親が認知症でも、相続の準備が全部手遅れになるわけではありません。分かれ目は診断名ではなく、そのときの判断能力がどれだけ残っているかです。
ただ、遺言・生前贈与・実家の売却の3つは、進むほど早く選べなくなります。会話が成り立つうちに、遺言と財産管理の備えを優先してください。
私は母の物忘れが始まったころ家族信託の無料相談まで行きながら、数週間迷っているうちに間に合わなくなりました。そのあと弟と1年口をきかなくなった側から、止まることと残っている手を整理します。
けんじ「うちはもう遅い」と閉じる前に、残っている手のほうを見てください。私はそこを誰にも聞かずに諦めました。
親が認知症になると相続で止まる4つ


意思能力がない状態でした契約などは、法律上無効です(民法3条の2)。認知症で止まるのは預金の出し入れだけでなく、相続の準備そのものです。
| やりたいこと | 進んだ後 | 補足 |
|---|---|---|
| 遺言を書く | 難しくなる | 軽い段階なら可能な場合も |
| 生前贈与 | できない | 本人の意思が必要 |
| 実家を売る | 本人はできない | 後見人と家裁の許可で可 |
| 遺産分割協議 | 進まない | 相続人側が認知症の場合 |
遺言が書けなくなる


遺言は、本人が内容を理解して自分の意思で残すものです。判断能力が落ちてから書くと、あとで無効を争われる余地が出てきます。
実家を誰が継ぐか、預金をどう分けるかを親の言葉で残せなくなる。ここが一番先に消える手です。書き方は遺言書の書き方で整理しています。
生前贈与ができない


贈与は「あげます」「もらいます」で成り立つ契約です。あげる側が理解できていなければ成立しません。
家族が親の通帳から子の口座へ移しても、贈与にはなりません。あとで税務署に否認される火種になります。元気なうちの選択肢は相続税の生前対策にまとめました。
実家を売れなくなる


親名義の家は、本人の意思確認ができないと売買契約を結べません。施設の費用にあてたくても手が出せない状態になります。
成年後見人を立てれば売れますが、親が住んでいた家を売るには家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)。凍結の仕組みは認知症の親の財産管理で詳しく書きました。
財産の大半が不動産の家は、相続税の支払いで詰まりやすくなります。自分の家が課税されるかは相続税はいくらからで確かめられます。
分割協議が止まる


これは親ではなく相続人側の話です。たとえば父が亡くなり、相続人の母が認知症だと、遺産分割協議が成立しません。協議は相続人全員の合意が要るからです。
このケースは相続人の中に認知症の人がいる場合で詳しく書きます。
親が認知症の相続が手遅れかの分かれ目


| 親の状態の目安 | 遺言 | 贈与や契約 |
|---|---|---|
| 物忘れが出てきた | できる | できる |
| 診断はあるが会話は成立 | 条件つき | 条件つき |
| 日常の判断が難しい | 難しい | 難しい |
| 意思疎通が難しい | 原則できない | できない |
※目安です。最終的な可否は、公証人・医師・専門家の確認で決まります。
診断名では決まらない


認知症と診断されたら何もできない、ではありません。見られるのは病名ではなく、そのときの理解の程度です。
診断直後の軽い段階なら、遺言を有効に残せる場合があります。逆に診断がなくても、意思疎通が難しければ手は打てません。
行為ごとに見られる


判断能力は、やろうとしていることごとに見られます。条件の多い信託契約と、「家は長男に」だけの単純な遺言では、求められる理解の水準が違います。
内容が単純なほど残せる可能性は上がります。親の状態には波もあるので、調子のいい時間帯を知っている家族が段取りを組むのが現実的です。
公証人と医師が確認


大丈夫かを最後に判断するのは家族ではありません。公正証書遺言なら、公証人が本人と直接やり取りして確かめます。
主治医の診断書を用意しておくと、あとで争われにくくなります。
すでに成年後見が始まっている人でも、判断能力が一時的に戻ったときに、医師2人以上の立会いで遺言できる決まりがあります(民法973条)。ハードルは高いので、専門家に相談してください。
まだ間に合う段階で打てる手


遺言を1枚だけ残す


最初にやるのは遺言です。分け方が決まっていれば、そのあとの手続きと家族の空気が丸ごと変わります。
完璧でなくて構いません。実家を誰が継ぐか、その1行だけでも残す価値があります。判断能力に不安があるなら、公証人が確認する公正証書遺言が安心です。
財産管理の備え


預金や実家が動かせなくなることへの備えは、任意後見・家族信託・法定後見の3つです。任意後見と家族信託は、本人が元気なうちにしか結べません。
| 方法 | 結ぶ時期 | 向いている家 |
|---|---|---|
| 任意後見 | 元気なうち | 生活全般を任せたい |
| 家族信託 | 元気なうち | 実家の売却も見すえる |
| 法定後見 | 進んだ後 | ほかに手がない |
3つの違いと費用は認知症の親の財産管理で比べています。相続対策(分け方)と財産管理(今のお金の管理)は別物なので、混ぜずに考えると整理しやすいです。
贈与は元気なうちだけ


相続税がかかりそうな家なら、贈与も選択肢です。親本人が理解して渡す形で、記録を残してください。
とか言いつつ、私は母に一円も贈与していません。うちは遺産が基礎控除に届かず、相続税はかからない家でした。
贈与を急ぐ必要があるかは、先に税額の見込みで確かめたほうがいいです。
認知症が進んだ後でもできること


遺言も贈与も無理になっても、やれることは残っています。どれも親の同意がなくても家族だけで進められます。
財産の一覧を作る


どこの銀行に口座があるか、保険はどこか、実家の固定資産税はいくらか。これが分からないまま相続に入ると、探すだけで時間が消えます。
- 通帳とカードの場所
- 固定資産税の納税通知書
- 保険証券と年金の書類
- 借入やローンの有無
母の保険証券は、実家の片付けで処分予定の紙袋の底から出てきました。証券会社や保険会社からの封筒は、中身を見るまで捨てないでください。
介護費の記録を残す


親のお金を家族が立て替える場面は必ず来ます。領収書とメモがあるかどうかで、あとの話し合いの空気が変わります。
私は3年分の交通費や買い物を立て替えましたが、記録を何も残していませんでした。相続の話し合いで弟に「根拠を見せてくれ」と言われ、通帳とカード明細を遡っても、出てきたのは数十万円分だけでした。
ノートに日付と金額を書くだけで十分です。レシートを封筒に放り込むだけでも、何もないよりずっといい。
きょうだいで先に話す


親の遺言が取れないなら、次に効くのはきょうだいの間の合意です。亡くなってからでは、話し合いに感情が乗りすぎます。
お金の分け方から入らず、通院の付き添いや実家をどうするかから話すと切り出しやすいです。うちは介護の3年分の不満を口に出さないまま相続の話に入り、そこで割れました。
きょうだいの相続トラブルに経緯があります。
親の希望を聞いておく


法的な効力がなくても、親の言葉は家族が納得する材料になります。調子のいい日に、雑談の流れで聞くのがいいと思います。
母が施設を探していたころに言った「家がいい」の一言で、私は施設への入居を見送ると決められました。メモでも録音でも、残しておくと迷ったときの支えになります。
相続人の中に認知症の人がいる場合


協議に参加できない


判断能力がない相続人が1人でもいると、遺産分割協議の合意が作れません。家族が代わりにサインするのは無効で、あとで争いの種にもなります。
相続放棄も本人の意思が要るので、借金が多い相続でも放棄の手続きが進みません。協議書の作り方は遺産分割協議書の作り方で解説しています。
成年後見人が必要


協議を進めるには、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、後見人が本人の代わりに参加します。後見人は本人の利益を守る立場なので、本人の取り分を大きく減らす分け方には、原則として同意できません。
専門職が後見人になると報酬がかかり、東京家庭裁判所の目安は基本で月額2万円です。後見は相続が終わってもやめられず、本人が亡くなるまで続きます。
協議なしでできること


協議がまとまる前でも、亡くなった人の預金は、1つの金融機関につき150万円を上限に、相続人が単独で一部を払い戻せる制度があります(民法909条の2)。葬儀代などの当面の支払いにあてられます。
不動産は法定相続分のとおりの共有で登記する方法もありますが、共有になると売るときに全員の同意が要ります。割合の考え方は法定相続分と相続順位、口座の手続きは預貯金の相続手続きにまとめました。
相続登記には3年の期限もあるので、止めたままにはできません。亡くなった直後の全体の流れは身内が亡くなったらすることに一覧で書いています。
家族信託に間に合わなかった私の3年


相談は受けたのに


母の介護は、自宅前で転んだという近所からの電話で始まりました。物忘れや火の消し忘れが出てきたころ、私は家族信託を調べて無料相談まで行っています。
最後に判断するのは公証人だと聞き、母が説明できる状態かを、その場で自信を持って「はい」と言えませんでした。迷っているうちに数週間が過ぎ、母の判断能力の線を越えてしまいました。
弟と1年話さず


遺言はなく、母を見送ったあと、実家の分け方で弟と揉めました。売ることには弟も同意したのに、私が介護の3年分として求めた200万円の上乗せに根拠を出せず、話し合いは決裂しました。
そこから1年、名義は母のまま。親戚が間に入って和解できましたが、母の希望が紙1枚残っていたら、あの1年は要らなかった気がします。
相談先だけ先に決める


今できることが1つだけなら、相談先を決めておくことです。親の物忘れが気になり始めた段階なら、家族信託や任意後見の無料相談で「うちはまだ間に合うか」を確かめられます。
私が相談したのはおやとこ(旧スマート家族信託)です。相談は何回でも無料で、相談から契約までは数週間、信託が始まるまで1〜2か月と説明を受けました。
親の判断能力に不安が出てきた段階なら、まず間に合うかどうかだけ聞いてみてください。「おやとこ」公式サイトで無料相談してみる![]()
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母を見送ったあとの手続きは、代行に任せて実費込みで総額およそ26.7万円でした。進捗の連絡が少なく催促もしたので、良かった点も引っかかった点もnocosを使った体験談に書いています。
相談先の比べ方は相続の相談はどこがいいか、自分でやれる範囲は相続手続きはどこまで自分でできるかにまとめました。
親が認知症の相続でよくある質問


- Q親が認知症でも遺言は書けますか?
- A
内容を理解できる状態なら残せる場合があります。軽い段階で、内容が単純なほど可能性は上がります。公正証書遺言にして、公証人と医師の確認を受けると安心です。
- Q認知症と診断されたらもう手遅れですか?
- A
診断名だけでは決まりません。見られるのはそのときの理解の程度なので、会話が成り立つ段階なら遺言などの手が残っていることがあります。
- Q認知症の親から生前贈与できますか?
- A
贈与は本人が理解して渡す契約なので、判断能力がなければ成立しません。家族が通帳から移しても贈与にはならず、あとで否認されるおそれがあります。
- Q認知症の親の実家を売って施設費にできますか?
- A
本人の意思確認ができないと売買契約は結べません。成年後見人を立てれば売れますが、親が住んでいた家は家庭裁判所の許可が必要です。
- Q相続人に認知症の人がいるとどうなりますか?
- A
遺産分割協議が成立せず、相続放棄もできません。家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、後見人が本人の代わりに協議へ参加する流れになります。
- Q後見を使わずに相続を進める方法はありますか?
- A
法定相続分どおりの共有で登記する、預金の仮払い制度を使う、など協議なしでできる手続きはあります。ただ共有の不動産は売るときに全員の同意が要るので、専門家に確認してください。
- Q家族信託はいつまでに始めればいいですか?
- A
親が契約の内容を理解できるうちです。相談から契約まで数週間かかることもあるので、物忘れが気になり始めた時点で相談だけでも済ませておくのが安全です。
- Qどこに相談すればいいですか?
- A
遺言や後見は司法書士や弁護士、家族信託は専門の窓口、相続税がからむなら税理士です。迷うなら無料相談を2〜3か所受けて、説明の分かりやすさで比べてください。
親を見送ったあと、きょうだいから何も言ってこなくなったら、何も言ってこないときに確かめる順番を見てください。
まとめ:親が認知症でも打てる手は残る


親が認知症になると、遺言・生前贈与・実家の売却・遺産分割協議が止まっていきます。ただ全部が同時に終わるわけではなく、分かれ目はそのときの理解の程度です。
会話が成り立つなら、遺言を1枚と財産管理の備えを先に。進んでしまっていても、財産の一覧・介護費の記録・きょうだいとの話し合いは今日からできます。



私は迷っている数週間で間に合わなくなりました。まだ動ける方は、相談の予約だけでも先に入れてみてください。
財産凍結の備えは認知症の親の財産管理、相談先の選び方は相続の相談はどこがいいか、代行に任せた実費はnocosを使った体験談にまとめています。











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