先に答えます。遺産の話が向こうから出てこないのは、わりとよくあることです。隠しているより、進め方が分からなくて止まっているほうが多い。
ただ、黙って待っていると期限だけが先に過ぎます。放棄は3ヶ月、相続税の申告は10ヶ月。待った側が損をする作りなんです。
私も弟から何も言ってこない時期が1年ありました。聞いたら金の話かと思われそうで、連絡先の画面を開いては閉じていました。
なのでこの記事は、権利や請求の話から入りません。争わずに自分だけで確かめる順番と、角が立たない切り出し方から書きます。
けんじ私も同じ夜を何度も過ごしました。疑いたいわけじゃないのに、頭から離れないんですよね。
弟から何も言ってこなかった1年の話


先に私の話をさせてください。制度の説明より、この状況の気持ち悪さを分かってほしくて。母を見送ったあと、弟とは1年ほど連絡が途切れました。
連絡先を開いては閉じた


四十九日が終わっても、弟からは何の連絡もありませんでした。実家には弟が出入りしていて、通帳も印鑑も向こうにある。私は何ひとつ把握していませんでした。
こっちから聞けばいいと頭では分かっていました。でも指が止まる。「金の話か」と言われる場面が先に浮かんでしまって。
結局その月も、翌月も送れませんでした。夜中に画面の明かりだけつけて、また閉じる。この迷いに何ヶ月も溶かしました。
通帳の場所も知らなかった


情けない話ですが、母がどこの銀行を使っていたかすら曖昧でした。生まれ育った家なのに、財産の中身は何も知らない。
片道4時間の遠距離介護を3年やって、そこは通ったつもりでいたんです。それでもお金の話だけは、一度も母としませんでした。
知らないから、余計に疑ってしまう。あとから振り返ると、私の不安の正体は金額ではなく情報を持っていないことでした。
争う前に紙から確かめた


それで私が最初にやったのは、弟に問い詰めることではありませんでした。戸籍を出生から死亡まで自分で集めて、市役所で固定資産税の書類を見る。
役所は何往復もしました。平日に休みを取るのも気が重かったです。ただ、手元に紙が増えるほど、頭のなかの妄想は減っていきました。
相手を疑う前に、自分の手で分かることを潰す。順番としてはこれがいちばん心が削れないと思っています。
何も言ってこない理由は3つある


ここからは、なぜ向こうが黙っているのかを整理します。理由が見えると、次に自分が何をすればいいかも決まるので。よくあるのは3つです。
手続きを知らないだけ


いちばん多いのがこれです。相続手続きって、誰かが号令をかけてくれるものではありません。役所から「そろそろ分けてください」なんて通知は来ないんです。
同居していた人ほど、日々の片付けや解約に追われています。分割の話は後回しになりがちです。
誰が相続人で取り分がどうなるかも、案外みんな知りません。基準は法定相続分と相続順位にケース別でまとめました。
疲れて止まっている


看取りの直後は、みんな消耗しています。葬儀、年金、健康保険、公共料金。事務作業が波のように来ます。
そこに口座凍結が重なると、実務が一気に重くなります。銀行ごとに書類が違って、平日に何度も窓口へ行くことになるので。
その大変さは預貯金の相続手続きと口座凍結に書きました。黙っている相手が、ただ疲れて固まっている可能性はけっこうあります。
言い出しにくいだけ


これ、実は自分と同じ心理です。向こうも「お金の話を切り出したら欲深いと思われる」と身構えている。
とくに実家に住んでいる側は、出ていく話に直結するので余計に触れにくい。家をどうするか決まらない限り、金額の話も進みません。
お互いが相手の出方を待って、半年が過ぎる。うちがまさにそれでした。あ、そういえば弟も後で「兄貴から来ると思ってた」と言っていました。
隠している場合もある


正直に書きます。悪意があるケースもゼロではありません。生前に引き出した分を黙っている、実家の名義を先に動かそうとする。
ただ、それを最初から前提にすると空気が壊れます。疑いは口ではなく書類で確かめるほうが早いです。
確かめ方はこのあとの章にまとめました。もし過去に揉めた経緯があるならきょうだいの相続トラブルも先に見ておくと心の準備ができます。



隠してるかどうかは、今の段階では分かりません。決めつけずに、まず紙で確かめましょう。
黙って待つと損をするのは自分


ここは少し強めに書きます。相続には期限があって、その多くは「知らなかった」で止まってくれません。押さえるのは3つです。
相続放棄は3ヶ月まで


まず知っておきたいのが放棄の期限です。原則3ヶ月を過ぎると、借金ごと引き継ぎます。相続を知った時からの数え方です。
怖いのは、財産の中身が分からないまま時間だけ過ぎることです。プラスかマイナスか判断できないのに、期限は動き続けます。
間に合わないときは期間を延ばす申立てもできます。手順は相続放棄のやり方と期限にまとめたので、借金の気配があるなら先に読んでください。
相続税の申告は10ヶ月


相続税がかかる家なら、申告と納付は10ヶ月以内です。分け方が決まっていなくても、期限は待ってくれません。
未分割のままだと、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例がその時点では使えません。手続きを踏めば後から適用できますが、手間は増えます。
そもそも自分の家がかかるのかは相続税はいくらからで確認できます。基礎控除の範囲なら、申告そのものが不要な場合もあります。
登記は3年で義務になる


実家がある場合は登記も期限つきです。2024年4月から相続登記が義務化されて、取得を知った日から3年以内と決まりました。
正当な理由なく放っておくと、10万円以下の過料の対象になります。過去に亡くなった分もさかのぼって対象です。
誰が相続するか決まらないときの逃げ道もあります。中身は相続登記の義務化に書きました。名義が母のままなら、他人事ではありません。
争わず自分だけで確かめられること


ここがこの記事の本題です。相手に何も言わなくても、自分の手で分かることが意外とあります。順番どおりに進めるのがコツです。
| 順番 | やること | 分かること |
|---|---|---|
| 1 | 戸籍を集める | 相続人が誰か・全員そろっているか |
| 2 | 固定資産税の通知書 | 実家の名義と評価額の目安 |
| 3 | 名寄帳を取る | その市町村にある土地建物の一覧 |
| 4 | 残高証明を頼む | 亡くなった日の預金残高 |
どれも相手の同意はいりません。上から順にやると、必要な書類が次の手続きで使い回せます。
まず戸籍を自分で取る


出発点は戸籍です。亡くなった親の出生から死亡までをつなげると、相続人が誰なのかが確定します。ここは相続人なら単独で請求できます。
私は郵送と窓口で何往復もしました。今は広域交付が始まっていて、本籍地以外の役所でもまとめて取れます。
集めた戸籍は、このあとの銀行にも法務局にも使います。最初にここを終わらせると全部が軽くなるのは間違いないです。
固定資産税の通知を見る


次は不動産です。毎年春に届く固定資産税の納税通知書には、名義と評価額が載っています。実家の名義が誰なのかが、これで分かります。
通知書が手元に無くても大丈夫。相続人なら市区町村で名寄帳を請求できます。持っている土地建物が一覧で出てきます。
登記の中身は誰でも取れる登記事項証明書で見られます。実家をどうするかは不動産を相続したらやることにまとめました。
残高証明は単独で頼める


預金は最後です。相続人の1人であれば、他の相続人の同意がなくても残高証明書を請求できます。銀行に戸籍と本人確認書類を出す形です。
取引明細を過去10年分ほど出してもらうこともできます。生前の大きな出金があれば、ここで見えます。
ただし請求すると口座は凍結されます。公共料金の引き落としが止まるので、そこだけ先に確認してください。同居家族の生活費が止まると角が立ちます。



ここまでは全部、相手に一言も言わずにできます。まず自分の不安から潰しましょう。
角が立たない切り出し方3つ


紙で確かめたら、次は聞く番です。大事なのは、お金からではなく手続きから入ること。使える言い回しを3つ置いておきます。
手続きの心配として聞く


1つめは主語を手続きにする言い方です。「そっちの取り分は」ではなく「役所の手続き、残ってない?」と入る。
言い回しの例はこんな感じです。年金や保険の話に混ぜると、金銭の詮索に聞こえません。
- 母さんの手続き、まだ残ってる?
- 年金と保険の届け出は済んだ?
- 書類で困ってることない?
相手を責める形にならないので、返事が来やすいです。まずは会話の線をつなぐことが目的なので。
期限を理由に相談する


2つめは期限を口実にする方法です。自分の希望ではなく、制度の都合として話せるのが強い。
「登記が3年で義務になったらしくて」「相続税は10ヶ月だって聞いて」と切り出す。ニュースで見た体にすると、さらに柔らかくなります。
合意した内容は最後に書面へ落とします。形は遺産分割協議書の作り方にあるので、話が動いたら見てください。
自分の負担を申し出る


3つめが、いちばん効きました。取りに行く姿勢ではなく、引き受ける姿勢で入る言い方です。
「戸籍はこっちで集めたから送るよ」と言うと、空気が変わります。実務を持っていく側は、疑っている人には見えないので。
私はここで手が震えました。送信するまで10分かかった。返事は3日後で、内容はそっけなかったです。
それでも動かないときの手段


聞いても返事が無い、はぐらかされる。そういう段階に来たら、手段を1つずつ上げます。いきなり裁判所ではありません。
| 手段 | 費用の目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 直接話す | 0円 | まだ会話ができる関係 |
| 手紙を出す | 切手代のみ | 直接が気まずい・記録を残したい |
| 専門家を挟む | 十数万円〜 | 手続きが止まって進まない |
| 家庭裁判所の調停 | 印紙1,200円+郵券 | 連絡自体が返ってこない |
上から順に試すのが基本です。下に行くほど、関係の戻しにくさも上がります。
手紙で記録を残す


返事が来ないときは、紙の手紙が効きます。文字にすると相手も落ち着いて読めるので、電話より角が立ちません。
書くのは3つだけ。手続きの現状を教えてほしいこと、期限が近いこと、自分が何を手伝えるか。要求を並べないのがコツです。
いきなり内容証明を送るのはおすすめしません。届いた瞬間に相手は身構えます。争う合図として受け取られます。
専門家を間に挟む


次が第三者です。司法書士や行政書士、相続の代行会社が窓口になると、話が事務になります。感情のやり取りが減るんです。
正直に言うと、お金はかかります。数万円で済む部分もあれば、丸ごと頼めば数十万円です。そこは隠さず書いておきます。
誰に頼めばいいか分からないときは相続の相談ができるサービスを見てください。無料相談だけ使って断るのも、普通にありです。
最後は調停という道


連絡そのものが返ってこないなら、家庭裁判所の遺産分割調停があります。裁判官と調停委員が間に入って、話をまとめる手続きです。
申立ての費用自体は高くありません。収入印紙1,200円と連絡用の切手が中心です。相手と直接やり合わずに済むのが救いです。
ただ、終わるまで1年を超えることもあります。関係も元には戻りにくい。ここは本当に最後の手段だと思ってください。
第三者を挟んだら弟と話が進んだ


私の場合、結局これで動きました。自分たちだけで何とかしようとしていた1年が、いちばん無駄だったと今は思います。
総額26.7万円を払った


残りの事務手続きは、nocosという代行サービスにまとめて頼みました。支払いは実費まで含めて総額およそ26.7万円です。
安くはありません。進捗の連絡が少なくて、こちらから催促のメールを打ったこともあります。
それでも、窓口が1つになった効果は大きかったです。中身はnocosを使った私の体験談に、いい面も悪い面も書きました。
自分でやる道も残ってる


先に言っておくと、頼まなくても終わります。戸籍集めも銀行の解約も、時間さえあれば自分でできます。
かかるのは実費と登録免許税くらい。ただ、平日の昼に動ける人でないと厳しいです。
どこまで自力でいけるかは相続手続きはどこまで自分でできるかで仕分けしています。全部頼む必要はありません。
誰に頼むかで迷ったら


相手が黙っているだけなら、まずは書類を進める系のサービスで足ります。争いになっていないなら弁護士でなくて大丈夫です。
私はいい相続の無料相談も使って、見積もりを見た上で断りました。そうぞくドットコムは資料請求して見送っています。
比べ方はnocosといい相続の比較とnocosと司法書士の比較にまとめました。相見積もりは取ったほうがいいです。



第三者が入った途端、弟とも事務の話ができました。もっと早く頼めばよかったです。
遺産相続で何も言ってこないときのよくある質問


- Q何も言ってこないのは隠しているから?
- A
そうとは限りません。手続きの進め方が分からない、看取り直後の事務で疲れている、お金の話を切り出しにくい。この3つが理由の大半です。隠しているかどうかは口で確かめるより、戸籍や残高証明といった書類で先に確かめるほうが早く、関係も壊れにくいです。
- Qこちらから連絡してもいいですか?
- A
問題ありません。むしろ相手も同じように待っていることが多いです。ただ切り出し方は大事で、取り分の話からではなく「役所の手続き、まだ残ってない?」と手続きの心配として入ると角が立ちません。自分が戸籍集めを引き受けると伝えるのも有効です。
- Q遺産の額を自分だけで調べられますか?
- A
おおよそは調べられます。預金は相続人の1人として銀行に残高証明を請求でき、他の相続人の同意はいりません。不動産は固定資産税の納税通知書か、市区町村で取れる名寄帳で名義と評価額が分かります。ただし残高証明を頼むと口座は凍結される点に注意してください。
- Q自分を外して手続きされることは?
- A
遺産分割は相続人全員の合意が必要で、1人でも欠けた協議は効力がありません。勝手に分けられて終わり、という形にはならないので落ち着いてください。ただし遺言書があると話は別で、その内容が優先されます。心配なら公証役場で公正証書遺言の有無を検索できます。
- Q放っておくとどうなりますか?
- A
期限だけが過ぎていきます。相続放棄は原則3ヶ月、相続税の申告と納付は10ヶ月、相続登記は取得を知った日から3年以内が義務です。とくに登記は正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象になります。待っている側が不利になる作りだと考えてください。
- Q時効で権利が消えることはありますか?
- A
相続分そのものが期間の経過で消えるわけではありません。ただ亡くなってから10年を過ぎると、介護の貢献を主張する寄与分や、生前贈与を考慮する特別受益を原則として主張できなくなります。介護を多く担った人ほど、放置すると不利になりやすいところです。
- Q生前の引き出しは調べられますか?
- A
調べられます。相続人であれば銀行に取引明細の開示を求められ、10年ほどさかのぼれる金融機関が多いです。大きな出金があった場合は、使い道の説明を求めることもできます。ただ最初から使い込みを疑う姿勢で切り出すと関係が壊れるので、明細を見てから考えてください。
- Q内容証明はいきなり送るべき?
- A
おすすめしません。届いた瞬間に相手は争いの合図として受け取り、態度が固くなります。まずは普通の手紙で、手続きの現状を教えてほしいことと期限が近いことを伝えるほうが返事は来ます。それでも無視が続くときの次の一手として持っておくといいです。
- Q弁護士と司法書士どちらに頼む?
- A
まだ争っていないなら司法書士や行政書士、相続の代行会社で足ります。戸籍集め、名義変更、口座の解約といった事務が中心だからです。相手が明確に取り分を拒む、連絡を完全に断つといった段階になったら弁護士の出番です。費用も交渉になるほど上がります。
- Qそもそも何から始めればいい?
- A
戸籍を出生から死亡まで集めるところからです。相続人が確定しないと、銀行も法務局も動きません。並行して固定資産税の通知書で実家の名義を確認します。見送ったあとの全体の流れは、当ブログの身内が亡くなったらすることリストにまとめてあります。
手続きの全体像が見えていないと不安が続きます。順番は身内が亡くなったらすることリストにまとめました。
連絡はしてみたのに返事が返ってこない段階なら、無視されたまま遺産分割を進める方法のほうが近いです。
そもそも相手の居場所が分からないなら、先に相続人が行方不明のときの探し方を読んでください。
まとめ:待つより先に確かめる


向こうから何も言ってこないのは、よくあることです。隠しているとは限らないし、同じように向こうも切り出せずにいます。
ただ待つのは損です。放棄3ヶ月、相続税10ヶ月、登記3年。期限だけは黙っていても進みます。
だから順番はこうです。戸籍と固定資産税と残高証明で自分だけで確かめる。そのうえで、手続きの心配として声をかける。
それでも動かないなら、第三者を挟んでください。私は1年黙り込んでから頼んで、やっと弟と話ができました。



あなたが感じている不安は、金額の話じゃないはずです。蚊帳の外に置かれるのが怖いだけで。
頼み先で迷ったら相続の相談ができるサービスと、私が実費込み26.7万円を払ったnocosの体験談もあわせて読んでみてください。











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