誰も住んでいない実家の郵便受けに、親の名前の封筒が溜まっていく。抜いて帰っても、次に行くとまた同じだけ溜まっている。
自分の家に転送してしまえば楽になるのに、と考えて調べ始めた方が多いと思います。
先に答えを書きます。亡くなった人あての郵便物は、家族が申し出ても転送できません。日本郵便の公式Q&Aにそう書かれています。
本人あての郵便物は、差出人に返還される扱いになります。郵便局に一手を打てば全部片づく、という方法はありません。
止めるなら、差出人ごとに潰していくことになります。数は多いのですが、順番を決めれば1回の帰省で形になります。
私は母を看取ったあと、片道4時間以上の実家が空き家になりました。弟と揉めて名義が母のままだった1年、郵便受けは何度も溢れています。
この記事に書くのは、封を開ける前に決めること、差出人を3つに分ける止め方、役所の通知だけは送付先を変えられる制度、この3つです。
借金があるかどうかを確かめる手順そのものは、親の借金の調べ方と3か月の数え方に分けて書いてあります。期限が近い方はそちらが先です。
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亡くなった人あての郵便物は転送できない

ここを先に潰しておきます。使えない方法に時間を使うと、そのぶん郵便受けが溢れる日が延びるだけです。
公式の答えは一行
日本郵便のQ&Aは、こう書いています。家族から転送の申出があっても、亡くなった本人あての郵便物等は転送できない。
そして、本人あての郵便物等は差出人へ返還されます。転居届を出せばいい、という話ではありません。
転居届そのものは、引っ越した人の郵便を1年間だけ新住所へ回す仕組みです。提出のときに本人確認があります。
生きている人が引っ越す前提の制度なので、亡くなった親の名前では出せません。ここは窓口で粘っても変わらないところです。
ついでに言うと、私が探した範囲では、郵便局に「死亡を届け出る手続き」という案内ページは見当たりませんでした。
配達を担当する郵便局に電話して事情を伝える、という運用で回っているのだと思います。
私も最初に郵便局へ電話しました。丁寧に聞いてはもらえましたが、返ってきたのは「差出人さんに連絡していただく形になります」でした。
不在届も解決にならない
もう1つ、期待してしまいやすいのが不在届です。長期で家を空けるときに郵便を預かってもらう仕組みで、無料です。
ただ、これは空き家には向きません。保管は最長30日で、満了日の翌日に全部まとめて配達されます。
止まるのではなく、溜まって一度に届く。誰もいない家では、溢れる日が1か月先に動くだけです。
種別を選んで預かってもらうこともできません。その家あての郵便物は全部が対象になります。
使い道があるとすれば、片付けや内覧で家を空ける1か月だけを凌ぐ場合です。恒久の対策にはなりません。
実家に届き続けた物
何が届くのかを先に知っておくと、あとの仕分けが早くなります。うちの郵便受けに入っていたものを書きます。
- 固定資産税の納税通知書
- 電気と水道の検針票
- 火災保険の更新案内
- 銀行と証券会社の残高通知
- 生協とカタログ通販のチラシ
- 病院と薬局からの案内
- 母の友人からの手紙
量としていちばん多かったのは通販のカタログでした。止めるのがいちばん簡単で、放っておくと郵便受けを占領するのもこれです。
手が止まったのは母の友人からの手紙です。差出人に連絡する、の一言では片づかない封筒が、必ず何通か混ざります。
封を開ける前に決めることが1つある

持ち帰った束を、その場で開けたくなります。開ける前に確認しておくことが1つだけあります。
開けたら拒絶できない
郵便には受取拒絶という仕組みがあります。封筒に「受取拒絶」と書いたメモか付せんを貼り、押印か署名を添えて出す方法です。
配達員に渡すか、郵便窓口に持ち込むか、ポストに投函すれば差出人へ返ります。手数料はかかりません。
注意はここです。開封したあとは受取拒絶ができません。日本郵便が明記しています。
だから、身に覚えのない請求や怪しい封筒は、開ける前に判断する必要があります。開けてから「返そう」は効きません。
もう1つ。「これは郵便物ではありません」「○○メール便」と書かれた配送物は、この方法の対象外です。表面の連絡先へ直接言うことになります。
相続放棄を考えるなら
相続放棄を少しでも考えている方は、開封の前に手を止めてください。開けるという行為そのものより、そのあとに何をするかが問題になります。
届いた請求書を親の口座から払う、残高を引き出す。この種の行動は、相続を承認したと見られる余地があります。
どこからが線を越えるのかは事案によります。私は相続診断士ですが、ここを断定はしません。判断が要る場面だからです。
放棄を考えている段階なら、開封した封筒は払わずに全部残す。そのうえで弁護士に見てもらうのが早いです。
期限の数え方と手続きの流れは相続放棄のやり方と3か月の期限にまとめています。
私は全部開けました
私の場合は、弟からの電話で期限を数え始めました。残り3週間で、母あての郵便物を全部開けています。
借金が無いと確かめてから放棄しない、という順番だったので開けました。逆の順番で来た方は、同じようにしないでください。
信用情報機関3社への開示請求も同じ期間にやりました。白だと分かったのは期限の8日前です。
その手順は親の借金の調べ方に細かく書いたので、ここでは繰り返しません。
ひとつだけ足しておくと、開けた封筒は差出人ごとにクリアファイルへ分けておくといいです。次の章の仕分けが、そのまま終わります。
差出人を3つに分けて止めていく

全部にいっぺんに連絡しようとすると、必ず途中で止まります。優先順位は「お金が出ていくか」で決めます。
最初に止める支払い系
1つ目は、放っておくと口座から金が出ていくものです。郵便を止めるという話より、こちらが先になります。
- 新聞と生協の定期便
- NHKの受信契約
- 電気・ガス・水道
- 固定電話とネット回線
- 有料の会員サービス
私が連絡した先は、どこも電話1本で受け付けてくれました。相続の書類を出してほしいと言われたことはありません。
会社によっては求められると思います。名義と支払方法をどうするかは、同じ電話の中で決められます。
電気と水道だけは、止める時期の考え方が別にあります。空き家の電気と水道をいつ止めるかに書いたとおり、水道を先に判断してください。
私はここを1年放置しました。電気と水道の基本料金だけで、その年に約4万円が出ています。
次に住所を持つ相手へ
2つ目は、親の住所を登録していて、これからも送ってくる相手です。お金は出ていきませんが、数はこちらが多い。
- 通販とカタログの会社
- デパートの外商
- 病院・歯科・薬局
- 同窓会や町内会
- 寄付先や宗教団体
ここは電話でもハガキでも構いません。「名義人が亡くなったので送付を止めてほしい」と伝えるだけです。
証明書を求められたことは、私の場合は一度もありませんでした。会社によっては求められると思うので、除籍謄本を1通は手元に置いておくと早いです。
封筒にお客様番号が印字されているので、電話しながら読み上げると1件2分で終わります。まとめて1日でやってしまうのがコツです。
最後まで残す郵便
3つ目は、止めてはいけないものです。相続の手続きが終わるまで、届いてもらわないと困る郵便があります。
- 銀行と証券の残高通知
- 生命保険の各種通知
- 年金機構からの書類
- 役所からの税の通知
これらは止めるのではなく、手続きを進めた結果として自然に止まります。口座を解約すれば通知は来なくなります。
この山でいちばん怖いのは、止めることではなく読み落とすことです。期限のついた通知が、空き家のポストで眠ります。
私は高額療養費の制度を、案内のはがきが実家に届くまで知りませんでした。役所の窓口でも、葬祭費のほうしか教わっていません。
もし実家に行くのが月1回なら、そのはがきは最大で1か月寝かせることになります。請求に期限のあるものは、それだけで危なくなります。
ただ、届く先が空き家のままだと読めません。役所からの通知については、送付先だけを変える方法があります。
役所からの通知は送付先を変えられる

ここはあまり案内されないのに、遠方に住む相続人にはいちばん効きます。納税通知書を自分の家で受け取れるようになります。
相続人代表者指定届
名前は長いのですが、中身は単純です。相続人の中から通知を受け取る代表者を1人決めて、役所に届け出る紙です。
神戸市の説明では、この届出をもとに納税通知書などを指定された相続人代表者へ送付する、とあります。
自治体によっては、固定資産の現所有者申告と1枚の様式になっています。太宰府市はその形です。
用紙は市町村のサイトからダウンロードできることが多く、郵送で出せます。実家の役所まで行かなくて済みます。
代表者に決まったからといって、その人が全額を負担するわけではありません。通知の宛先が決まるだけです。
誰を代表者にするかは、相続人の側で決めます。自分の名前で出す前に、兄弟へ一言入れておいてください。
様式も名称も自治体で違います。「相続人代表者」と市町村名で検索するか、税務課に電話して用紙を送ってもらってください。
3か月という期限の中身
ここで3か月という数字が出てきます。中身が2つあるので、分けて見てください。
義務として定められているのは、固定資産の現所有者申告のほうです。自分が現所有者だと知った日の翌日から3か月を経過した日まで、と決まっています。
相続人代表者の指定そのものは、送付先を決めるための届出です。太宰府市のように2つを1枚の様式にして、3か月以内の提出を案内している自治体があります。
相続放棄の3か月と数字が同じなので、混ざりやすいところです。別の制度で、別の起算点です。
登記の名義を変えれば、翌年度から新しい所有者に通知が行きます。それまでの橋渡しがこの届出です。
私は弟と揉めて登記が1年動きませんでした。この紙を先に出しておけば、納税通知書を取りに帰る往復が減っていたはずです。
郵便受けが溢れた家で起きること

急がせるつもりはないのですが、放っておくと何が起きるかは書いておきます。判断の材料にしてください。
留守だと外から分かる
郵便受けから封筒がはみ出している家は、道から見て誰も住んでいないと分かります。これは単純な事実です。
私が実際に困ったのは、溢れた封筒が風で飛んで隣の敷地に入ったことでした。謝りに行く用事が1つ増えました。
投入口に養生テープを貼って塞いだこともあります。配達の方が困るだけなので、これはやめたほうがいいです。
現実的なのは、近所の方に一言お願いしておくことでした。うちは向かいの方が、溜まったぶんを玄関内に入れておいてくれました。
頼める相手がいない場合は、郵便受けを大きい物に替えるか、差出人を減らすしかありません。結局、止める作業に戻ってきます。
私が払った1年28万円
弟と分割の話がつかず、実家の名義が母のままだった1年があります。その1年に私が払った維持費は約28万円でした。
内訳は、固定資産税と都市計画税で約5万円、電気と水道の基本料金で約4万円、火災保険で約2万円です。
残りの約17万円は交通費です。片道4時間以上の実家へ、6往復しました。
その6往復のうち何回かは、郵便受けを空にして帰っただけです。押し入れは開けていません。
郵便のために帰っていたわけではない、と当時は思っていました。今振り返ると、それも理由の一つだったと思います。
郵便を止め切るには手続き本体が要る

ここまでで止まるのは、通販とカタログと定期購読です。残る封筒は、手続きが終わらない限り届き続けます。
口座を閉じるまで続く
銀行からの通知は、口座がある限り来ます。止めてくれと言っても、名義人が亡くなっているなら解約の話になります。
母の口座は2つありました。少額のほうは自分で窓口へ行き、解約だけで2時間近く待っています。
戸籍を遡って集める作業が、思っていたより重かった。必要書類の全体像は預貯金の相続手続きと口座凍結の解除に書いています。
順番としては、戸籍が揃う、遺産分割が決まる、口座が閉じる、通知が止まる。郵便は最後の結果でしかありません。
まとめて任せる選択肢
遠方だと、平日に窓口へ行くこと自体が難しい。私も有給が尽きかけていました。
戸籍集めから名義変更までをまとめて任せたい段階なら、nocos(ノコス)の相続手続き代行を見てみてください。私が母の相続で使った窓口です。
私が払ったのは、スタンダードプランと金融機関1社ぶんで税込22万円。登録免許税と戸籍の実費を足して、総額は約26.7万円でした。
良かったことばかりではありません。1か月ほど連絡がなく、自分から催促のメールを打ちました。
安く済ませたいなら、司法書士に個別で頼むほうが下がります。私が地元で取った見積もりは13万円ほどでした。
窓口を1つにまとめたいか、金額を下げたいか。そこの選び方はnocosを実際に使った私のレビューと相続の相談先おすすめランキングに書きました。
家そのものを決める日
郵便を全部止めても、家は残ります。誰も住まない家に郵便受けがある限り、また何かが届きます。
売る、貸す、持ち続ける。選択肢の比べ方は空き家になった実家の税金と管理、処分の選択肢に整理しました。
私は一括査定で5社に出して、地元の会社に1,800万円で売りました。地方の築古の戸建てです。
使い勝手と、複数社から電話が来る面倒さはイエウールの評判と私の売却レビューに正直に書いてあります。
ただ、今日そこまで決めなくていいです。郵便の話で来た方に売却を急がせるのは筋が違うので、頭の隅に置くだけで十分です。
故人あての郵便物についてよくある質問

- 郵便局に死亡を伝えれば、それで止まりますか。
-
全部は止まりません。日本郵便のQ&Aにあるのは、本人あての郵便物は差出人へ返還されるという扱いまでです。
返還されても、差出人側が登録を直さなければまた送ってきます。止めるには差出人へ連絡することになります。
- 相続人である私あてに転送してもらう方法は本当にないのですか。
-
ありません。日本郵便は、家族から転送の申出があっても亡くなった本人あての郵便物等は転送できないと明記しています。
相続人であることを証明しても同じです。宛先を変えたいなら、差出人ごとに住所変更を頼む形になります。
- 親あての封筒を子が開けても問題ありませんか。
-
手続きを進める相続人が開けること自体は、実務では普通に行われています。私も母の郵便物は全部開けました。
気をつけるのは相続放棄を考えている場合です。開封のあとに支払いや払い戻しへ進むと、承認したと見られる余地が出ます。
迷う状況なら、封は開けても中身には手をつけず、弁護士に見てもらってください。
- 身に覚えのない請求書が親あてに届きました。
-
開ける前なら受取拒絶が使えます。「受取拒絶」と書いたメモか付せんを貼り、押印か署名を添えて出してください。
開封したあとは受取拒絶ができません。開けてしまった請求は、払う前に消費生活センターか弁護士へ相談してください。
- 不在届を出して、しばらく預かってもらえませんか。
-
最長30日までです。保管期間が満了すると、翌日にすべての郵便物等がまとめて配達されます。
誰もいない家だと、一度に大量の封筒が入って郵便受けが溢れます。片付けや内覧で家を空ける1か月を凌ぐ用途に向いています。
- 実家の郵便受けの鍵がなく、中身が取り出せません。
-
私は母の鍵束を玄関先で全部試して見つけました。通帳や印鑑と同じ引き出しに入っていることが多いです。
出てこないなら、郵便受けごと交換するほうが早いです。壊して開けると、次の配達で入れられなくなります。
取り出せない間も配達は続きます。ただ、差出人への連絡は封筒が手元になくても始められます。
通帳の引落履歴を見てください。定期的に送ってくる相手のほとんどが、そこに名前で載っています。
- 固定資産税の納税通知書だけでも自宅に届きますか。
-
届きます。相続人代表者指定届を実家のある市町村に出せば、指定した代表者あてに納税通知書などが送られます。
用紙の名称と様式は自治体で違います。税務課に電話すれば、自宅へ用紙を送ってもらえることが多いです。
- 相続人代表者に指定されると、税金を全部払うことになりますか。
-
通知の宛先が決まるだけです。誰がいくら負担するかは、相続人の間の話し合いで決めます。
ただ、現実には代表者が立て替える形になりがちです。うちは私が払い、弟には請求しないまま1年が過ぎました。
立て替えるなら、払った日付と金額をメモに残しておいてください。あとで根拠を出せないと、揉めたときに何も言えません。
- 年賀状はどうすればいいですか。
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喪中はがきを出せる範囲は出して、届いてしまったぶんは寒中見舞いで返す形になります。
住所録が実家にあることが多いので、片付けのときに探しておいてください。私は母の手帳の後ろから見つけました。
- 兄弟と分け方が決まっていません。私が勝手に止めていいですか。
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通販やカタログを止めるくらいなら、後から問題になったことはありません。心配なら一言送っておけば済みます。
役所への相続人代表者指定届は、誰を代表にするかを相続人で決める書類です。先に相談してから出してください。
私は一言を惜しんで1年揉めました。金額ではなく、聞かれなかったことで人は怒ります。
- 実家を売ったあとも郵便は届きますか。
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止め残しがあれば届きます。買主の方に迷惑がかかるので、引き渡しの前に差出人の一覧を作って潰しておいてください。
私は同窓会の名簿を止め忘れました。買主の方から不動産会社経由で連絡が来て、その場で電話しています。
まとめ:次に実家へ行く前にやること

今日やることは1つだけです。手元にある親あての郵便物を、差出人ごとに3つの山に分けてください。
お金が出ていく山、住所を持っているだけの山、手続きが終わるまで要る山。この3つです。
1つ目の山は、今夜のうちに電話番号だけ控えておく。明日の昼休みに半分は終わります。
転送できないか、と調べてここへ来た方には、遠回りに見えると思います。私もそう思いながら電話をかけていました。
ただ、止まらない郵便のほとんどは、手続きが終わっていないことの知らせでもありました。郵便受けが静かになった頃には、相続のほうも終わっていた気がします。
役所への相続人代表者指定届だけは、早いほど得です。用紙を1枚もらう電話から始めてください。
手続き全体の順番を確かめたい方は身内が亡くなったらすることの手続きリストを、家の維持費が気になる方は空き家の電気と水道をいつ止めるかを続けて読んでください。


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