次はいつ帰るか。カレンダーを開いたまま、手が止まっているところだと思います。
先に結論を置きます。帰省の頻度は平均で決めるものではなく、現地でしか埋まらない穴がいくつあるかで決まります。
私は片道4時間以上の実家へ、月2回のペースで3年通いました。それで足りていたかというと、足りていません。
母が家の前で転んだことを、私は近所の方からの電話で知りました。月2回帰っていても、私の目は間に合っていなかったわけです。
回数を増やすか減らすかを決める前に、先に出す数字が4つあります。用事の数、現地にある目の本数、一年で使える休みの量、月に出せる金額です。
その4つの物差しと、回数の問題ではなくなるサイン、きょうだいと頻度の話をするときの詰まりどころまで書きます。
読み終えたら、次の帰省より先に入れてほしい連絡が1つあります。それだけ持って帰ってください。
遠距離介護の帰省は月何回が多いのか

目安の話から入ります。ただ、目安に合わせにいくと苦しくなる理由も一緒に書きます。
私は月2回を3年続けた
実家は片道4時間以上。新幹線と在来線を乗り継いで、朝に家を出て昼過ぎに着く距離でした。
そこへ月2回、3年通いました。ほとんどが土日で、たまに有給を足して金曜から動く形です。
1往復にかかった実費はおよそ2万8千円でした。内訳と3年ぶんの総額は、交通費だけを月ごとに並べた記事にまとめてあります。
正直に書くと、月2回という回数に根拠はありません。母の状態から逆算したのではなく、これ以上は無理だっただけです。
けんじ決めたというより、そこが限界だった、が本当のところです
月1回で回る家もある
同じくらいの距離でも、月1回で問題なく回っている家はあります。差がつくのは距離ではありません。
親のそばに、自分以外の目が何本あるか。そこが違うだけです。
- 担当のケアマネがいる
- 週に何度か人が来る
- 近所に連絡先を渡した
- 親が自分で通院できる
ここが埋まっていれば月1回で回ります。逆に週1で帰っていても、全部を自分でやっている家は足りません。
平均に合わせると潰れる
月何回が普通か、という問いは調べたくなります。私も調べました。
で、そこで出てきた数字に自分を合わせにいったのが失敗でした。平均はあなたの家の距離も休みも親の状態も見ていません。
回数を守ること自体が目的になると、帰った日に何をしたかを思い出せなくなります。私は2年目の終わりに有給を使い果たしました。
介護する側が先に倒れると、頻度どころの話ではなくなります。そのあたりは共倒れを防ぐために私がやめたことに書きました。
帰省の頻度を決める4つの物差し


ここからが本題です。紙とペンを用意して、4つの数字を出してください。10分で終わります。
現地でしか終わらない用事
先月、実家で自分がやったことを全部書き出します。細かいものも省かないでください。
私の場合は、通院の付き添い、薬の残りの確認、冷蔵庫の中身の入れ替え、郵便物の仕分け、それから母の話し相手でした。
書き出してみると、本当に現地でしか終わらないのは通院の付き添いだけです。残りは人に頼めるか、家からでも回せます。
回数を決める前に、この仕分けを一度やってください。頻度は用事の数についてくるものです。
現地にある目の本数
次に、親のそばにいる自分以外の目を数えます。ケアマネ、ヘルパー、デイの職員、配食の人、近所、きょうだい。
数えるのは人数ではなく、週のうち誰かが必ず親に会う日が何日あるかです。週に3日その日があるなら、私の見方では月1回で回ります。
これは統計ではなく、私が母のときに使った線引きです。ゼロなら週1で帰っても不安は消えません。
私の家は、介護保険の認定を取るまでこの本数がゼロでした。母の転倒を近所の電話で知ったのは、その時期です。
目を増やす入口は、実家のある市区町村の地域包括支援センターです。そこで相談してから要介護認定に進みます。
認定が下りると使えるサービスが決まるので、申請から利用開始までの流れは先に見ておいてください。
目の本数を増やす手はもう1つあります。一人暮らしの親の見守りサービスの費用を月額の安い順に並べた記事に、人が動く型と機器だけの型の違いを書きました。
一年で使える休みの量
月2回を12ヶ月続けると、年に24日出ていきます。土日だけで収まる回はそう多くありません。
通院も認定調査も施設の見学も、平日にしか動かないからです。私は2年目の終わりに有給が尽きました。
有給が無くなると、欠勤か週末強行のどちらかになります。週末に寄せると運賃が上がり、1往復の単価まで跳ね上がりました。
頻度を決める前に、一年で何日休めるかを先に出してください。ここを見ないと2年目で必ず詰まります。
月にいくらまで出せるか
1往復の実費に回数を掛ければ、月の金額が出ます。私は1往復およそ2万8千円だったので、月2回で5万円台でした。
介護がいつまで続くかは誰にも分かりません。だから年数ではなく、月にいくらまでなら続けられるかで上限を決めます。
交通費を親のお金から出していいのか、あとで返ってくるのかは交通費の記事のほうに書きました。先に読んでおくと、揉め方が1つ減ります。
回数を増やす前に1回の中身を変える


4つの数字を出すと、たいていは「回数を増やす余力がない」と分かります。そこで先にやるのが中身の入れ替えです。
帰る日を平日に1日寄せる
土日に2日帰るより、金曜を1日足すほうが片付く用事は多いです。役所も病院もケアマネも平日しか動きません。
丸一日休まなくても構いません。介護休暇は時間単位で取れます(育児・介護休業法16条の5第2項、同法施行規則40条)。
始業から続けて取るか、終業まで続けて取るかのどちらかです。午前だけ休んで通院に付き添い、午後は戻る。この形が作れます。
その日の用事を3つに絞る
帰った日に全部やろうとすると、様子を見に帰ったはずが作業だけで終わります。親と座る時間が最初に消えます。
やることは3つまで。中身はこの型で選ぶと外れません。
- 本人の体調と食事を見る
- 家の中の危ない所を1つ直す
- 次の1ヶ月の段取りを決める
掃除や庭の草は、帰省の目的にしないでください。回数が要るように見えるのは、たいていこの手の作業が積まれているからです。
遠隔で終わる用事を外す
現地に紐づいた用事は、ひとつずつ外せます。私が遅れて手をつけたものを並べます。
- 公共料金を口座振替にする
- 薬の一包化を薬局に頼む
- 買い物をネットと配食に
- 電話の子機を居間に足す
先に減らすのは回数ではなく、現地に紐づいた用事のほうです。用事が減ってから回数を見直すと、不安が戻ってきません。
遠距離介護でこれから何から手をつけるかで迷っている方は、私が3年かけてやった順番を先に見てもらったほうが早いです。
頻度を上げたほうがいいサイン


ここからは逆の話です。回数を減らす工夫が効かなくなる合図が4つあります。
火とお湯の失敗が出た
母は鍋を火にかけたまま忘れることがありました。物忘れの中でも、火まわりは意味が違います。
火の失敗が2回続いたら、それは回数で埋める話ではありません。帰る回数を増やしても、留守の時間は減らないからです。
次の帰省でやるのは、今のコンロに消し忘れ消火の機能が付いているかの確認と、電気ポットへの置き換えです。物で先に止めます。
同時に、火の失敗があったことをケアマネと主治医に伝えてください。物で止めるのと、状態を診てもらうのは別の話です。
同じ電話が何度も来る
同じ用件の電話が一日に何度も来るようになったら、記憶より先に不安が出ていると思ってください。
母も同じ話を何度もするようになりました。私は電話の回数だけを見て、状態が進んだことに気づくのが遅れました。
この段階で効くのは、帰る回数より人が来る回数です。デイやヘルパーを増やせないかケアマネに聞いてください。
近所から連絡が入った
母が家の前で転んだことを、私は近所の方からの電話で知りました。自分の目で気づいたのではありません。
他人が動いた時点で、目はもう足りていません。近所の人には、すでに見えていたということです。
連絡をくれた人には礼を伝えて、こちらの携帯番号を渡しておいてください。目が1本増えます。
短い間隔で入退院する
入院と退院の間隔が短くなってきたら、在宅で支える形の限界が近い合図です。退院のたびに動ける範囲が狭くなります。
この時期に施設を見るのは、入居させるためだけではありません。選択肢を知らないまま次の入院を迎えるのが怖いからです。
私は掲載型のサイトを2つ自力で見て回って遠回りしました。順番でつまずきたくない方は、施設探しで私が使った順に並べた記事を見てください。
ちなみに私の家は、最後に母が家がいいと言ったので入居はしていません。見たうえで選ばない、も答えのひとつです。
きょうだいと頻度の話をするとき


ここが、頻度の話でいちばん壊れやすいところです。私は実際に壊しました。
公平な回数で決めない
弟は車で40分の場所に住んでいました。それでも3年のうち、まとまって関わったのは母の入院時の2回だけです。
回数を並べて公平を求めると、相手は行けない理由を並べます。そこで話は止まります。
その理由が全部言い訳とも限りません。配偶者の同意が取れない、やり方が分からない。口に出されないだけで、向こうにも事情はあります。
私は3年ぶんの不満を口に出さないまま相続の話に入り、弟と1年絶縁しました。回数の不満は、貯めると必ず別の場所で出ます。
頼むのは回数でなく用事
月1回帰ってくれ、は断られます。今月の通院の付き添いを1回、なら受けてもらえることがあります。
距離があるきょうだいには、現地に行かない用事を渡してください。支払いの管理、書類の記入、施設への電話。
それでも動かない相手にどう向き合うかは、弟と1年口をきかなくなるまでの経緯に全部書きました。同じ道は通らないでください。
帰る回数を作るために使える制度


休みが足りないから回数を増やせない、で止まっている方へ。使えるものが増えています。
会社には知らせる義務
2025年4月の改正で、育児・介護休業法に新しい決まりが入りました。知らないままの方が多いところです。
家族に介護が必要な状況になったと会社に申し出ると、会社は介護休業や両立支援の制度を知らせ、意向を確認する面談などをしなければなりません(同法21条4項)。
40歳になった年度にも、会社から制度の情報が出されることになっています(同条5項)。自分で調べる前に、まず申し出るほうが早いです。
私は3年のあいだ、介護休暇も介護休業も知らないまま有給だけで通いました。会社に言えば案内が来る、という発想がなかったんです。
介護休暇は時間で取れる
介護休暇は1年度に5労働日まで。介護が必要な家族が2人以上なら10労働日です(同法16条の5第1項)。
1日単位で使い切る必要はありません。時間単位で取れるので、所定8時間の会社なら5日ぶんが40時間になります。
通院の付き添いに4時間ずつ当てれば、年に10回動ける計算です。ただし始業から連続、または終業まで連続の取り方に限られます。
まとまった期間が要るなら介護休業です。同じ家族について通算93日まで、3回に分けられます(同法11条)。給付金の額は勤務先とハローワークで確認してください。
辞めずに続ける組み立て方は、仕事を辞めずに3年通した私の使い方のほうに時系列で並べてあります。
実家で働く形を相談する
介護休業を取っていない社員に対して、申し出に応じて在宅勤務ができるようにする措置を講じる。これが会社の努力義務になっています(同法24条4項)。
義務ではなく努力義務なので、断られる会社もあります。だめでもともとで聞く価値はあります。
金曜だけ実家から働ければ、往復は1回のままで滞在が3日になります。回数を増やさずに時間だけ増やす手です。
親のお金の段取りが先
帰省の用事のうち、いちばん本人がいないと動かないのが親のお金です。銀行も役所も本人確認から始まります。
判断能力が落ちたあとだと、口座が動かせなくなって、そこから帰省が増えます。順番が逆になるわけです。
家族信託や任意後見は、親が元気なうちにしか作れません。何ができるかを知るだけなら、「おやとこ」公式サイトで無料相談してみるのような窓口で聞けます。相談までは無料で、契約する段になってから費用がかかる形です。![]()
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私は母の物忘れが出てから調べて、判断能力の線引きに間に合わず見送りました。急いで契約する話ではなく、聞くだけ聞いておく話です。
遠距離介護の帰省頻度によくある質問


- 遠距離介護の帰省は月何回が目安ですか?
-
目安を先に決めないでください。現地でしか終わらない用事の数と、親のそばにいる自分以外の目の本数で決まります。ケアマネや訪問サービスで週に3日は誰かが必ず会う状態なら、月1回で回る家もあります。誰も会わない週があるなら、週1回帰っても足りません。私は片道4時間以上を月2回、3年続けました。
- 月1回では少なすぎますか?
-
回数だけでは判断できません。月1回でも、通院に人が付き添えて、薬の管理ができて、何かあったときに連絡が来る先が決まっていれば足ります。逆に月1回で不安が消えないなら、増やすべきは帰省ではなく現地の目です。まずケアマネか地域包括支援センターに現状を伝えてください。
- 親に「もう来なくていい」と言われました
-
言葉どおりに受け取らないでください。迷惑をかけている自覚と、来てほしい気持ちが同時にあることが多いです。回数を減らす代わりに、短い電話の回数を増やすほうが伝わります。会いに行く用事ではなく、届け物や書類など理由のある用事にすると、親も受け取りやすくなります。
- 帰省の回数を減らしても大丈夫ですか?
-
回数から先に減らすと、様子が分からない不安で緊急の帰省が増えます。先に外すのは現地に紐づいた用事のほうです。公共料金を口座振替にする、薬の一包化を薬局に頼む、買い物を配達に切り替える。用事が減ってから回数を見直すと、不安が戻ってきません。
- 仕事の休みが足りません
-
有給の前に介護休暇があります。1年度に5労働日、介護が必要な家族が2人以上なら10労働日で、時間単位でも取れます(育児・介護休業法16条の5、同法施行規則40条)。会社に介護が必要になったと申し出れば、会社には制度を知らせて意向を確認する義務もあります(同法21条4項)。まず人事に一言伝えてください。
- きょうだいに帰省を頼むには?
-
回数の公平を求めると断られます。月1回帰ってではなく、今月の通院の付き添いを1回、と用事で頼んでください。遠方のきょうだいには、支払いの管理や施設への電話など現地に行かない用事を渡します。溜めた不満は相続の話し合いで出てきます。私はそれで1年絶縁しました。
- 帰省の頻度はいつ見直せばいいですか?
-
火やお湯の失敗が続いたとき、同じ用件の電話が一日に何度も来るとき、近所の人から連絡が入ったとき、入退院の間隔が短くなったとき。この4つが出たら回数の調整ではなく、サービスの追加や在宅を続けるかどうかの検討に入ってください。
まとめ:回数ではなく穴の数で決める


私は月2回を3年続けて、それでも母の転倒は近所からの電話で知りました。回数は安心を買ってくれません。
この記事の要点を置いておきます。
- 平均の回数に合わせない
- 現地限定の用事を数える
- 自分以外の目の数を見る
- 休みの残量から逆算する
- 火と電話と近所はサイン
- 頼むのは回数でなく用事
回数を増やせない自分を責める必要はありません。責めても目は増えないからです。
今日やることは1つだけ。実家のある市区町村の地域包括支援センターに電話を入れてください。すでにケアマネがいる方は、ケアマネに現状を伝える連絡で構いません。
次の帰省の予定を決めるのは、そのあとです。目が1本増えてからのほうが、同じ回数でも眠れる夜が増えます。










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