遠距離介護は、親が住む地域の地域包括支援センターに電話することから始めます。そこから要介護認定の申請、現地で親を見てくれる人を増やす、帰る回数とお金を決める、会社の制度を確かめる、の順です。
私は母を、片道4時間の実家へ月2回通って3年介護しました。
地域包括支援センターを知ったのは2年目です。介護休業も介護休暇も知らないまま、有給だけで通い続けました。
その遠回りをふまえて、いま始める人が最初にやることを順番に並べます。
けんじ遠距離介護は、気合いだけでは続きません。制度と人に頼る前提で組み立てましょう。
遠距離介護は何から始める?最初の5つ


| 順番 | やること | 窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 相談の電話 | 地域包括支援センター |
| 2 | 要介護認定の申請 | 親の住む市区町村 |
| 3 | 現地の目を増やす | ケアマネ・近所・見守り |
| 4 | 帰る回数とお金 | 自分と家族 |
| 5 | 会社の制度の確認 | 勤務先の人事 |
1. 地域包括に電話


地域包括支援センターは、高齢者の暮らしと介護の相談を受ける公的な窓口です。電話する先は、自分の住所ではなく親が住んでいる地域のセンターです。
相談は無料で、子どもが遠方から電話してもかまいません。市区町村の名前と「地域包括支援センター」で検索すれば、担当地区ごとの連絡先が出てきます。
電話では、次のことを伝えれば話が進みます。
- 親の住所と年齢
- 一人暮らしかどうか
- 気になっている様子
- 自分が帰れる頻度
- 介護認定の有無
私はこの窓口を2年目まで知らず、そのあいだ一人で抱えていました。いちばん最初に知っておきたかった番号です。
2. 要介護認定の申請


介護保険のサービスを使うには、市区町村の要介護認定が必要です。申請すると、調査員が家に来て聞き取りをし、主治医の意見書とあわせて判定されます。
結果は、介護保険法で原則30日以内に出すことになっています。申請は家族が遠方からでもでき、地域包括支援センターに手伝ってもらうこともできます。
聞き取りの日は、できれば帰って立ち会ってください。親は調査員の前で「何でも自分でできます」と答えがちです。
困っていることを家族が横から伝えないと、実際より軽く判定されることがあります。
認定が出ると、ケアマネジャーがデイサービスや訪問介護の組み合わせを考えてくれます。
私は最初のケアマネさんと合わず、途中で変えてもらいました。言いにくくても、変えてよかったです。
申請の流れは介護保険の申請と使い方にまとめています。
3. 現地の目を増やす


母が家の前で転んだことを、私は近所の方からの電話で知りました。当時の私の見守りは、週に何度かの電話だけでした。
母は電話に出ると、必ず元気な声を出しました。心配をかけたくない親は、声だけは作れます。遠くにいる子の目と耳では、どうしても足りません。
だから、自分の代わりに親に会ってくれる人を増やします。ケアマネやデイサービス、訪問介護の人。近所の方や民生委員。見守りの機器やサービスもその一つです。
| 見守りのタイプ | 分かること |
|---|---|
| センサー型 | 動きがないと通知 |
| カメラ型 | 様子を目で見る |
| 訪問・電話型 | 人が会って話す |
母には火の消し忘れもありました。これは安否確認の電話では出てきません。何を見逃したくないかで、選ぶ形が変わります。
料金の比べ方は一人暮らしの親の見守りの費用と順番に並べました。
4. 帰る回数とお金


帰る回数は、気持ちではなく「現地でしか終わらない用事の数」と「自分以外に親に会う人の数」で決めます。週に何日か誰かが会っているなら月1回で回る家もあり、誰も会わない週があるなら週1回でも足りません。
お金も先に出しておきます。私の1往復は、運賃に現地の移動と食事を足しておよそ2万8千円でした。月2回で3年、計算上は180万円ほどになります。
もう一つ。交通費や立て替えは、きょうだいに見せられる形で記録を残してください。私は残さず、あとの遺産分割で根拠を出せずに困りました。
回数の決め方は遠距離介護の帰省頻度と4つの物差し、交通費の実額と記録の残し方は1往復の実額と3年分の総額、介護そのものの費用は親の介護費用の相場と総額に書いています。
5. 会社の制度を確認


通院の付き添いも、認定の聞き取りも、施設の見学も、平日にしか動きません。有給だけで回そうとすると、私のように3年目に入る頃には尽きます。
育児・介護休業法には、有給とは別の休みが2つあります。
| 制度 | 日数 | 向いている用事 |
|---|---|---|
| 介護休暇 | 年5日(2人以上10日) 時間単位も可 | 通院の付き添い 認定の立ち会い |
| 介護休業 | 通算93日 3回まで分割 | 体制づくり 施設探し |
※厚生労働省「介護休業制度特設サイト」より(2026年10月時点)。介護休業中は、条件を満たせば雇用保険から休業前賃金の67%の介護休業給付金が出ます。
介護休業は、自分が介護をする日ではなく「介護の体制を整える期間」と考えられています。
2025年4月からは、社員から介護の申し出があったとき、会社が制度を個別に知らせることが義務になりました。まず人事に一言伝えてみてください。
仕事と両立する工夫は介護離職を避けるための制度と工夫にまとめています。
片道4時間・3年の遠距離介護で起きたこと


ここからは私の3年を、判断の分かれ目だけ短く書きます。
始まりは転倒の電話


父はずいぶん前に亡くなっていて、母は実家で一人暮らしでした。介護が始まったのは、母が自宅の前で転んだという近所の方からの電話です。
そのあと、物忘れと火の消し忘れが出てきました。電話で同じ話を何度もするようになったのに、私は電話の回数だけを見ていて、状態が進んだことに気づくのが遅れました。
有給が尽きた


通院の付き添いも施設の見学も、ほとんど一人で回しました。弟は車で40分の距離に住んでいましたが、まとまって関わったのは母の入院のときの2回だけです。
職場に頭を下げるたびに、有給の残りが減っていく。3年目には、次の休みをどう作るかばかり考えていました。いま思えば、あれは限界に近い状態でした。
施設を探して在宅に


施設も探しました。資料を5施設分取り寄せ、3件見学しています。1件は、パンフレットの写真と実際の雰囲気がまるで違っていました。
最後は母本人が「家がいい」と言い、入居は見送りました。在宅のまま看取っています。そばにいてやれなかったという思いは、今も消えていません。
親が元気なうちに聞いておくこと


介護が始まると、目の前の用事に追われて、お金の話をする余裕がなくなります。見守りを入れるのと同じ月に、これだけは聞いておいてください。
- 通帳と印鑑の置き場所
- 保険証券の有無と場所
- 年金の振込先の銀行
- かかりつけの病院
母の保険証券は、実家じまいのときに処分予定の紙袋の底から出てきました。元気なうちに一言聞いておけば済んだ話です。
もう一つは、親の判断力がしっかりしているうちにしかできない準備です。母の物忘れが始まってから家族信託を調べましたが、判断能力の線引きで間に合いませんでした。
その後悔はおやとこの評判と私の後悔に、成年後見との違いは認知症の親の財産管理に書いています。
施設は早めに情報だけ持っておく


在宅で続けるつもりでも、施設の情報は先に持っておくと、限界が来たときに落ち着いて選べます。遠距離だと、見学のたびに丸一日つぶれるのがいちばんきついところです。
私は最初、LIFULL介護など施設が並ぶ掲載型のサイトを自分で読み比べて、遠回りしました。
途中から、相談員が候補を絞ってくれる相談型に切り替えています。合わなかった施設への断りの連絡まで任せられたのは、本当に助かりました。
相談型で私が電話と資料請求まで使ったのはシニアのあんしん相談室です。
見学に同行してくれる介護のほんねは私は使っていませんが、動ける回数が限られる人には候補になります。サービスの比べ方は老人ホームの探し方とおすすめサービスにまとめました。
遠距離介護を一人で抱え込まないために


きょうだいには用事で


きょうだいに「もっと帰って」と回数の公平を求めると、たいてい断られます。「今月の通院の付き添いを1回」と用事で頼んでください。
遠方のきょうだいには、支払いの管理や施設への電話など、現地に行かなくていい用事を渡します。
私は弟に何も言えないまま3年通い、溜めた不満が相続の話し合いで出て、1年口をきかなくなりました。その顛末は兄弟が介護を手伝わなかった3年の記録に書いています。
仕事は辞めない


「仕事を辞めて介護に専念」は、できるだけ避けてください。収入が途切れると、介護にかけるお金も、見送ったあとの自分の暮らしも両方苦しくなります。
介護休暇と介護休業、介護保険のサービスを組み合わせて、続けられる形を探すのが先です。
自分の不調のサイン


親に強く当たってしまう、眠れない、理由もなく涙が出る。このあたりが出てきたら、我慢比べの段階ではありません。
介護している側が倒れると、親の生活はその日から止まります。



頼れるものは全部頼っていいんです。それで親不孝にはなりませんよ。
遠距離介護のよくある質問


- Q遠距離介護は何から始めればいいですか?
- A
親が住む地域の地域包括支援センターに電話してください。相談は無料で、要介護認定の申請や使えるサービスまで地元の事情に合わせて案内してくれます。
- Q要介護認定は遠くに住む子が申請できますか?
- A
家族が申請できますし、地域包括支援センターに手伝ってもらうこともできます。結果は原則30日以内です。聞き取り調査の日は、できれば帰って立ち会ってください。
- Q介護休業と介護休暇はどう違いますか?
- A
介護休暇は年5日(対象家族2人以上は10日)で時間単位でも取れ、通院の付き添いなどに向きます。介護休業は通算93日を3回まで分けて取れ、体制づくりの期間に向きます。
- Q介護休業中にお金はもらえますか?
- A
雇用保険の条件を満たせば、休業前賃金の67%の介護休業給付金が出ます。手続きは勤務先を通じてハローワークに申請するのが一般的です。
- Q月に何回帰ればいいですか?
- A
決まった回数はありません。現地でしか終わらない用事の数と、自分以外に親に会う人の数で決めます。私は月2回を3年続け、それでも母の変化に気づくのが遅れました。
- Q帰省の交通費はどのくらいかかりますか?
- A
距離と回数しだいです。私は片道4時間で1往復およそ2万8千円、月2回を3年で180万円ほどでした。運賃だけでなく現地の移動や食事も入れて計算してください。
- Q親が支援を嫌がるときはどうすれば?
- A
「私が安心したいから」と主語を自分にして頼むと通りやすくなります。本人の説得が難しければ、地域包括支援センターやケアマネに間に入ってもらうのも手です。
- Q在宅介護の限界はどこで判断すればいい?
- A
火の不始末や転倒が続く、自分の心身が削られている、が危険サインです。限界が来てから探すと選ぶ余裕がないので、その前から施設の情報だけは持っておいてください。
まとめ:遠距離介護はまず電話1本から


遠距離介護は、親の住む地域の地域包括支援センターへの電話から始めます。
要介護認定を申請し、現地で親に会う人を増やし、帰る回数とお金を決め、会社の制度を確かめる。この順で土台ができます。
今日やるなら、センターの電話番号を調べてメモするところまでで十分です。
私は3年通って、それでも後悔が残りました。頼れる窓口と制度をもっと早く知っていたら、母ともう少し笑って話せた気がします。
施設を検討するなら老人ホームの探し方とおすすめサービスを、いつか来る見送りのあとの流れは身内が亡くなったらすることリストに、心の余裕があるときに目を通してみてください。










