相続手続きの大半は、自分でできます。専門家に頼む価値が高いのは相続登記・相続税の申告・揉めたときの交渉の3つで、ほかは平日の時間さえ出せれば窓口で聞きながら進められます。
私は母の相続で、役所・年金・解約・準確定申告・借金の確認・少額口座の解約を自分でやりました。戸籍集めと遺産分割協議書、実家の登記、もう1つの口座は窓口にまとめて任せ、総額は約26.7万円です。
どの手続きを自分でやって、どこから頼むか。期限と費用の一覧表と、私が線を引いた理由を並べます。
けんじ安く済ませたい気持ちは分かります。私も最初は全部自分でやるつもりでした。
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相続手続きは自分でどこまでできるか一覧表


まずは全体の地図です。「自分で」の欄が○なら窓口で聞けば進むもの、△は手間と根気がいるもの、×は専門家の独占業務や、自分でやると失敗したときのやり直しが重いものです。
| 手続き | 自分で | 頼むなら | 期限 |
|---|---|---|---|
| 死亡届 | ○ | 葬儀社が代行 | 7日以内 |
| 年金の停止 | ○ | ― | 10日/14日 |
| 葬祭費など | ○ | ― | 2年 |
| 公共料金の解約 | ○ | ― | なし |
| 借金の確認 | ○ | 弁護士 | 3か月 |
| 準確定申告 | ○ | 税理士 | 4か月 |
| 戸籍の収集 | △ | 行政書士ほか | なし |
| 預貯金の解約 | △ | 代行サービス | なし |
| 遺産分割協議書 | △ | 行政書士ほか | なし |
| 相続登記 | △ | 司法書士 | 3年 |
| 相続税の申告 | × | 税理士 | 10か月 |
| 揉めたときの交渉 | × | 弁護士 | なし |
※期限は2026年9月時点の制度。年金は厚生年金10日・国民年金14日で、年金機構にマイナンバーが登録されていれば死亡届は原則不要です。
葬祭費の2年は時効。借金の3か月は相続放棄をするかどうかの熟慮期間です。
抜け漏れが不安な方は、身内が亡くなったらすることリストで全体の順番を先に眺めておくと迷子になりません。
自分でできる手続き


役所・年金・保険・解約まわりは、量は多いものの専門知識はほぼ要りません。1つずつは軽く、束になると重い。そういう種類の仕事です。
要るのはお金ではなく平日でした。窓口はほぼ平日の昼しか開いていません。
役所の届出


死亡届は7日以内の提出ですが、葬儀社が代わりに出してくれるのが今はふつうです。受理されると火葬許可証が出て、ここまでは葬儀の流れの中で終わります。
そのあと役所で、世帯主の変更や介護保険・後期高齢者医療の資格喪失をまとめて済ませます。おくやみ窓口がある自治体なら1か所で片づきます。
葬祭費は、私は市役所の窓口で教わってその場で申請しました。申請しないと出ないお金なので、行く前に電話で持ち物を聞いておくと1回で済みます。
年金と健康保険


年金の受給停止と、亡くなった月までの未支給年金の請求は、年金事務所の同じ用紙で出せます。私は母の年金証書が見つからず焦りましたが、窓口で状況を話したら順番に教えてもらえました。
高額療養費は、案内のはがきが実家に届くまで知りませんでした。
医療費が多かった親なら、戻るお金がないか役所で聞いてみてください。年金の順番は親が亡くなったあとの年金手続きに書いています。
解約と名義変更


電気・ガス・水道・固定電話・携帯・NHK・クレジットカード。ひとつずつは電話とネットで終わります。敵は数で、書き出すと十数件になる家も多いはずです。
携帯だけは急いで止めないほうが安全です。銀行などの認証に使う場面があるので、ほかの手続きが片づいてから解約してください。
借金の確認


相続放棄の期限は、亡くなったことと自分が相続人になったことを知ってから3か月です。借金がないかの確認も、自分でできます。
私は母の郵便物を全部開け、信用情報機関3社に開示請求を出しました。手数料は1社1,000円前後。借金なしと分かったのは、期限の8日前でした。
調べ方の手順は親の借金の調べ方にまとめています。
準確定申告も自分で


母の収入は年金だけで、準確定申告の義務はありませんでした。それでも医療費と介護の自己負担が多かったので、還付を受けるために出しています。
源泉徴収票と領収書を輪ゴムで束ねて税務署の窓口へ持っていったら、担当の方が日付順に並べ直してくれました。
戻りは数万円です。出すべきかの線引きは年金だけの親の準確定申告に書きました。
手間はかかるが自分でできる手続き


ここからは「できるけれど、平日と根気を差し出す」手続きです。私は一部を自分でやり、残りは途中で任せました。
戸籍の収集


亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の今の戸籍が要ります。銀行でも登記でも、まず求められるのがこの束です。
2024年3月から戸籍の広域交付が始まり、本籍地以外の役所の窓口でもまとめて取れるようになりました。
請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫で、兄弟姉妹は使えません。郵送や代理もできないので、窓口へ行く必要があります。
母は本籍が何度か変わっていて、昔の手書きの戸籍は読むだけで一苦労でした。取り漏れがあると銀行や法務局で突き返されるので、私はここで任せる側に回りました。
集め終わったら、法務局で法定相続情報一覧図の写しを出してもらうと後が楽です。無料で、戸籍の束の代わりに各窓口へ出せます。
預貯金の解約


銀行は亡くなったことを知ると口座を止めます。分ける話がまとまる前でも、1つの金融機関につき150万円までなら、相続人がひとりで払い戻しを受けられる制度があります(預金額の3分の1×法定相続分が上限)。
母の口座は2つあり、少額のほうは私が窓口で解約しました。平日の銀行で2時間近く待ち、その日のうちに片道4時間を帰る。働きながらだと、想像以上にこたえました。
必要書類は銀行ごとに書式が違います。行く前に電話で持ち物を聞き、残高証明書も一緒に頼むと二度手間を防げます。
流れは預貯金の相続手続きに、口座がどこにあるか分からない場合は通帳が見つからないときの口座の探し方に書いています。
遺産分割協議書


誰が何を相続するかを書面にして、相続人全員が実印を押すものです。この1枚がないと、登記も残りの口座の解約も進みません。
厄介なのは書き方のミスで、不動産の表示が登記簿と一字でも違うと法務局で通らないことがあります。印鑑証明も人数分要ります。
書式は遺産分割協議書の作り方にまとめました。うちは弟との関係が最悪の時期で、自分で書く選択肢は最初からありませんでした。
専門家に頼む価値がある3つの手続き


お金を払う意味を感じたのは、失敗したときのやり直しが利きにくい手続きです。誰に何を頼めるかは、資格で決まっています。
| 専門家 | 頼めること |
|---|---|
| 司法書士 | 相続登記・戸籍収集 |
| 税理士 | 相続税・準確定申告 |
| 弁護士 | 交渉・調停の代理 |
| 行政書士 | 戸籍収集・協議書 |
行政書士は登記の申請・税の申告・争いの代理はできません。争いがなく、名義を変える不動産もない家なら、行政書士や代行サービスで足りることも多いです。
相続登記は司法書士


実家など不動産の名義変更です。2024年4月から義務になり、相続で取得したと知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。
2024年4月より前の相続でまだ登記していない不動産は、2027年3月31日までが期限です。自分で申請することもできますが、書類の要求水準は役所の比ではありません。
費用は、司法書士の報酬とは別に登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)がかかります。この税金は自分でやっても頼んでも同じで、節約できるのは報酬の部分だけです。
正直に書くと、母の実家の名義は、弟と話がつくまで1年間母のままでした。
当時は、自分が相続人だと申し出るだけで義務を果たせる「相続人申告登記」を知りませんでした。義務化の中身は相続登記の義務化にまとめています。
相続税は税理士


相続税には基礎控除があり、3,000万円+600万円×法定相続人の数までなら申告は要りません。超えそうなら税理士の出番で、申告期限は亡くなったと知った日の翌日から10か月以内です。
うちは相続人が私と弟の2人で、基礎控除は4,200万円。実家の固定資産税評価額約800万円と預貯金2口座では、桁がひとつ足りませんでした。
それでも土地の評価が本当にこれでいいのか、自分の計算だけでは不安でした。税理士ドットコムで探した税理士さんに「申告は要らない」と確かめてもらい、やっと肩の力が抜けました。
揉めたら弁護士


相続人どうしで争いになったとき、相手との交渉を代理できるのは弁護士だけです。司法書士や行政書士は間に入れません。
私は弟と遺産の分け方で揉め、1年口をきかない時期がありました。弁護士を探して相談までした話はベンナビ相続で弁護士を探した体験に書いています。
最後は親戚が間に入り、数字が決まりました(親戚に仲裁を頼んだ話)。
誰に何を頼むかの探し方は、相続の相談先ランキングで比べています。
私の仕分けと費用26.7万円の内訳


ここまでの分類を、母の相続で私がどう線引きしたか。金額も全部書きます。
自分でやった範囲


- 役所の届出と葬祭費
- 年金の停止と未支給
- 公共料金などの解約
- 借金の確認
- 準確定申告
- 少額の口座1つ
費用はほぼゼロ。代わりに平日の休みを何日も使いました。実家まで片道4時間なので、1回の帰省に用事を詰め込むパズルになります。
それでも、母の名義がひとつずつ消えていく作業を自分の手でやれたのは、悪くなかったと思っています。正解だったかは、まだ分かりませんが。
任せた範囲


戸籍の収集・遺産分割協議書・実家の相続登記・もう1つの口座の解約。この4つは相続手続き代行のnocos(ノコス)にまとめて頼みました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| スタンダードプラン | 165,000円 |
| 金融機関1社の解約 | 55,000円 |
| 登録免許税(実費) | 32,000円 |
| 戸籍など(実費) | 約15,000円 |
| 合計 | 約26.7万円 |
契約前に、自宅近くの司法書士事務所でも見積もりを取りました。登記・戸籍・協議書で計13万円程度。個別に頼めば、そのぶんは安かったんです。
それでも窓口が1つになるほうを選びました。弟との調整で気力を使い果たしていた時期だったので。
安いほうを選ばなかった数万円は、私の平日と気力を守る値段だったと思っています。
良いことばかりではなく、進捗の連絡が1か月止まって、私のほうから催促のメールを打ったこともあります。任せたあとも、ときどき状況を聞くくらいの距離感でちょうどいいです。
何をどう任せたかはnocosの体験談にくわしく書きました。窓口を1つにしたい方は、nocos(ノコス)の公式サイトで無料相談の中身を見る![]()
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自分でやるか頼むかを決める3つの基準


どこで線を引くかは、次の3つでほぼ決まると思っています。
- 平日に動ける日数
- 実家までの距離
- 相続人どうしの関係
1つ目は平日です。役所・銀行・年金事務所・法務局。相続の窓口は、ほぼ平日の昼しか開いていません。有給が取りにくい職場なら、自分でやる路線は苦しくなります。
2つ目は距離です。書類の不備が出るたびに現地との往復が発生します。片道4時間だと、不備1つが休日1日に化けます。
3つ目は相続人の関係です。協議書には全員の実印が要ります。1人でも連絡の取りにくい人がいると、書類より人のほうが難所になります。
平日に動けて、実家が近くて、相続人の仲がいい。この条件なら大半は自分でできます。どれか2つ欠けるなら、専門家の費用は高く感じないはずです。
自分でやるときの順番


- 借金の有無を確かめる
- 戸籍を集める
- 一覧図をもらう
- 財産を書き出す
- 協議書を作る
- 預金の解約と登記
期限が近いものから手をつけるのが基本です。3か月・4か月・10か月・3年のどの期限が自分の家で動いているかだけ、先に確かめてください。
相続手続きを自分でやるときのよくある質問


- Q相続手続きは自分でできますか?
- A
大半はできます。役所・年金・解約は窓口で聞けば進み、戸籍集めや協議書も時間をかければ可能です。相続税の申告や、揉めている場合は専門家が安全です。
- Q自分でやると費用はいくらですか?
- A
主に戸籍や証明書の手数料と、登記をするなら登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)です。戸籍は1通450円、除籍や改製原戸籍は750円が一般的です。
- Q期限のある手続きはどれですか?
- A
死亡届は7日以内、相続放棄は3か月以内、準確定申告は4か月以内、相続税の申告は10か月以内、相続登記は3年以内です。期限の近いものから順に進めてください。
- Q相続登記を自分でやるのは難しいですか?
- A
本人が申請することはできますが、書類の作り方が細かく、法務局に何度か足を運ぶ人もいます。平日に動けない人や、不動産が複数ある人は司法書士に頼むほうが早いです。
- Q行政書士には何を頼めますか?
- A
戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、預貯金の解約のサポートなどです。登記の申請は司法書士、税の申告は税理士、争いの代理は弁護士の仕事なので、頼みたい中身から選んでください。
- Q専門家にはいつ相談すればいいですか?
- A
四十九日を過ぎた頃が現実的です。ただ借金がありそうな場合や、揉める気配がある場合は、相続放棄の3か月があるので早めに動いてください。
- Q全部まとめて頼むといくらですか?
- A
代行サービスは頼む範囲しだいで十数万〜数十万円、信託銀行の遺産整理は最低報酬が100万円を超えることもあります。「まとめて」の範囲がサービスで違うので、見積もりの項目を必ず突き合わせてください。
まとめ:相続手続きは自分でできる範囲が広い


相続手続きの大半は自分でできます。頼む価値が高いのは、相続登記・相続税の申告・揉めたときの交渉の3つでした。
私は自分でやれる分をやり、残りをまとめて任せて総額約26.7万円。
この線引きは、会社員で実家が遠い長男の答えです。条件が違えば、線はもっと手前にも奥にも引けます。



期限だけは待ってくれません。どの期限が動いているかだけ、今日のうちに確かめてくださいね。
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