介護離職を避けるには、辞めると決める前に会社へ「家族の介護が始まった」と申し出ることが一番の近道です。2025年4月から、申し出を受けた会社は両立の制度を個別に知らせ、使うかどうかの意向を確かめることが義務になりました。
そのうえで、親の住む地域の地域包括支援センターに相談し、介護休業を「自分が介護する休み」ではなく「介護の態勢を作る休み」として使う。この順番で動けば、辞めずに回せる道はかなり広がります。
私は片道4時間の実家に3年通いましたが、介護休業も介護休暇も知らないまま、有給だけで回していました。2年目の終わりに有給が尽きたあの頃の自分に渡したかった順番と制度を、ここにまとめます。
けんじ辞めるのは、いつでもできます。その前に、会社と地域に一度ずつ声をかけてみてください。
介護離職を避けるには、辞める前に3つ動く


親の介護が始まった直後は、何から手をつければいいのか分からず、「自分が辞めて見るしかない」と考えがちです。でも辞める前に動ける場所は3つあります。
- 会社に介護のことを申し出る
- 地域包括支援センターに相談
- 介護休業で態勢を作る
会社に申し出る


2025年4月の育児・介護休業法の改正で、家族の介護に直面したと申し出た社員に対し、会社は介護休業などの制度を個別に知らせ、意向を確認することが義務になりました。
つまり、申し出た時点で会社から制度の案内が来る仕組みです。制度名を自分で調べ上げてから行かなくても、「親の介護が始まりそうで」と伝えるだけで話が始まります。
40歳になった年度などに、介護の制度を前もって知らせることも会社の義務になっています。受け取った案内があれば、いまもう一度開いてみてください。
次に地域包括へ相談


地域包括支援センターは、高齢者の介護の総合窓口です。親が住んでいる地域のセンターに電話すれば、介護保険の申請や、使えるサービスの入口を教えてもらえます。
遠距離なら、電話の段階で「私は平日は仕事で動けない」と先に伝えておくと、段取りを組むときに考えてもらいやすくなります。申請の手順は介護保険の申請と要介護認定の受け方にまとめています。
休業は態勢づくりに


厚生労働省は、介護休業を「介護の態勢を整えるための期間」と位置づけています。93日で親の介護を自分がやり切る、という休みではありません。
ケアマネジャーとの打ち合わせ、デイサービスや訪問介護の手配、施設の見学、きょうだいとの役割分担。こうした段取りに休業をあてます。
そのあとは仕事に戻りながら回す形を作る。これが辞めない人の休業の使い方です。
私の母の場合も、ケアマネさんに私が通える頻度を伝えて、デイサービスと訪問介護を組み合わせてもらいました。始め方は在宅介護の始め方に順番どおり書いています。
辞めずに使える仕事と介護の両立制度


育児・介護休業法で決まっている制度は、会社に規定がなくても、条件を満たせば申し出や請求で使えるものが中心です。まず全体を表で見てください。
| 制度 | 中身 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 通算93日・3回まで | 態勢づくり |
| 介護休暇 | 年5日(2人なら10日) | 通院・役所 |
| 残業の免除 | 所定外労働なし | 毎日の見守り |
| 時間外の制限 | 月24h・年150hまで | 残業を減らす |
| 深夜業の制限 | 22時〜5時に働かない | 夜勤がある人 |
| 短時間勤務など | 3年以上の期間で利用 | 長く続く介護 |
※育児・介護休業法と厚生労働省の資料より(2026年10月時点)。日数や手続きは会社の規定でこれより手厚いこともあります。
介護休業は通算93日


介護休業は、介護が必要な家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れる休みです。たとえば入院から退院の前後に30日、施設探しに30日、という分け方ができます。
申し出は、休業を始めたい日の2週間前までが原則です。パートや契約社員でも、93日を過ぎて6か月のうちに契約が終わることが明らかでなければ、対象になります。
給付金は賃金の67%


介護休業のあいだは、雇用保険から介護休業給付金が出ます。支給額は原則として休業開始時の賃金日額×支給日数×67%で、上限額があります。
受け取るには、休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あることなどが条件です。申請は勤め先を通してハローワークへ出すのが一般的なので、人事に聞いてみてください。
申請期限は、休業が終わった日の翌日から2か月を過ぎる日の属する月の末日までです。休業から戻ってバタバタしているうちに過ぎないよう、手帳に書いておくと安心です。
介護休暇は時間単位も可


介護休暇は、1年度に5労働日まで、介護が必要な家族が2人以上なら10労働日まで取れる休みです。通院の付き添い、役所の手続き、ケアマネさんとの面談などに使えます。
しかも時間単位で取れるので、所定8時間の会社なら5日ぶんで40時間になります。2025年4月からは、入社6か月未満の人を労使協定で外す仕組みもなくなりました。
残業免除も請求できる


介護している社員が請求すれば、会社は原則として所定の時間を超えて働かせられません。これが所定外労働の制限、いわゆる残業の免除です。
残業そのものを無くすまでいかなくても、時間外労働を月24時間・年150時間までに抑える制限や、夜10時から朝5時までの深夜業をしない制限もあります。夕方に親へ電話したい、夜勤を外したい、という人に効きます。
短時間勤務・時差出勤


会社は、介護する社員のために、短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護サービス費用の助成のうち、どれかを用意しなければなりません。利用開始から3年以上の期間で使える仕組みです。
どれを用意しているかは会社しだいなので、就業規則か人事に確認します。在宅勤務を選べるようにすることも、2025年4月から会社の努力義務になりました。
対象になる家族と状態


対象になる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、きょうだい、孫です。義理の親の介護でも使えます。
「要介護状態」は、けがや病気、障害などで2週間以上、常に介護が必要な状態のこと。要介護2以上ならあてはまり、要介護認定を受けていなくても厚生労働省の判断基準に当たれば対象になります。
有給だけで3年通った私が困ったこと


ここからは私の話です。制度の説明より先に読んだほうが、なぜ申し出を急いだほうがいいかが伝わるかもしれません。
2年目で有給が尽きた


帰省はほとんど土日で、たまに有給を足して金曜から動く形でした。それでも有給は、みるみる減っていきました。
2年目の終わりに、有給を使い果たしました。3年目は、次の休みをどう作るかばかり考えていた気がします。
往復の交通費も重なりました。記録が残っている6往復だけで約17万円です。内訳は遠距離介護の交通費の実額に出しています。
会社に言う発想がなかった


当時の私は、介護休業も介護休暇も知りませんでした。会社に言えば案内が来る、という発想そのものがなかったんです。
職場に頭を下げて有給を取るたび、申し訳なさで背中が丸くなる。黙って休みを削るほうが、かえって職場への気まずさは増えていきました。
いま振り返ると、介護休暇を時間単位で使えれば、半日の通院付き添いに丸1日の有給を使わずに済んだはずです。これが一番もったいなかったと思っています。
弟に頼めなかった


弟は車で40分の距離に住んでいましたが、3年でまとまって関わったのは母の入院のときの2回だけでした。私のほうも「何を頼むか」を言葉にできず、抱えたまま通い続けました。
この3年分の不満を口に出さないまま相続の話に入り、弟とは1年口をきかない時期ができました。分担の切り出し方は兄弟が介護を手伝わないときの切り出し方にまとめています。



制度を知らなかったのは私の落ち度です。同じ回り道はしてほしくないんです。
介護離職で失うもの


総務省の2022年の就業構造基本調査では、過去1年に介護・看護のために仕事を辞めた人は約10.6万人でした。辞める前に知っておきたい、失うものを3つ挙げます。
収入が途切れる


介護はお金がかかります。親の年金や貯金で足りないとき、頼りになるのは結局こちらの収入です。辞めた瞬間、介護にかけられるお金の上限が下がります。
私の場合、介護費用は母の年金と私の立て替えでまかないました。費用の目安は親の介護費用の目安でまとめています。
戻れる保証がない


「介護が落ち着いたらまた働けばいい」。でも介護はいつ終わるか分からず、ブランクが空くほど元の条件で戻るのは難しくなります。50代ならなおさらです。
逃げ場がなくなる


職場にいる時間は、介護のことをいったん忘れられる時間でもありました。介護一色になると気持ちの逃げ場がなくなり、介護の共倒れ・介護うつに近づきやすくなります。
会社への伝え方と聞くことリスト


言いづらさは分かります。ただ、急に休んだり辞めたりするより、早めに一言伝えるほうが、職場も段取りを組めます。
最初の一言の例


「実家の母に介護が必要になりそうです。すぐ休むわけではないのですが、使える制度を教えていただけますか」。上司か人事に、これだけで十分です。
親の状態をくわしく話す必要はありません。「いつから・どのくらいの頻度で」動く必要がありそうか、分かる範囲で添えると、会社も考えやすくなります。
人事に聞くこと


- 介護休業の申出方法
- 給付金の手続きの流れ
- 介護休暇の時間単位
- 残業免除の請求方法
- 短時間勤務の有無
- 在宅勤務の可否
- 相談窓口の担当者
会社の制度は法律より手厚いこともあります。聞いた内容はメモにして、日付と担当者の名前も残しておくと、あとで話が食い違いません。
取れる休みの日数が見えたら、そこから帰省の回数を逆算します。私が使った物差しは遠距離介護の帰省を月何回にするかの決め方に4つ並べてあります。
それでも限界が来たときの選択肢


制度を使っても、在宅で回すのが難しくなることはあります。そのときは、辞める前に介護の形そのものを見直す段階です。
- ケアマネに負担を相談
- ショートステイを使う
- きょうだいに用事を渡す
- 施設の情報を集める
施設は、限界が来てから探すと選ぶ余裕がなくなります。
私は母の施設を3件見学して、最後は母の「家がいい」で入居を見送りました。そのとき揺れた気持ちは親を施設に入れる罪悪感に書きました。
相談員が条件に合う施設を絞ってくれるサービスもあります。
私は使っていませんが、介護のほんねの評判を調べてまとめました。探し方全体は介護施設探しのおすすめサービスで比べられます。
遠距離での進め方そのものは遠距離介護の備え方に、私が最初にそろえたものから書いています。
介護離職と両立についてよくある質問


- Q介護のために仕事は辞めるべきですか?
- A
できるだけ避けたほうがいいです。辞める前に会社へ申し出て、介護休業・介護休暇・残業の免除などを組み合わせれば、続けられる幅はかなり広がります。
- Q介護休業は何日取れますか?
- A
介護が必要な家族1人につき、通算93日まで、3回まで分けて取れます。原則として休業開始予定日の2週間前までに会社へ申し出ます。
- Q介護休業給付金はいくらもらえますか?
- A
原則として休業開始時の賃金日額×支給日数×67%で、上限額があります。雇用保険の加入期間などの条件があるので、人事かハローワークで確認してください。
- Q介護休暇と介護休業はどう違いますか?
- A
介護休暇は通院の付き添いなど短い用事向けで、年5日(対象2人以上は10日)、時間単位でも取れます。介護休業はまとまった休みで、通算93日までです。
- Q要介護認定を受けていなくても使えますか?
- A
使える場合があります。2週間以上常に介護が必要な状態で、厚生労働省の判断基準にあてはまれば対象です。要介護2以上なら対象になります。
- Q会社に制度がないと言われたら?
- A
介護休業・介護休暇・残業の免除などは法律で決まっていて、条件を満たせば申し出や請求で使えます。困ったときは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
- Qパートや契約社員でも取れますか?
- A
取れます。介護休業は、93日を過ぎて6か月のうちに契約が終わることが明らかでなければ対象です。労使協定で対象外にできる人もいるので、就業規則も見てください。
- Qまず最初にどこへ相談すればいい?
- A
仕事のことは会社の上司か人事、介護のことは親が住む地域の地域包括支援センターです。この2か所に一度ずつ声をかけるところから始めてください。
まとめ:介護離職を避けるには、申し出が先


介護離職を避けるには、辞める前に会社へ申し出て、地域包括支援センターに相談し、介護休業を態勢づくりに使うこと。介護休暇の時間単位や残業の免除で、毎日の用事も回しやすくなります。
私は制度を知らないまま、有給だけで3年通いました。仕事だけは手放さなかったことは、よかったと思っています。
休み方をもう少し早く知っていたら。そう思う日は、今もあります。



頼れるものは全部頼っていいんです。それで親不孝にはなりませんよ。
費用の目安は親の介護費用の目安、施設を考えるなら介護施設探しのおすすめサービス、遠距離なら遠距離介護の備え方もあわせてどうぞ。










