実家の引き出しを上から順に開けて、仏壇の引き出しも見て、鏡台の下も見て、それでも通帳が出てこない。そういう夜があります。
私も母の家で似たことをやりました。ただ、あのとき私が探していたのは通帳だけではなくて、母が何と取引していたかが分かる紙なら何でもよかったんです。
先に結論を書きます。通帳が見つからなくても、親の口座は突き止められます。通帳は口座の証拠ではなく、口座に辿り着くための近道でしかありません。
この記事では、家の中の探し場所、家に何も残っていないときに書類から口座を割り出す順番、金融機関に照会したときの実額、そして探すのをやめる線の引き方まで書きます。
親がまだ生きている人は、動き方がまるごと変わります。存命の親の通帳を探している場合から先に読んでください。
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通帳がなくても、親の口座は突き止められます

探し場所の一覧に入る前に、ここだけ片付けさせてください。ここを取り違えたまま家探しを続けると、何日も潰したうえに期限のほうが先に来ます。
通帳探しと口座の特定は別物
通帳は、金融機関が残高を記録するために発行した冊子です。無くしても口座は消えません。
相続の手続きで金融機関が本当に要求してくるのは、通帳そのものではなく、誰が亡くなって誰が相続人かを示す戸籍と、相続人の本人確認書類です。通帳は「あれば話が早い」という位置づけです。
だから、家の中を探す目的を切り替えてください。通帳を見つけることではなく、どこの金融機関と取引があったかを1件でも多く拾うことが目的です。
金融機関の名前さえ分かれば、あとはそこに照会できます。支店名も口座番号も分からなくて構いません。
生前か死後かでできることが変わる
ここを混ぜている記事が多いので、先に分けます。
親が亡くなっている場合、子は相続人として金融機関に照会できます。戸籍で相続人だと示せば、取引の有無を調べてもらえますし、残高証明書も出してもらえます。
親が生きている場合は、子であるというだけでは照会できません。本人の口座情報は本人のものだからです。入院中でも認知症でも、そこは変わりません。
存命の親の口座を整理したいなら、道は3つです。
- 本人と一緒に窓口へ行く
- 本人の委任状を持って行く
- 成年後見や家族信託を使う
私は母の物忘れが始まった頃に家族信託を調べて、無料相談まで行きました。結局、判断能力の線引きに間に合わず見送っています。その顛末は家族信託に間に合わなかった話に正直に書きました。
親が元気なうちは、探すより聞くほうが百倍早いです。この記事の残りは、聞けなくなってしまった人向けに書きます。
探す前に自分の期限を数える
口座探しは、やろうと思えば何か月でも続けられてしまいます。だから先に終わりの日を決めてください。
気にする期限は2つです。相続放棄をするかどうかを決める3か月と、相続税の申告が要る家の10か月。
私は母の死後、弟からの電話をきっかけに残り日数を数え始めて、そこから3週間で母の郵便物を全部開けました。借金の有無を確かめるためでしたが、結果として口座の手がかりもそこで出てきました。
紙を全部見る作業は、借金調べと口座探しで完全に同じです。二度手間にならないよう、同じ日にまとめてやってください。手順は親の借金の調べ方にまとめてあります。
家の中で通帳と手がかりが出てくる場所

ここからが本題です。定番の場所から、実際に効いた場所の順に並べます。
手がかりは郵便物の山にあった
家の中で最初に見るべきは、引き出しではなく郵便物です。
通帳は隠されることがありますが、郵便物は勝手に届きます。金融機関は、こちらが何もしなくても定期的に紙を送ってきます。
母の家で私が開けたのは、玄関の靴箱の上に積まれていた分と、居間のテーブルの隅と、未開封のまま輪ゴムで束ねてあった分でした。全部開けるまで半日かかりました。
金融機関から届く紙の代表例を挙げます。
- 取引明細や利用代金の通知
- 定期預金の満期の案内
- 投資信託の取引報告書
- 年金の振込通知
- カードの更新や年会費の案内
- 金融機関からの年賀状
広告に見える封筒も開けてください。差出人が金融機関なら、それは取引がある証拠です。取引のない人に営業DMを出す金融機関はほとんどありません。
実家が遠い人ほど、郵便は止めずに溜めておくのが得です。私は片道4時間で月に一度しか行けなかったので、次に行く日までに届く分がそのまま追加の手がかりになりました。
ただし、実家が空き家になるなら話は別です。郵便受けから溢れた状態は、留守だと外に知らせているのと同じです。
その場合は、郵便局に転居・転送サービスの届出を出して、自分の住所へ転送してもらってください。届く紙がそのまま手がかりになるので、止めるのでなく行き先を変えるのがコツです。
届出は亡くなった方あてでもできるか、窓口で条件を確認してください。実家を引き払う予定があるなら、引き払う前に出しておくほうが確実です。
紙は、捨てる直前の物から出てくる
これは実感です。片付けの終盤に、いちばん大事な紙が出ます。
私は母の保険証券を、処分予定にしていた紙袋の底で見つけました。中身は古いチラシと包装紙で、もう捨てるつもりで玄関に寄せてあった袋です。
親の世代は、大事な物を大事な場所に置くとは限りません。菓子の缶、封筒の束、新聞紙の間、仏壇の引き出しの奥。本人の中では理屈が通っていたはずの場所に入っています。
だから捨てる物は、袋の口を縛る前に一度全部出してください。ここを飛ばすと、あとから「あの袋に入っていたかもしれない」が一生残ります。
紙が出てきやすい場所を並べます。
- 仏壇と神棚の引き出し
- 鏡台や箪笥の一番下の段
- 押し入れの菓子缶・箱
- 本や電話帳の間
- 冷蔵庫の上と食器棚の最上段
- 玄関の下駄箱の上の書類束
- 金庫と貴重品袋
- 入院時に持ち帰った荷物
最後の一つを忘れがちです。病院や施設から持ち帰った紙袋は、開けないまま押し入れに入っていることがよくあります。
先にカードと印鑑を探す
探す順番を変えるだけで、見つかる確率が上がります。通帳は分厚くて隠しやすいですが、カードは財布に入っています。
財布の中身は、その人の取引先の一覧です。キャッシュカード、クレジットカード、診察券、ポイントカード。全部並べて金融機関名を書き出してください。
印鑑も手がかりになります。実印と認印の他に、金融機関の名前が刻まれたケースに入った印鑑が出てくることがあります。
ただし、ここで一つ気をつけてください。カードが見つかっても、親の口座からお金を引き出さないでください。相続放棄をするつもりなら、引き出した行為が承認とみなされる可能性があります。
兄弟がいる家では、もっと厄介なことになります。あとで「勝手に下ろした」と言われる材料を自分で作ることになるからです。
私は弟と遺産分割で揉めたとき、母の通帳とカード明細を1件ずつ遡りました。誰かが勝手に触った形跡があると、そこで話が止まります。触らないのが結局いちばん早いです。
もう引き出してしまった人は、隠さないでください。いつ・いくら・何に使ったかを領収書とセットで残して、相続の相談に行くときに最初に伝えてください。
黙っていて後から出てくるのが、いちばん立場を悪くします。兄弟に対しても、専門家に対しても同じです。
紙の通帳が最初からない口座もある
ここ数年で口座を作った親なら、通帳が存在しないこともあります。通帳レスの口座やネット銀行は、探しても出てきません。
そういう口座は、紙ではなく画面に痕跡が残ります。
- スマホの銀行アプリ
- メールの受信箱の通知
- パソコンのブックマーク
- スマホに届くSMSの認証
- キャッシュカードだけある口座
親のスマホは、解約せずに手元に置いておいてください。回線を止めると届くはずの通知が消えます。
ロックが解けなくても諦めなくて大丈夫です。画面に出る通知の差出人名だけでも、金融機関の特定には足ります。
貸金庫は開け方が別の話になる
家じゅう探しても出てこないとき、貸金庫の可能性を忘れないでください。大事な物ほど家に置かない、という考えの親はいます。
手がかりは、貸金庫の鍵とカード、そして年1回引き落とされる使用料です。通帳の履歴や引き落としの明細に、少額の年払いが残っています。
問題は、名義人が亡くなった貸金庫は、鍵があっても勝手には開けられないことです。中身が誰の物かまだ決まっていないからです。
取扱いは金融機関によって違いますが、相続人全員の同意や立ち会いを求められることがあります。公証人に開扉に立ち会ってもらう方法が案内される場合もあります。
兄弟と揉めている家では、ここが完全に詰まります。中身が分からないまま同意だけ求めても、相手は動きません。
貸金庫がありそうだと分かった時点で、その銀行の相続窓口に電話して、開けるために何が要るかを先に聞いてください。段取りが分かってから兄弟に話したほうが、話が前に進みます。
家に何も残っていなくても、書類から口座は割り出せる

家の中を探し尽くしても金融機関名が出てこない。実家を引き払ったあとで、もう探す家がない。そういう人はここからです。
年金の振込先は、必ずどこかの口座
親に年金収入があったなら、これがいちばん確実です。年金は現金では届きません。必ず口座に振り込まれます。
年金の振込通知書か、年金額改定通知書に振込先が載っています。どちらも毎年届く紙なので、郵便物の山の中にある確率が高いです。
母の収入は年金だけでした。その振込先だった銀行の窓口に手続きで行ったとき、私は遺産整理のサービスを案内されています。
聞いてみたら最低報酬が100万円を超えると言われたので、その場で断りました。ただ、あのやり取りで「この銀行に母の口座がある」ことははっきりしたわけです。
年金の手続き自体にも期限があります。順番は親が亡くなったあとの年金の手続きにまとめました。
公共料金の引き落とし先をたどる
親が一人暮らしなら、電気・水道・ガス・電話は必ず誰かの口座から落ちています。
検針票や請求書に引き落とし口座の金融機関名が印字されていることがあります。印字がなくても、契約者名義で各社に問い合わせれば引き落とし先を教えてもらえる場合があります。
固定資産税や国民健康保険料の納付書も同じです。口座振替にしていれば、振替先が書かれています。
介護保険料も見てください。要介護認定を受けていた親なら、保険料は年金から引かれているか、口座から落ちています。
この作業は、口座探しと同時に「止めるべき契約の一覧」も作ってくれます。どうせやる作業なので、まとめて書き出してください。
確定申告書・源泉徴収票・保険の書類
親が確定申告をしていたなら、その控えは宝の山です。還付金の振込口座が書いてあります。
私は母の準確定申告を出しました。申告義務はなかったんですが、医療費と介護の自己負担が多くて還付があったからです。
そのとき税務署に持っていったのは、源泉徴収票と領収書を輪ゴムで束ねたものでした。窓口の担当者が日付順に並べ直してくれました。
この準確定申告をやるかどうかの判断は年金だけの親の準確定申告に書いています。
保険についても触れておきます。生命保険の契約がどこにあるか分からないときは、生命保険協会の生命保険契約照会制度が使えます。
親族が亡くなった場合などに、加盟する生命保険会社への契約の有無をまとめて確認してもらえる制度です。
利用料は照会対象者1名につき、WEB申請6,000円、書面申請7,000円と公式に案内されています。(出典:生命保険協会「生命保険契約照会制度」)
粗品のタオルは当てにしすぎない
「銀行名入りのタオルやカレンダーがあれば取引がある」と書いてある記事をよく見ます。手がかりにはなりますが、確度は高くありません。
もらい物が回ってきただけのこともありますし、何十年も前に解約した金融機関の物が残っていることもあります。
私の考えでは、粗品は照会先の優先順位を決めるための材料です。郵便物や引き落としのほうが、証拠としては何段も上です。
候補が多くて全部に照会すると費用がかさみます。順番をつけるためだけに使ってください。
金融機関に照会する手順と、かかる実額

金融機関名の候補が出たら、あとは聞くだけです。ここは思っているより淡々としています。
預金を全国一括で調べる窓口はない
最初に期待を折っておきます。日本中の金融機関を一度に検索してくれる公的な窓口は、預金にはありません。
全国銀行協会が案内している預金相続の手続きも、取引のあった銀行ごとに連絡する前提で書かれています。(参照:全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」)
生命保険には前の章で書いた一括照会の制度があるのに、預金にはない。この差を知らないと、探せる制度を探して時間を使うことになります。
だから、当たりをつけて1件ずつ照会する。地味ですが、これが正規のやり方です。
ゆうちょの現存調査は無料
候補がまったく絞れないなら、まずゆうちょを試す価値があります。親の世代は口座を持っている確率が高いうえに、調査自体にお金がかかりません。
ゆうちょ銀行には現存調査という手続きがあります。貯金の有無を調べてもらう制度で、公式サイトにこう書かれています。
「現存調査は無料ですが、調査の結果判明した口座の残高証明書の発行をご希望の場合は、当行所定の手数料(残高証明書の発行)が必要です」(出典:ゆうちょ銀行「現存調査(貯金の有無の調査)」)
窓口に出すのは貯金等照会書という用紙で、これは窓口に用意されています。あわせて印章と本人確認書類が要ります。
相続人として請求する場合は、被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本等と、自分が相続人だと分かる戸籍謄本等も必要だと同じページに書かれています。
つまり、無料だからといって戸籍なしで行くと出直しになります。行く前に戸籍を揃えてください。
支店が分からないと入口が変わる
これは遠距離の人にとって地味に効く話です。
最近はWebで相続手続きを受け付ける銀行が増えました。ところが、支店が分からない場合は対象外になることがあります。
三菱UFJ銀行は、取引店が不明な場合はWeb受付の対象外だと案内しています。(参照:三菱UFJ銀行「相続のお手続きのご案内」)
同じページで、相続専用の電話窓口が案内されています。支店が分からない人は、まずそこへ電話するのが早いです。
電話でどう言えばいいか迷う人のために書いておきます。名乗ったあと、この3つを順に伝えれば通じます。
- 母が亡くなり相続人であること
- 取引の有無を確認したいこと
- 支店も口座番号も不明なこと
そのうえで、必要書類と、郵送でできるか来店が要るかを聞いてください。残高証明書がほしいときは、死亡日を基準日にした残高証明書と伝えると一発で通じます。
取扱いは金融機関ごとに違います。行く前に必ず電話で、支店不明でも受け付けてもらえるかを確かめてください。
窓口の待ち時間も甘く見ないほうがいいです。私は少額の口座を1つ自分で解約しに行って、2時間近く待ちました。相続の手続きは通常の窓口業務とは別扱いになるので、時間がかかります。
片道4時間の実家で、2時間待って、その日のうちに帰る。あの日はそれだけで終わりました。遠方の人は1日に2件以上の窓口を回る予定を立てないほうがいいです。
残高証明書と取引履歴の手数料
口座が見つかったら、次は残高を確定させる番です。ここで初めてお金がかかります。
公式に金額が載っているものを並べます。
| 請求するもの | 金融機関 | 金額(税込) |
|---|---|---|
| 残高証明書 | ゆうちょ銀行 | 1通 1,100円 |
| 入出金照会(取引履歴) | ゆうちょ銀行 | 通帳1冊 1,100円 |
| 残高証明書(窓口・都度) | 三菱UFJ銀行 | 1通 770円 |
1件あたりは千円前後です。ただ、候補が5行あれば5倍になりますし、取引履歴まで取ると倍になります。
だから最初に残高証明書だけ取って、金額を見てから履歴を追うか決めてください。兄弟に使い込みを疑われている家だけは、最初から履歴も取ったほうが結果的に安く済みます。
残高証明書の基準日は、亡くなった日で出してもらうのが基本です。遺産分割で使う数字はその日の残高だからです。
戸籍を何度も出さずに済む方法
照会先が複数あると、行くたびに戸籍の束を出すことになります。原本を返してくれる金融機関もありますが、その場で預けて後日返却という所もあります。
これを一枚にまとめる制度が法定相続情報証明制度です。戸籍の束と相続関係の一覧図を法務局に出すと、認証文の付いた写しを無料で交付してもらえます。(出典:法務局「法定相続情報証明制度について」)
申出先は、亡くなった方の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、亡くなった方名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所から選べます。(参照:法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」)
ここが遠距離の人には効きます。実家のある地方まで行かなくても、自分の住所地の法務局で申し出ができます。
再交付についても書かれていて、当初の申出人であれば、申出日の翌年から起算して5年間は受けられます。
戸籍を集める作業そのものが重いと感じるなら、そこだけ人に頼む手もあります。私が自分で集めたときの手順と費用は戸籍を自分で集めた記録に書きました。
探すのをやめる線を、先に決めておく

最後に、いちばん書きたかったことを書きます。口座探しで本当に怖いのは、口座が出てこないことではありません。
口座より期限を落とすほうが怖い
探し続けている間も、3か月と10か月は進みます。
親に借金があったかどうかが分からないまま3か月を越えると、放棄という選択肢が原則として消えます。
相続税の申告が要る家で10か月を越えると、延滞税や加算税がかかります。それだけでなく、期限内の申告を前提にしている特例もあるので、使えるはずの軽減が使えなくなることがあります。
自分の家に相続税がかかりそうなら、口座を全部見つける前に一度税理士に見てもらってください。判断が要る期限は、探し物より先に来ます。
私の家は相続税がかかりませんでした。基礎控除が4,200万円で、実家の評価額と預貯金を足しても桁が一つ足りなかったからです。だから10か月の重さは味わっていません。
ただ3か月のほうは数えました。あれは、進んでいる実感がないまま日だけ減っていく時間でした。
だから先に線を引いてください。私なら、家の中の紙を全部見終えた日から2週間で照会を出し切ると決めます。
間に合わないと感じたら、家庭裁判所に期間を伸ばす申立てという逃げ道があります。過ぎてからでは使えません。相続放棄のやり方と期限で先に確認しておいてください。
見つからないまま協議に進むとき
全部見つかってから分けよう、と考えると永遠に終わりません。実務では、出てきた分で進めることのほうが多いです。
そこで問題になるのが、あとから口座が出てきたときにどうするかです。遺産分割協議書には、後日判明した財産を誰が取得するかを決めておく条項を入れる方法があります。
入れるかどうか、どう書くかは家の事情によります。専門家に依頼するなら、この条項を入れるかどうかを必ず聞いてください。聞かれる前にこちらから出すと、話が早いです。
兄弟がいる家なら、もう一つやっておくことがあります。探した場所と照会した金融機関を一覧にして、兄弟にそのまま渡してください。
効くのは一覧より、取り寄せた残高証明書の写しです。自分の言葉で「これだけだった」と説明するより、金融機関が出した紙を渡すほうが早く終わります。
離れて住んでいる側は、作業の苦労ではなく数字の裏づけを見ています。手を動かしていない人ほど、そこしか判断材料がないからです。
私は弟に介護費用の根拠を出せず、そこから絶縁まで行きました。数字の話は、出せるものを先に全部出したほうが結局こじれません。同じ轍を踏まないための話は遺産相続で何も言ってこないときにも書いています。
協議書ができたあとの解約手続きの流れは、預貯金の相続手続きと口座凍結の解除にまとめてあります。
自分でやるか、頼むか
ここまでの作業は、全部自分でできます。私も半分は自分でやりました。
かかるのはお金より日数です。戸籍を取り寄せるのに数日、照会の回答に1週間から2週間、それを金融機関の数だけ繰り返します。
次のどれかに当てはまるなら、私は人に任せたほうが早いと思います。
- 実家が遠くて月1回しか行けない
- 照会先の候補が3件以上ある
- 平日に窓口へ行く時間がない
- 相続人が3人以上いる
- 期限まで1か月を切っている
私は母の口座のうち1つをプロに任せ、もう1つの少額な口座は自分で窓口へ行きました。全部任せるか全部自分でやるかの二択ではありません。
戸籍集めから遺産分割協議書、預貯金の解約までまとめて任せたい人は、nocos(ノコス)の相続手続き代行を見てみてください。私が母の相続で戸籍収集から実家の登記まで任せた窓口です。
費用の内訳と、連絡が1か月止まって私から催促のメールを打った話はnocosの体験レビューに正直に書いてあります。良いところだけ読んで決めないでください。
まだ何を頼むかも決まっていない段階なら、無料相談で事務所を紹介してもらう手もあります。私は契約前にいい相続の無料相談を使って見積もりを取り、それと比べてnocosに決めました。
弁護士・税理士・手続き代行の向き不向きは相続の相談先の比較に並べています。どこに聞けばいいか分からない人はそこからどうぞ。
自分でやる範囲と頼む範囲の線引きは、相続手続きはどこまで自分でできるかで仕分けしています。
親の通帳が見つからないときのよくある質問

- 通帳も印鑑もない口座は、解約できないのですか?
-
解約できます。相続の手続きでは、通帳や届出印がなくても、戸籍と相続人の本人確認書類、遺産分割協議書などが揃えば進みます。
紛失している旨を金融機関に伝えれば所定の届出用紙を案内されます。手続きに時間が余計にかかることはありますが、口座が取り戻せなくなるわけではありません。
- 兄弟が通帳を隠している気がします。どうすればいいですか?
-
通帳の在りかを争うより、自分で照会したほうが早いです。他の相続人の同意がなくても、相続人1人からの残高証明書や取引履歴の請求に応じる金融機関が多くあります。
取扱いは金融機関ごとに違うので、電話で先に確かめてください。取り寄せた書類で数字が出れば、隠す意味がなくなります。感情の話を先にすると止まるので、書類を先に出してください。
- 10年以上使っていない口座は、もう消えていますか?
-
消えません。10年以上入出金等の取引がない預金等は休眠預金等になりますが、金融庁は「期限はなく、いつでも引き出すことができます」と案内しています。
預金者が亡くなっている場合は、所定の手続きを経て相続人が引き出せます。ただし窓口での手続きになり、通常より時間がかかると想定されています。(出典:金融庁「長い間、お取引のない預金等はありませんか?」)
- 照会は何件でも出していいのですか。費用がかさみませんか?
-
取引の有無を聞くだけなら費用がかからない金融機関もあります。ゆうちょ銀行の現存調査は無料だと公式に明記されています。
お金がかかるのは、そこから残高証明書や取引履歴を発行してもらう段階です。だから、まず有無だけ聞いて、口座があった先だけ証明書を取るのが無駄がありません。
- 遺産分割が終わったあとに口座が出てきたらどうなりますか?
-
その財産をどう分けるかを、あらためて決めることになります。協議書に後日判明した財産の取り決めを入れてあればそれに従えますが、無ければ相続人で話し合い直しです。
金額が大きいと蒸し返しの火種になるので、協議書を作る段階で条項を入れるかどうかを専門家に確認しておいてください。
- 親はまだ生きていますが、通帳が見つかりません。銀行に聞けますか?
-
子であるというだけでは聞けません。本人と一緒に窓口へ行くか、本人の委任状が必要です。判断能力が下がっていて委任状も難しい場合は、成年後見の申立てを検討することになります。
元気なうちに家族信託や代理人の届出を用意しておけば防げる場面なので、まだ話ができる状態なら今日聞いてください。
- 実家をもう引き払いました。今から探せますか?
-
探せます。家の中の紙が無くても、年金の振込通知、公共料金の引き落とし、確定申告の控え、親のスマホやメールから金融機関名は割り出せます。
郵便物は転送の届出を出していれば今の住所に届きます。届出をしていないなら、可能な範囲で早めに手続きしておいてください。
まとめ:今夜は、家じゅうの紙を1か所に集めるところまで

親の通帳が見つからない。それは、親の口座が分からないという意味ではありません。
やることは3つです。家の中の紙を全部見る。年金と引き落としから金融機関名を割り出す。候補に1件ずつ照会する。
今夜できるのは最初の一つだけです。引き出しの中身も、捨てるつもりの紙袋も、全部テーブルの上に出してください。それだけで明日の行き先が決まります。
私が母の郵便物を開けたのは、期限まで3週間を切った夜でした。あのとき先に始めていればと今も思います。
親の口座を探すのは、親の金を漁る行為ではありません。残された側が、自分の家の数字を把握するための作業です。
亡くなった直後の手続き全体を見直したい人は身内が亡くなったらすることのリストを、借金の有無も同時に確かめる人は親の借金の調べ方を続けて読んでください。


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