式などが第1順位で、順番に従う必要があります。借地の問題がある土地などは物納できないことがあります。
- Q延滞税は何%かかりますか?
- A
2026年は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を過ぎた分が年9.1%です。割合は毎年見直されます。
- Q遺産分割がまとまらなくても申告は必要ですか?
- A
必要です。法定相続分で分けたものとして10か月以内に申告し、まとまってから修正します。特例を使うなら分割見込書も出しておきます。
- Q故人の口座から相続税を払えますか?
- A
遺産分割の前でも、仮払いの制度で1つの金融機関につき150万円まで単独で引き出せます。全員の合意があれば、それ以上の払い出しも金融機関と相談できます。
- Q兄弟が相続税を払わないとどうなりますか?
- A
相続税には連帯納付義務があり、ほかの相続人が受け取った財産の範囲で払うよう求められることがあります。
- Q不動産を売って払うときの注意点は?
- A
兄弟の合意と相続登記がないと売れません。申告期限から3年以内に売れば、払った相続税の一部を取得費に足せる特例もあります。
まとめ:相続税が払えないなら期限前に動く


相続税が払えないときは、手元の現金集め・延納・物納・売却・借入の順で考えます。どの手も10か月の期限内に動くことが前提です。
実家を売って払うつもりなら、兄弟の合意と登記に時間がかかることを見込んでください。私は分け方で揉めて、売るまでに1年以上かかりました。
迷ったら、計算と手続きの見通しを税理士に出してもらうところからです。相談しやすい税理士を探すなら【税理士ドットコム】










