母が亡くなったあと、手続きの一覧を見て最初に思ったのは「これ、全部でいくらかかるんだ」でした。
先に答えを言います。相続手続きの大半は自分でできます。プロに頼む価値があるのは3つだけでした。
- 自分でできる|役所・年金・解約
- 頑張れる|戸籍・預貯金・協議書
- 頼む価値あり|登記・税・争い
私は母の相続でこの3分類を全部通りました。役所や銀行を自分で回った分と、専門家に払った約26.7万円の内訳もさらします。
先に言っておくと、これは何かを勧める記事ではありません。仕分けの材料を数字ごと全部並べるだけです。
どの手続きがどの分類なのか、頼むなら誰にいくらなのか。読み終わる頃には、ご自身の「どこまで自分でやるか」の線引きが決められるはずです。
けんじ安く済ませたい気持ちは分かります。私も最初は全部自分でやるつもりでした
自分でできる手続き


役所・年金・保険まわりは、量こそ多いものの、窓口で聞けば進みます。専門知識はほぼ要りません。
1つずつは軽い。ただ、束になると重い。そういう種類の仕事です。
必要なのはお金ではなく平日でした。私は役所と年金だけで有給を何日か使っています。
手続き全体の抜け漏れが不安な方は、先に一覧をまとめた身内が亡くなったらすることリストを眺めておくと迷子になりません。
死亡届と役所の手続き


死亡届は7日以内の提出ですが、うちは葬儀社が代わりに出してくれました。今はこの形が多いようです。
死亡届が受理されると火葬許可証が出ます。ここまでは葬儀の流れの中で終わっていました。
役所では世帯主変更や介護保険・後期高齢者医療の資格喪失をまとめて処理します。おくやみ窓口がある自治体なら1か所で済みます。
保険証の返却もこのとき一緒に。書き方はその場で職員さんが教えてくれるので、身構えていたのが拍子抜けするくらいでした。
私の失敗は、必要書類を小出しに知って同じ役所に2回行ったことです。行く前に電話で持ち物を全部聞いておくと1回で済みます。
委任状があれば家族に頼める手続きもあります。私は妻に一部の電話番を頼みました。
年金と健康保険


年金の受給停止は年金事務所へ。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が原則です。
未支給年金の請求も同時に出しておくと二度手間になりません。亡くなった月の分までは受け取れるお金です。
窓口では母の年金証書を求められましたが、見つからなくても手続き自体はできました。
ただ、年金事務所は予約制で平日しか開いていません。枠が先まで埋まっていて、私はここだけで有給を1日使いました。
あと、国保なら葬祭費、会社の健康保険なら埋葬料という給付があります。数万円ですが、申請しないと出ません。
年金まわりは窓口も書類も独特で、順番を間違えると二度手間になります。私がどの順で回ったかは親が亡くなったあとの年金手続きに書いたので、予約を取る前に見ておいてください。
公共料金などの解約


電気・ガス・水道・固定電話・携帯・NHK・クレジットカード。ひとつずつは簡単で、電話とネットで終わります。
敵は数です。母の家の分を書き出したら十数件ありました。
解約の電話では、死亡日と契約者情報を聞かれるだけのところがほとんどです。身構えなくて大丈夫でした。
平日の日中しか繋がらない窓口が意外とあって、昼休みが電話で消えていきます。保留音を聞きながら弁当をつつく日が続きました。
携帯だけは急いで解約しない方がいいです。銀行などの認証に使う場面があるので、私は他の手続きが片付いてから止めました。
NHKや新聞は日割りの扱いも確認を。放っておくと引き落としだけが続きます。
覚悟がいる手続き


ここからは「できるけれど、平日と根気を差し出す」ゾーンです。
私は一部を自分でやり、残りは途中で白旗を上げました。その順に書きます。
戸籍の収集


亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の現在戸籍が要ります。銀行でも登記でも、まず求められるのがこの束です。
母は本籍を2回移していて、遠方の役所への郵送請求が必要でした。定額小為替を郵便局で買い、返信用封筒を入れて送る。この繰り返しです。
請求の書き方に迷ったら、役所に電話して「相続で使うので出生から死亡まで全部」と伝えれば、その役所にある分をまとめて出してくれます。
遡る先は戦後すぐの戸籍まで。昔の手書き戸籍は読むだけでも一苦労で、私はここで任せる側に回った組です。
実費はたしか1万5千円くらいだったと思います。取り漏れがあると窓口で突き返されるので、量より正確さが問われます。
集め終わったら、法務局で法定相続情報一覧図を作っておくと後が楽です。無料で発行してもらえて、戸籍の束の代わりに各窓口へ出せます。
預貯金の解約


銀行が死亡を知ると口座は凍結されます。解約には戸籍一式・印鑑証明・相続届などが必要で、銀行ごとに書式が違います。
凍結と聞くと焦りますが、仮払い制度があり、凍結中でも一定額(1つの金融機関あたり150万円が上限)までは引き出せます。
母の口座は2つありました。少額の1つは自分で銀行の窓口で解約しています。
戸籍の束と印鑑証明を持って行ったのに、相続届の代表者欄の書き方が違うと言われました。番号札を握ったまま30分待って、その日は受け付けてもらえず終了です。
帰りの電車では、ずっと天井を見ていた。
直し方を電話で確認して、2回目でようやく受理。解約金が振り込まれるまでは、そこからさらに2週間ほどかかりました。
あ、そういえば、窓口に行くなら残高証明書も一緒に取っておいてください。遺産分割協議書を作るときに要るので、二度行かずに済みます。
ゆうちょ銀行と他の銀行では窓口も書式も別物です。口座が多い家は、それだけで難易度が上がります。
必要書類と流れの詳細は、預貯金の相続手続きの記事に分けて書きました。
遺産分割協議書


誰が何を相続するかを書面にして、相続人全員が実印を押すものです。ひな形は法務局のサイトにもあります。
この1枚がないと、登記も残りの口座の解約も進みません。手続きの真ん中に置かれた関所のような書類です。
厄介なのは書き方のミスです。不動産の表示が登記簿と一字でも違うと、登記や銀行で通らないことがあります。
実印を押す以上、印鑑証明も人数分要ります。相続人が多い家は取り寄せの段取りも仕事のうちです。
銀行によっては印鑑証明に発行から6か月以内などの指定があります。早く取りすぎるのも考えものです。
それでも自分で書いてみるつもりの方向けに、書式と必要書類は遺産分割協議書の作り方にまとめてあります。ひな形を見てから、自分で書くか外に出すかを決めても遅くないです。
うちは弟との関係が最悪の時期だったので、自分で書く選択肢は最初からありませんでした。
プロに頼む価値がある3つ


数十種類ある手続きの中で、お金を払う意味を感じたのはこの3つです。共通するのは、失敗したときのやり直しが利きにくいこと。
逆に言えば、残りは頼まなくてもなんとかなります。
相続登記は司法書士


実家など不動産の名義変更です。2024年4月から義務化されました。
期限は相続で取得を知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
費用は司法書士への報酬が7〜15万円くらいの幅で、別に登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)がかかります。
登録免許税は自分でやっても頼んでもかかる税金です。節約できるのは報酬の部分だけということになります。
報酬の幅は相続人の数や不動産の筆数で変わります。見積もりに戸籍取得や協議書作成が含まれているかの確認も忘れずに。
自分でもできなくはないのですが、申請書類の要求水準が役所の比ではありません。私の知る自力完走組は、平日に法務局へ3回通っていました。
実家をすぐ売る予定でも登記は飛ばせません。名義を変えないと売れないからです。
義務化の中身と放置した場合の話は、相続登記の義務化の記事にまとめています。
相続税は税理士


相続税には基礎控除があります。3,000万円+600万円×法定相続人の数までは申告不要です。
超えそうなら税理士案件です。申告期限は10か月以内で、特例を使うにも申告が要るケースがあります。
報酬は遺産総額の0.5〜1%あたりが目安とよく言われます。幅があるので相見積もりを。
生命保険や死亡退職金にも相続税の対象になる分があります。自己判断で「うちは関係ない」と決めない方が安全です。
亡くなった人に事業や不動産の収入があれば、4か月以内の準確定申告も税理士の範囲です。
私は基礎控除内でしたが、「本当に申告不要か」の確認だけ、税理士ドットコムで探した税理士さんにしてもらいました。ここをうやむやにするのが一番怖かったので。
揉めたら弁護士


相続人の間で争いになったとき、間に入って交渉の代理ができるのは弁護士だけです。司法書士や行政書士は争いの代理はできません。
私は弟と揉めて1年間、連絡を絶ちました。当事者同士で話すほど悪化する状態で、弁護士に入ってもらってようやく和解に向かえました。
弁護士が入ると、相手も感情ではなく条件の話をせざるを得なくなります。うちの場合、これが一番大きかったです。
費用は着手金20〜30万円+成功報酬という事務所が多い印象です。無料相談から入れるところもあります。
雲行きが怪しくなった時点で、無料相談だけでも行っておくと違います。揉め切ってからだと、冷静に事務所を選ぶ余裕がなくなるので。
司法書士・税理士・弁護士それぞれの探し方と選び方は、相続の相談先ランキングの記事に分けています。
私の仕分けと費用


ここまでの分類を、母の相続で私がどう仕分けたか。金額も全部書きます。
自分でやった範囲


死亡届まわり・年金・健康保険・公共料金などの解約・少額口座の解約。ここまでは自分です。
費用はほぼゼロ。代わりに有給を何日も使い、平日が潰れました。何日使ったかは、途中で数えるのをやめています。
実家まで片道4時間という条件も、じわじわ効いてきました。日帰りができないので、1回の帰省に用事を詰め込むパズルになります。
有給1日をいくらと見るかで、この損得は変わります。私は計算しないことに決めました。
それでも、母の名義がひとつずつ消えていく作業を自分の手でやれたのは、悪くなかったと今は思っています。まだ正解かは分かりませんが。
nocosに任せた範囲


戸籍収集・遺産分割協議書・実家の相続登記・もう1つの口座の解約。この4つは相続手続き代行のnocos(ノコス)にまとめて頼みました。
支払いは税込22万円。実費が登録免許税32,000円と戸籍などでたしか1万5千円ほど。総額はおよそ26.7万円です。
契約前に自宅近くの司法書士事務所でも見積もりを取っています。登記+戸籍+協議書で計13万円程度と言われました。
個別に頼めば安い。それでも窓口が1つになる方を選びました。弟との調整で気力を使い果たしていた時期だったので。
見積もりを2つ並べて、安い方を選ばない決断。口で言うほど簡単ではなかったです。
任せたあとに私がやったのは、届いた書類への署名と実印の押印くらいです。



差額の13万円は、私の平日と気力を守る値段だったと思っています
何をどう任せて、どんな流れだったかはnocosの体験談記事に書きました。検討する方はそちらの方が具体的です。
断っておくと、全部任せた方が楽だとは言い切れません。時間と体力がある人が自分でやれば、10万円以上は手元に残ります。
判断基準は3つ


どこで線を引くか。私の結論は、次の3つで決まると思っています。
- 平日に動ける日数
- 実家までの距離
- 相続人どうしの関係
1つ目は平日です。役所・銀行・年金事務所・法務局。相続の窓口はほぼ平日の昼間しか開いていません。
有給が取りにくい職場なら、それだけで自分でやる路線は苦しくなります。
2つ目は距離です。書類の不備が出るたびに現地との往復が発生します。私のように片道4時間だと、不備1つが休日1日に化けます。
3つ目は相続人の関係です。協議書には全員の実印が要ります。1人でも連絡の取りにくい人がいると、書類より人間の方が難所になります。
平日に月2〜3日動けて、実家が近くて、相続人の仲がいい。この条件なら大半は自分でできます。
逆にどれか2つ欠けると、専門家費用は高く感じないはずです。あなたの場合、平日にあと何日動けそうでしょうか。
さっき「大半は自分でできる」と書きましたが、弟と絶縁していた頃の私に同じことを言えたかというと、正直怪しいです。手が動かない時期というのは、あります。
よくある質問


- Q行政書士には何を頼めますか?
- A
戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、預貯金の解約サポートなどを頼めます。
相続登記は司法書士、税の申告は税理士、争いの代理は弁護士しかできません。頼みたい中身から逆算して選んでください。
争いがなく、名義変更する不動産もない家なら、行政書士で足りることも多いです。
- Q期限のある手続きはどれですか?
- A
相続放棄は3か月以内、準確定申告は4か月以内、相続税の申告は10か月以内、相続登記は3年以内です。
迷ったら期限が近いものからどうぞ。相続放棄は家庭裁判所に期間伸長の申立てもできます。
逆に、遺品整理など期限のないものは焦らなくて大丈夫です。気持ちの区切りを優先してください。
- Q費用を安くするコツはありますか?
- A
解約系や役所の手続きを全部自分でやり、専門家には独占業務だけ頼む形が一番安く済みます。
戸籍は2024年3月から広域交付が始まり、本籍地以外の窓口でもまとめて取れるようになりました。
窓口のみ・請求できるのは配偶者や直系の親族などの条件つきです。郵送請求は定額小為替の手数料もかさむので、使えるならこちらが安上がりです。
- Q専門家にはいつ相談すればいいですか?
- A
四十九日を過ぎた頃が現実的です。気持ちと事務に区切りがつき、それでも相続税の10か月には余裕があります。借金の可能性や揉める気配があるなら別です。相続放棄の3か月があるので、早めに動いてください。
- Q自分でやって失敗しやすい点は?
- A
戸籍の取り漏れ、協議書の不動産表示の書き間違い、凍結前に口座からお金を引き出して他の相続人と揉めるパターンです。私も銀行書類の不備で1日無駄にしました。提出前に窓口へ電話で確認すると差し戻しが減ります。
- Q全部丸ごと頼むといくらかかりますか?
- A
銀行や信託銀行の遺産整理業務は、最低100万円前後からの設定が多めです。司法書士系の代行サービスなら20〜30万円台+実費が目安になります。
「丸ごと」の範囲もサービスごとに違うので、見積もりの項目は必ず突き合わせてください。
まとめ


相続手続きの大半は自分でできます。プロに頼む価値があるのは、相続登記・相続税の申告・揉めたときの弁護士の3つでした。
私は自分でやれる分をやり、残りをまとめて任せて総額26.7万円。安くはないですが、後悔はしていません。
この仕分けは、会社員で実家が遠い長男の答えです。条件が違えば、線はもっと手前にも奥にも引けます。
平日の時間・実家との距離・相続人の関係。この3つでご自身の線を決めてください。
期限だけは待ってくれません。3か月・4か月・10か月・3年のどの砂時計が動いているかだけ、今日のうちに確かめておいてください。











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