在宅介護の始め方は、親が住む地域の地域包括支援センターに相談し、要介護認定を申請するところからです。認定が出たらケアマネジャーを決め、ケアプランを作ってデイサービスや訪問介護を使い始めます。
申請から結果が出るまでは、法律上原則30日以内。認定の効力は申請した日にさかのぼるので、迷ったら先に申請だけ出してしまってかまいません。
私は実家で一人暮らしの母を、片道4時間以上の距離から3年介護しました。始まりは、母が家の前で転んだという近所の方からの電話です。
そのとき何も知らなかった私が、やる順番どおりに書きます。
けんじ何から手をつければいいか分からないのは、みんな同じです。今日やることは1つだけなので、順番に見ていきましょう。
在宅介護の始め方は5つの手順


全体の流れを先に表にします。いま自分がどこにいるかだけ確かめてください。
| 手順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 地域包括に相談 | 今日 |
| 2 | 要介護認定を申請 | 相談した週 |
| 3 | 認定調査に立ち会う | 申請後1〜2週 |
| 4 | ケアマネを決める | 結果が出る前後 |
| 5 | ケアプランで開始 | 結果が出たら |
※目安は一般的な流れです。調査の日程や結果が出るまでの日数は、自治体や時期で前後します。
地域包括に相談する


最初の窓口は、親が住んでいる地域の地域包括支援センターです。介護・福祉の総合相談窓口で、相談は無料。子どもが遠くに住んでいても、電話で相談できます。
担当のセンターは、親の住所で決まります。市区町村のホームページで「地域包括支援センター 一覧」を探すと、住所ごとの担当が載っています。
電話で伝えるのは3つで足ります。
- 親の住所と年齢
- 困っていること
- 家族の住まいと連絡先
まだ介護が始まっていなくても、番号を控えておくだけで、いざというときの動き出しが違います。見守りの始め方は一人暮らしの親が心配なときの見守りに書きました。
要介護認定を申請


介護保険のサービスを使うには、市区町村の要介護認定が必要です。申請先は市区町村の介護保険の窓口ですが、地域包括支援センターで代わりに手続きを進めてもらえることも多いです。
申請でよく聞かれるのは次のものです。持ち物は自治体で違うので、電話のときに確認してください。
- 介護保険の被保険者証
- かかりつけ医の名前
- 申請する人の本人確認書類
介護保険法では、申請への処分は申請のあった日から30日以内にすると定められています。調査に時間がかかるときは、延期の通知が届きます。
認定は申請日にさかのぼって効力が出ます。結果を待つ間でも、ケアマネと相談して暫定のケアプランでサービスを始められる場合があります。
申請の細かい流れは介護保険の申請と要介護認定の受け方にまとめました。
認定調査に立ち会う


申請すると、調査員が自宅に来て本人の体と暮らしの様子を聞き取ります。あわせて、かかりつけ医が主治医意見書を書きます。
この2つをもとに、要支援1〜2・要介護1〜5の区分が決まります。
調査には、できれば家族が立ち会ってください。親は、よそから来た人の前ではしゃんとします。うちの母も、弟が来た日だけ受け答えがはっきりしていました。
ふだん困っていることは、本人の前で言いにくければメモにして調査員に渡します。「鍋を火にかけたまま忘れる」「同じ話を何度もする」のように、場面で書くと伝わります。
ケアマネを決める


要介護1以上なら、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと契約します。要支援の場合は、地域包括支援センターがプランづくりを担当します。
事業所は、地域包括支援センターで近くのところを紹介してもらうのが早いです。遠距離の家族なら「電話とメールで連絡が取れるか」を最初に聞いておくと、あとが楽になります。
合わなければ、ケアマネは途中で変えられます。私も最初のケアマネさんとは少し合わず、途中で変えてもらいました。
遠慮して黙っているより、早めに相談したほうが親のためにもなります。
ケアプランで始める


ケアマネが本人と家族の希望を聞き、どのサービスを週に何回使うかの計画(ケアプラン)を作ります。在宅のケアプラン作成は、2026年10月時点で利用者の自己負担はありません。
母のときは、週に何回デイサービスに通うかを一緒に決めました。材料にしたのは、母の体調と、私が月に何回帰れるかです。
家族が通える回数は、見栄を張らずに少なめに伝えてください。
※ケアプランの利用者負担は2027年度の制度見直しで議論が続いています。最新の扱いはケアマネか市区町村に確認してください。
申請前に家族で決めておくこと


手続きより先に止まりやすいのが、家族の段取りです。介護が始まって最初の1か月に、せめてこれだけは決めておいてください。
窓口役を1人決める


地域包括・ケアマネ・事業所からの連絡を受ける人を、家族で1人に決めます。連絡先が分散すると、同じ説明を何度もすることになります。
窓口役は「全部やる人」ではありません。私はここを取り違えて、通院の付き添いも施設見学も1人で回すことになりました。
通える回数を出す


私の場合は月2回帰るのが限界でした。遠距離介護の帰省頻度に書いたとおり、根拠があった回数ではありません。これ以上は無理、という回数です。
その回数をケアマネに正直に出すと、家族が行けない日を埋める形でプランを組んでもらえます。
お金の出どころ


介護費用は、基本は親の年金と貯金から出します。うちも母の年金からで、足りない分は私が立て替えました。
立て替えるなら、領収書と交通費の記録を最初から残してください。私は記録を残さず、あとの相続の話し合いで根拠を出せませんでした。
兄弟がいるなら、この3つを最初に話しておくと後がこじれにくいです。弟に頼めずに抱え込んだ話は介護を兄弟が手伝わないときに書いています。
在宅介護で使えるサービスと費用


ケアプランに組める在宅サービスの代表はこのあたりです。全部使う必要はなく、家族が行けない所を埋める発想で選びます。
| サービス | 内容 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | ヘルパーが自宅で介助・家事 | 一人暮らし |
| デイサービス | 日中に通って食事・入浴 | 日中の見守り |
| 訪問看護 | 看護師が自宅で医療的ケア | 持病がある |
| ショートステイ | 数日だけ施設に泊まる | 家族が休む |
| 福祉用具 | ベッド・手すりのレンタル | 転倒が心配 |
近所にどんな事業所があるかは、自分でも調べておくとケアマネとの相談が具体的になります。検索サイトの使い勝手はかいごDB(現・安心介護紹介センター)を調べた記事に書きました。
自己負担は1〜3割


介護保険サービスの利用者負担は、所得に応じて原則1割(一定以上の所得があれば2割か3割)です。ただし、要介護度ごとに1か月に使える上限があります。
| 区分 | 1か月の上限 | 1割負担の目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約5,000円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約1.1万円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約1.7万円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約2万円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約2.7万円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約3.1万円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約3.6万円 |
※区分支給限度基準額(2026年10月時点)。1単位は約10円で、地域とサービスで少し高くなります。上限を超えた分は全額自己負担です。
このほかに、デイサービスの食費やおむつ代などは保険の外でかかります。月々の総額の見通しは親の介護費用の相場でまとめています。
手すり・用具の補助


手すりの取り付けや段差の解消などの住宅改修は、20万円までが介護保険の対象です。入浴や排せつに使う福祉用具の購入は、年度で10万円までが対象になります。
住宅改修は、工事の前に申請しないと補助が出ません。業者に頼む前に、必ずケアマネに相談してください。
泊まりで家族が休む


ショートステイは、本人に数日だけ施設に泊まってもらう仕組みです。家族の用事や休養のために使ってかまいません。
ただ、本人が泊まりを嫌がって使えない家も多いです。切り出し方は親が施設を嫌がるときの段階の踏み方にまとめています。
離れて暮らす親で私がつまずいた所


ここからは、遠距離で始めた私の失敗です。同じ立場の人が多いと思うので、3つだけ書きます。
1つ目は、転ぶまで何も手を打たなかったことです。電話では毎回元気な声だったので、大丈夫だと思っていました。母の転倒を知ったのは、近所の方からの電話でした。
2つ目は、物忘れを「年のせい」で済ませたことです。鍋を火にかけたまま忘れることがあったのに、電話の回数だけ見て安心していました。
3つ目は、お金の管理を後回しにしたことです。家族信託を調べて無料相談まで行ったのに、判断能力の線引きに間に合わず見送りました。
その話はおやとこ(旧スマート家族信託)の評判に書いています。
どれも、始める前なら防げた気がします。とか言いつつ、当時の私に同じことができたかは分かりません。
離れて暮らす家族ならではの段取りは、遠距離介護のコツにもまとめています。
仕事を辞めずに在宅介護を始める


介護のために仕事を辞めるのは、最後の手段にしてください。収入が止まると、自分の生活も介護の費用も苦しくなります。
会社員なら、育児・介護休業法の制度が使えます。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 介護休業 | 家族1人につき通算93日・3回まで |
| 介護休暇 | 年5日(2人以上は年10日) |
| 時間単位 | 介護休暇は時間単位で取れる |
介護休業は、介護そのものより「介護の体制をつくる期間」に使うと効きます。申請・調査の立ち会い・ケアマネとの契約をこの期間にまとめるイメージです。
私は3年で有給を使い果たしました。休みの使いどころを先に決めていれば、と今でも思います。両立の工夫は介護と仕事の両立で詳しく書いています。
在宅が続かなくなる前の目安


在宅介護は、家族が倒れたら続きません。次のような状態が出てきたら、ケアマネにプランの見直しを相談する時期です。
- 夜に何度も起こされる
- 仕事の休みが足りない
- 親にきつく当たった
- 眠れない日が続く
家族が限界を超えた先の話は、介護の共倒れとうつに書きました。
施設を考えるのは、負けでも親不孝でもありません。私も母の施設を探して3件見学しましたが、最後は母本人の「家がいい」で入居はしませんでした。
見たうえで選ばないのも答えのひとつです。探し方は介護施設の探し方ランキングにまとめています。



プロに頼るのは甘えではありません。続けるための段取りです。
在宅介護の始め方でよくある質問


- Q在宅介護は何から始めればいいですか?
- A
親が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談するところからです。要介護認定の申請を手伝ってもらえ、その後のケアマネ選びにもつながります。
- Q要介護認定はどれくらいで出ますか?
- A
介護保険法では申請から30日以内に処分すると定められています。調査に時間がかかると延期の通知が来ることがあり、30日を超える地域もあります。
- Q離れて住む子どもでも申請できますか?
- A
家族が代わりに申請できます。地域包括支援センターが手続きを手伝ってくれることも多いので、まず電話で相談してください。
- Q認定の結果を待つ間もサービスは使えますか?
- A
認定の効力は申請日にさかのぼるので、ケアマネと相談して暫定のケアプランで使い始められる場合があります。区分が想定より軽いと自己負担が増えるので、使い方は相談して決めます。
- Qケアプランの作成にお金はかかりますか?
- A
在宅のケアプラン作成は、2026年10月時点で利用者の自己負担はありません。2027年度の制度見直しで議論が続いているので、最新はケアマネか市区町村に確認してください。
- Q在宅介護の費用は月いくらですか?
- A
要介護度と使うサービスの量で変わります。要介護1で上限まで使うと、1割負担なら月1.7万円ほど。食費やおむつ代は別です。
- Qケアマネが合わないときは変えられますか?
- A
変えられます。事業所に言いにくければ、地域包括支援センターに相談すると別の事業所を紹介してもらえます。
- Q手すりの工事に補助は出ますか?
- A
住宅改修は20万円までが介護保険の対象で、自己負担は原則1割です。工事の前に申請が必要なので、先にケアマネに相談してください。
- Q仕事を休まずに在宅介護はできますか?
- A
デイサービスや訪問介護を組み合わせれば、働きながら続けている人も多いです。立ち上げの時期は介護休業や介護休暇を使って、手続きをまとめて済ませると楽になります。
まとめ:在宅介護の始め方は相談から


在宅介護は、地域包括支援センターへの相談から始まります。要介護認定を申請し、ケアマネを決め、ケアプランでサービスを組む流れです。
今日やることは、親の地域の地域包括支援センターに電話することだけです。
あわせて、窓口役・通える回数・お金の出どころを家族で決めておくと、あとで揉めにくくなります。
費用の見通しは親の介護費用の相場で、仕事との両立は介護と仕事の両立で確認できます。私のように転んでから慌てる前に、番号だけでも控えておいてください。










