結論から言うと、連絡を無視されても遺産分割は進められます。相手が最後まで出てこなくても、家庭裁判所の審判まで行けば結論は出ます。
ただ、いきなり裁判所ではありません。無視された側が踏む段階は、だいたい三つに分かれます。
既読がついたまま、何日も返事が来ない。あの画面を開いては閉じる感じ、私も知っています。私は母の相続で弟に連絡して、返ってこない時期がありました。
そのあと1年、口をきいていません。この記事では、そこから何をしたか、調停はいくらでどれくらいかかるのかを、きれいごと抜きで書きます。
けんじ無視されると、自分だけが悪者みたいな気分になるんですよね。順番に、できることから見ていきましょう。
弟に無視された私が内容証明の前にやったこと


まず私の話から書きます。手順の前に、同じところで止まった人間がいると知ってもらったほうが、たぶん読みやすいので。
既読のまま何日も待った


母の四十九日が終わって、そろそろ財産の話をしようとLINEを送りました。既読はつきました。返事は来ませんでした。
3日待って、もう一度送りました。それも既読。電話も出ない。夜中に画面だけ何度も開いて、文面を書いては消していました。
で、そのうち腹が立つより先に、こっちが疲れてくるんです。無視は返事より強いなと、あのとき初めて思いました。
内容証明で何週間も迷った


次に浮かんだのが内容証明です。調べたら書き方も費用もすぐ出てきて、その日のうちに文案までは作りました。
でも出せませんでした。これを送ったら、弟との関係は決定的に終わる気がしたんです。封筒に入れて、鞄に入れて、また机に戻して。
何週間、そうしていたと思います。結局その封筒は出さないまま、引き出しにしまいました。
弟の側にも言い分があった


ずっとあとになって分かったんですが、弟は弟で止まっていました。実家の土地をいくらと見るか、そこが私と全然違ったんです。
あと介護のこと。私は片道4時間を3年通ったつもりでいて、弟は弟で「兄貴が全部決めている」と感じていたらしい。
無視は拒否じゃなくて、言葉が用意できていないだけのこともある。そう思えたのは、正直かなり後です。似た話はきょうだいの相続トラブルにも書きました。
連絡を無視されても遺産分割は進められる


ここが本命です。「相手が応じないと永久に終わらないのか」という不安に、先に答えておきます。終わります。
協議には全員の同意がいる


ご存じのとおり、遺産分割協議は相続人全員の合意がないと成立しません。一人でも欠けた協議書は、銀行でも法務局でも通りません。
だから無視されると「詰んだ」と感じます。私もそう思っていました。実印がもらえないと何も進まないぞ、と。
ただ、これは話し合いで決める場合のルールです。話し合いが無理なときの道は別にあります。書面の作り方は遺産分割協議書の作り方にまとめています。
同意がなくても審判で決まる


話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てられます。調停でもまとまらなければ、自動的に審判に移ります。
審判は裁判官が分け方を決める手続きです。相手が一度も出てこなくても結論は出ます。無視し続けた側が有利になることは、基本ありません。
つまり、無視は時間を延ばせても、結論を止められない。ここを知っているだけで、待ち方がだいぶ変わります。取り分の基準は法定相続分と相続順位で確認してみてください。
当面のお金は仮払いで動く


あ、そういえば先に書いておきます。分割が終わらなくても、預貯金の一部は先に引き出せる仕組みがあります。
預貯金の仮払い制度です。口座残高に自分の法定相続分の3分の1を掛けた額まで、1つの金融機関につき150万円が上限で引き出せます。
葬儀費用の立て替えで苦しい人は、まずここを使う手があります。凍結の流れは預貯金の相続手続きと口座凍結に書きました。
無視する側の事情を一度だけ考えてみる


ここは飛ばしてもらってもいい章です。ただ、相手の事情が読めると打ち手が変わるので、一度だけ書かせてください。
金額に納得できてない


いちばん多いのがこれだと思います。提示された金額に納得できないけれど、面と向かって反論する言葉がない。
とくに実家の土地は、見る人によって額が倍くらい違って見えます。うちがまさにそれでした。弟は高いと言い、私は売れないと言う。
この手のズレは、第三者が出した数字を並べると急に静かになります。人の口から出た額は、どうしても疑われるので。
介護の負担感が違う


介護をした側は「これだけやった」と思い、していない側は「勝手に決められた」と思う。両方とも本人の中では本当なんですよね。
この不公平感が残っていると、金額の話をする前に会話が止まります。無視の正体が、実はここにあることも多いです。
私は3年通ったつもりでいましたが、弟から見れば私が全部仕切っていた。どっちも悪くないのに、話せなくなる。
手続きが怖いだけ


意外と多いのがこれです。書類の意味が分からない、実印を押すのが怖い、で、返事を後回しにしているうちに何ヶ月も経つ。
この場合、責める文面を送ると余計に固まります。逆に「専門家に整理してもらったから、押すだけでいい」と伝えると急に動くことがあります。
とか言いつつ、当時の私にはそんな余裕はありませんでした。相手の事情を考える気力が出たのは、だいぶあとです。



相手を許す必要はないです。ただ、理由が読めると打ち手が選べるようになります。
無視されたまま進める3つの手段を比べる


ここからが実務です。無視されたまま前に進める手段は、大きく三つ。期間と費用、関係へのダメージで並べます。
| 手段 | 期間の目安 | 費用の目安 | 関係へのダメージ |
|---|---|---|---|
| 内容証明 | 1〜2週間 | 約1,500円(自分で出す場合) | 中 |
| 遺産分割調停 | 半年〜1年半 | 印紙1,200円+郵便切手 | やや大 |
| 審判 | 調停後さらに数ヶ月〜1年 | 調停から移行なら追加は少なめ | 大 |
※2026年8月時点の一般的な目安です。弁護士に頼むと別に着手金がかかり、20〜30万円台からという事務所が多い印象です。
内容証明で意思を示す


内容証明は「いつ、誰が、どんな内容を送ったか」を郵便局が証明してくれる手紙です。法的な強制力そのものはありません。
効くのは心理面です。書留の重い封筒が届くと、無視していた側もさすがに手が止まります。自分で出せば1,500円ほど。
ただし関係を壊すリスクは確実にあります。文面を責める調子にせず、期限と用件だけ淡々と書くほうが、返事は返ってきやすいです。
調停で第三者を入れる


遺産分割調停は、家庭裁判所で調停委員が間に入る話し合いです。裁判というより、仲介付きの協議に近いものだと思ってください。
相手と同じ部屋に入ることは基本なく、交互に呼ばれて話します。顔を合わせたくない人には、ここが大きいはずです。
申立費用は収入印紙1,200円と連絡用の郵便切手だけ。弁護士なしで自分で申し立てる人も、そこそこいます。
審判なら結論が出る


調停が不成立になると、そのまま審判に移ります。あらためて申し立て直す必要はありません。
審判では裁判官が分け方を決めます。相手が最後まで無視しても、法定相続分をベースに結論が出るのが原則です。
ただ、ここまで行くと関係はほぼ元に戻りません。だから私は、その手前で人を挟む道をおすすめしています。
遺産分割調停は実際どれくらいかかるのか


「調停しましょう」で終わる記事が多いので、ここは細かく書きます。申立から終わりまでの現実的な流れです。
申立に必要なもの


申し立てるのは、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。自分の家の近くではないので、そこは注意してください。
必要なものは、だいたい次のとおりです。集める作業は正直しんどいです。
- 申立書と当事者目録
- 亡くなった方の戸籍一式
- 相続人全員の戸籍と住民票
- 不動産の登記事項証明書
- 残高証明書などの財産資料
私は出生から死亡までの戸籍を自分で集めたことがありますが、役所を何往復もしました。あれを一人でやるなら、休みを2日は見ておいたほうがいいです。
期日は月1回ペース


申立から1回目の期日まで、1〜2ヶ月ほど空きます。その後はおおむね1〜2ヶ月に1回のペースで期日が入ります。
1回あたりは2時間くらい。平日の日中なので、仕事を持っている人は有給を使うことになります。
相手が呼び出しを無視しても、調停自体は進みます。ただ何度も来ないと不成立になり、審判へ移る流れです。
終わるまでの現実的な幅


期日が5回も6回も入れば、それだけで1年近くになります。だいたい半年〜1年半で終わるケースが多い、という感覚です。
不動産の評価でもめると、さらに延びます。2年を超える例もあるので、短期決着を前提にしないほうがいいです。
長いです。でも、その間ずっと何もしないより、期限のある手続きに乗っているほうが精神的には軽い。ここは人によりますが。
放置すると自分に返ってくる4つの期限


ここがいちばん怖いところです。相手を待っている間も、期限のほうは止まってくれません。
相続放棄は3ヶ月


借金のほうが多そうなら、放棄という選択肢があります。期限は相続を知った日から3ヶ月と短いです。
相手の返事を待っているうちに、この3ヶ月は簡単に溶けます。財産の中身が分からないなら、期間の伸長を申し立てる手もあります。
ここは待ってはいけない期限です。手順は相続放棄のやり方と期限にまとめました。
相続税は10ヶ月


相続税の申告と納付は、亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。分割が終わっていなくても、期限は延びません。
まとまらないときは、法定相続分で分けたものとして一旦申告します。あとで分け方が決まったら、修正で調整する形です。
そもそも自分に相続税がかかるのかは、先に確認しておくと安心です。相続税はいくらからかかるのかで目安を出せます。
相続登記は3年


2024年4月から、不動産の相続登記が義務になりました。相続を知った日から3年以内に登記しないといけません。
正当な理由なく放っておくと、10万円以下の過料の対象になります。無視されている側にも、この義務はかかります。
分割が決まらないなら、相続人申告登記でひとまず義務を果たす方法もあります。詳しくは相続登記の義務化に書きました。
10年で主張が消える


これは知らない人が多いです。相続開始から10年を過ぎると、寄与分や特別受益の主張が原則できなくなります。
介護を頑張った人ほど不利になる話です。「自分はこれだけやった」という言い分が、時間で消えていきます。
無視され続けて放置するのが、いちばん損なんですよね。相手を待つのではなく、こちらから動く理由がここにあります。



期限だけは、相手の都合を待ってくれません。ここは冷たいくらい割り切っていいところです。
専門家を挟むと動くことがある(費用も正直に)


最後に、私がいちばん伝えたいところを書きます。裁判所に行く前に試せる道が、まだ一つ残っています。
人づてだと動かない


私の場合、動いたきっかけは第三者でした。同じ内容でも、兄が言うのと専門家が言うのとでは、届き方がまるで違ったんです。
身内の言葉には過去の感情が乗ります。「また兄貴が仕切ってる」と受け取られたら、中身は読まれません。
逆に、外の人がまとめた書類は事務として処理されます。この差は本当に大きかった。私は先に気づけばよかったと思っています。
手続きだけ先に外す


私は相続手続きそのものをnocos(ノコス)に代行してもらった体験談に書いたとおり外に出しました。戸籍集めから登記まで、丸ごとです。
支払いは実費込みで総額およそ26.7万円。内訳はスタンダードが165,000円、金融機関1社で55,000円、登録免許税32,000円、戸籍などの実費がたしか1万5千円ほどでした。
正直、安くはないです。自分でやれば実費と登録免許税で済みます。それでも私は、弟とのやり取りを事務にできたことのほうが大きかった。
費用を抑えたいなら自分でやる道も普通にあります。どこまで自力でいけるかは相続手続きはどこまで自分でできるかで線引きしました。
弁護士は最後の手


もう会話が完全に切れている、財産を隠されている疑いがある。そういう段階なら、弁護士に入ってもらったほうが早いです。
ただ、代理人が付いた瞬間に相手も身構えます。関係を残したいなら、いきなりここから入らないほうがいいと私は思います。
相続に強い弁護士の探し方はベンナビ相続を使ったときの話に書きました。相談先を横並びで見たい人は相続の相談ができるサービスもどうぞ。
まだ相手から何も言ってこない段階の人は、遺産相続で何も言ってこないときの動き方のほうが近いはずです。順番としては、そちらが先になります。



私は封筒を出せないまま1年使いました。人を挟むと決めた日に、やっと前に進んだんです。
連絡を無視されたときのよくある質問


- Q無視され続けたら遺産分割は永久に進みませんか?
- A
進みます。話し合いには全員の同意が必要ですが、まとまらないときは家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てられます。調停でも決まらなければ審判に移り、相手が一度も出てこなくても裁判官が分け方を決めます。無視で結論を止めることはできません。
- Q内容証明はいくらで出せますか?
- A
自分で出す場合、郵便料金に書留や内容証明の加算、配達証明を足して1,500円ほどが目安です。弁護士に文面作成から頼むと、数万円かかることが多いです。法的な強制力はありませんが、届いた事実が残るので、無視していた側が動くきっかけにはなります。
- Q調停の費用はいくらかかりますか?
- A
申立てにかかるのは、亡くなった方1人につき収入印紙1,200円と連絡用の郵便切手だけです。弁護士に依頼せず自分で申し立てる人もいます。代理人を頼む場合は着手金が別にかかり、20〜30万円台からという事務所が多い印象です。
- Q調停はどこの裁判所に申し立てますか?
- A
原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。自分の住まいの近くではないので、遠方に住むきょうだいが相手だと移動の負担が出ます。相手が複数いる場合は、そのうちの誰かの住所地を選べます。全員が合意すれば別の裁判所にできることもあります。
- Q相手が調停の呼び出しも無視したらどうなりますか?
- A
調停は相手が来なくても進行します。何度も欠席が続けば話し合いは不成立となり、そのまま審判に移ります。審判では裁判官が資料をもとに分け方を決めるので、出てこなかった側が得をする流れにはなりません。呼び出しを無視し続けても解決は避けられません。
- Q相手の住所が分からないときはどうすれば?
- A
相続人であれば、戸籍の附票をたどって現在の住所を調べられます。それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てて、その人と分割を進める方法があります。手続きが複雑なので、専門家に相談したほうが早いです。
- Q分割が終わらないと預金は一円も下ろせませんか?
- A
預貯金の仮払い制度が使えます。口座残高に自分の法定相続分の3分の1を掛けた額まで、1つの金融機関につき150万円を上限に引き出せます。葬儀費用や当面の支払いに充てられるので、分割が止まっていても現金が完全に詰むことはありません。
- Q無視されている間に相続税の期限が来たら?
- A
申告期限は亡くなった日の翌日から10ヶ月で、分割が終わっていなくても延びません。決まらないときは法定相続分で分けたものとして一旦申告し、後で分け方が決まった段階で修正します。配偶者の税額軽減などは、別途届出をしておくと後から使えます。
- Q関係を壊さずに進める方法はありますか?
- A
いきなり弁護士や内容証明に行かず、司法書士や相続代行のような中立寄りの第三者に手続きを整理してもらう方法があります。相手にとっては責められる話ではなく事務連絡になるので、警戒が下がります。私の場合も、人を挟んでから弟が動きました。
- Q代行と司法書士はどちらに頼むのが得ですか?
- A
登記だけなら司法書士に個別に頼むほうが安く済みます。戸籍集めや金融機関の解約までまとめて任せたいなら、代行サービスのほうが手間は減ります。金額と手間の比べ方は、当ブログのnocosと司法書士の比較記事に実際の数字で整理しています。
頼み先の値段だけ先に見たい人はnocosと司法書士どちらが安いかを比べてみてください。自分でやる場合の実費も並べています。
相手の住所そのものが分からないときは、戸籍の附票から居場所を追う手順が先になります。
まとめ:無視されても遺産分割は進む


連絡を無視されても、遺産分割は進められます。内容証明、遺産分割調停、そして審判。相手が出てこなくても結論は出ます。
ただ、調停まで行けば半年から1年半。関係もかなり削れます。だから私は、その手前で第三者を挟む道を先に試してほしいと思っています。
あと、待っている間も放棄3ヶ月・相続税10ヶ月・登記3年の期限は動き続けます。相手の返事を待つ理由にはなりません。
私は封筒を出せないまま1年を使いました。あの1年で得たものは、何もなかったです。
手続きを外に出したときの費用と流れはnocosに頼んだ体験談に、相談先の比較は相続の相談ができるサービスに書いています。見送ったあとの全体像は身内が亡くなったらすることリストもどうぞ。











コメント